この事例の要点
- テルモは、心臓血管カンパニー、メディカルケアソリューションズカンパニー、血液・細胞テクノロジーカンパニー、オーガンテクノロジーズ事業の四つの報告セグメントで事業を展開しています(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
- 2026年3月期の売上収益は1,131,877百万円(前期比9.2%増)、営業利益は176,320百万円(同11.8%増)でした(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
- 地域別では海外計が909,274百万円と、売上収益の大半を海外が占めています(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
どんな事業か
同社は、2021年12月に策定した5カ年成長戦略で、中長期ビジョンとして「デバイスからソリューションへ」を掲げています。製品軸から顧客軸へフォーカスを移し、医療のエコシステム全体とより積極的にかかわることで、顧客の課題に複合的なソリューションを提案できる企業を目指すと説明しています(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
最大のセグメントである心臓血管カンパニーは、インターベンショナルシステムズ事業を中心に海外・日本とも伸長しました。メディカルケアソリューションズカンパニーは、日本でファーマシューティカルソリューション事業が伸びた一方、ホスピタルケアソリューション事業では一部事業の終了等の影響を受けています。血液・細胞テクノロジーカンパニーは、北米における血漿イノベーションビジネスの展開加速に伴いグローバルブラッドソリューションが好調で、日本では採血関連製品の売上が増えました(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
また同社は、2025年10月29日付でOrganOx社の全株式を取得して完全子会社化し、同社の事業を「オーガンテクノロジーズ事業」として開示しています(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
収益の仕組み
収益は、各カンパニーが製品を販売することで生まれます。資料では、グローバルで医療需要の拡大が継続し、米州を中心に主要ビジネスが成長したと説明されています。海外ではアクセス製品を中心としたインターベンショナルシステムズ事業などが増収を牽引しました(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
費用については、売上総利益が米国における関税政策の影響を受けつつも売上収益の増加により増えたと述べられています。それ以外の費用の内訳は、今回参照した公開資料には示されていません。なお同社は、買収に伴い取得した無形資産の償却費及び一時的な損益を調整した「調整後営業利益」を業績管理指標としており、これはセグメント利益と一致すると説明しています(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。
数字で確かめる
- 売上収益1,131,877百万円(前期比9.2%増、為替影響除く伸長率8.6%)(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。為替の影響を除いても増収だったことが読み取れます。
- 調整後営業利益219,369百万円(同7.8%増)、売上総利益594,675百万円(同6.1%増)(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。売上の伸びに比べて売上総利益の伸びが小さく、原価側に負担があったことが読み取れます。
- 心臓血管カンパニーの売上収益676,421百万円(同8.3%増)(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。同社の収益の中心がこのセグメントにあることが読み取れます。
- 血液・細胞テクノロジーカンパニーの売上収益231,037百万円(同15.4%増)(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。セグメントの中で最も高い伸びであったことが読み取れます。
- 米州の売上収益443,405百万円(同12.1%増)、日本は222,603百万円(同2.5%増)(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。成長の重心が海外にあることが読み取れます。
- 2027年3月期の業績予想は売上収益1,239,000百万円、調整後営業利益261,500百万円(2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結))。会社として増収増益を見込んでいることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。消耗品の定期補充や消耗品モデルの観点で見ると、医療機器は処置や治療のたびに製品が使われるため、医療需要の拡大がそのまま継続的な販売につながりやすい構造だと考えられます。ただし、今回参照した資料には、製品ごとの消耗品と装置の比率や、顧客あたりの継続購入の数値は示されていないため、この読み方は仮説にとどまります。
この型が成り立つ条件は、使われる場面で選ばれ続けることと、供給を途切れさせないことだと考えられます。同社が生産設備への投資やドイツレバークーゼン工場の取得を進め、高成長が見込まれる分野で生産能力の拡大を中心とする設備投資を続けると述べている点は、需要に応じて供給量を確保することが事業の前提になっていると読めます。
トレードオフとしては、供給網を国際的に広げるほど関税や為替の影響を受けやすくなる点が挙げられます。実際に売上総利益は関税政策の影響を受けたと説明されています。また「デバイスからソリューションへ」という方針は、単品の販売から顧客の課題に踏み込む方向であり、提案に必要な人材や仕組みへの投資が先に発生すると考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の商品のうち、顧客が使うたびに補充や買い替えが発生するものはどれで、その比率を把握しているでしょうか。
- 需要が伸びたときに供給が追いつかなくなる工程はどこでしょうか。
- 製品を売ることから顧客の課題解決へ踏み込むとしたら、どの顧客のどの業務から始めるでしょうか。
- 為替や関税のような外部要因が原価に与える影響を、どの程度まで価格に転嫁できるでしょうか。
小さく試すなら
- 既存顧客の購買履歴を見て、繰り返し購入されている商品と一度きりの商品を分け、繰り返し購入の間隔を把握します。
- 繰り返し購入が多い顧客数社に、補充のタイミングを事前に知らせる案内を試します。
- 2〜4週間の反応を見て、案内による再購入の早まりや問い合わせの変化を記録します。
- 再購入の間隔が安定する兆しがあれば、定期補充の提案を正式な商品として設計する段階に進みます。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:テルモ株式会社 / 医療機器。参照資料:2026年3月期 決算短信。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27