← 企業事例

OTSUMU KNOWLEDGE

東宝株式会社の映画製作・配給・興行とIP展開に学ぶ事業設計

作品の製作・配給から自社映画館での興行、配信や商品化の許諾、不動産賃貸までを一つのグループで持つ事業です。ヒット作が複数の収入に広がる構造と、変動を和らげる安定収入の組み合わせを読み解きます。

この事例の要点

  • 東宝は、映画事業、IP・アニメ事業、演劇事業、不動産事業の報告セグメントで事業を展開しており、映画事業の中に映画営業(製作・配給)、映画興行、映像関連の各事業を持っています(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
  • 2026年2月期の営業収入は360,663百万円(前期比15.2%増)、営業利益は67,889百万円(同5.0%増)でした(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
  • 同じ作品が、配給、映画館での興行、パンフレットやグッズの販売、映像の利用・許諾へと複数の収入に展開されていることが資料から確認できます(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

どんな事業か

映画事業では、東宝㈱が共同製作や配給を行い、TOHOシネマズ㈱等が映画館を運営しています。当企業集団の経営するスクリーン数は全国で717スクリーン(共同経営56スクリーンを含む)です。映像関連事業では、TOHOスタジオ㈱が制作とスタジオ事業を一体運営し、㈱東宝映像美術や東宝舞台㈱が映画やTV・ライブイベント等の舞台製作・美術製作を受注しています(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

IP・アニメ事業では、製作出資したTOHO animation作品の国内外の配信利用や各種配分金収入、「ゴジラ」等の商品化権収入、劇場用パンフレットやキャラクターグッズの販売などを手がけています。海外事業の統括会社であるTOHO Global㈱が、グループの扱うIPと映像作品の海外展開に取り組んでいます(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

演劇事業では、帝国劇場が休館となる中、シアタークリエでの上演に加えて外部の劇場で上演して公演数の確保に努めています。不動産事業は、不動産賃貸、道路、不動産保守・管理の各事業で構成されています(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

収益の仕組み

映画営業事業の営業収入の主な内訳は、映画館への国内配給と映像の利用・許諾です。映画興行事業は、上映に加えて飲食売店で積極的な営業施策を展開したと説明されています。IP・アニメ事業の営業収入の主な内訳は、映像の利用・許諾、商品化権等の利用・許諾、商品の販売です(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

不動産賃貸事業は、全国に所有する不動産の賃貸収入です。費用については、道路事業や不動産保守・管理事業で労務費や資材価格の上昇が挙げられていますが、全社の費用の内訳は、今回参照した公開資料には示されていません(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

数字で確かめる

  • 映画事業全体の営業収入182,617百万円(前年度比30.6%増)、営業利益37,302百万円(同30.3%増)(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。当期の成長を映画事業が牽引したことが読み取れます。
  • 映画館入場者数49,002千人(前年度比27.6%増)、映画興行事業の営業利益16,579百万円(同69.7%増)(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。来場者の増加に対して興行の利益が大きく伸びたことが読み取れます。
  • 映画館への国内配給55,057百万円(前年度比61.1%増)(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。配給作品のヒットが収入に直結する構造が読み取れます。
  • IP・アニメ事業の映像の利用・許諾34,112百万円(同24.9%増)、商品化権等の利用・許諾15,905百万円(同9.0%増)、商品の販売18,054百万円(同18.2%減)(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。IP収入の中でも中身によって増減が分かれたことが読み取れます。
  • 不動産事業の営業利益19,030百万円(同13.1%増)、賃貸用不動産の空室率0.4%(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。不動産が安定した利益源になっていることが読み取れます。
  • 次連結会計年度の見通しは営業収入3450億円、営業利益620億円(2026年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。会社は当期より減収減益を見込んでいることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。コンテンツIPの多面展開と施設運営・興行を組み合わせた型として見ると、同社は作品の製作・配給から、自社の映画館での上映、グッズや許諾による二次的な収入までを一つのグループで持っていると読めます。一つのヒット作が複数のセグメントの収入を同時に押し上げる構造であり、当期の映画事業の伸びはその効果が表れたものと考えられます。

一方で、ヒットの有無は年によって変わります。会社が次連結会計年度に減収減益を見込んでいることは、この変動を前提にしていると読めます。その変動を和らげているのが、空室率の低い不動産賃貸や、作品単発ではなく継続的に利用される配信・商品化の許諾だと考えられます。施設とIPの両方を持つことで、ヒット依存の収入と安定収入を組み合わせている構造と読めます。

裏側で必要な仕事は、作品への出資判断、映画館や劇場の運営、ライセンス先との契約管理と多岐にわたります。同社が2026年3月にグループの顧客IDを統合した新サービス「TOHO-ONE」を開始するとしている点は、顧客データ基盤を整備し、顧客体験の進化と事業間シナジーを創出するためと説明されています。トレードオフとして、映画館や劇場の設備投資は固定費になり、ヒットが少ない年には負担が重くなると考えられます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社が生み出す商品やコンテンツのうち、別の形で二度三度と収入を生めるものはどれでしょうか。
  • 当たり外れのある収入と、毎月安定して入る収入の比率をどう設計しているでしょうか。
  • 異なるサービスで接している顧客を、同じ顧客として把握できているでしょうか。
  • 自社で場(店舗・施設・会場)を持つことの利点と固定費の重さを、どう比べているでしょうか。

小さく試すなら

  1. 過去に反応の良かった商品や記事、イベントを三つ選び、別の形(講座、グッズ、許諾など)で再提供できる案を書き出します。
  2. そのうち一つを小さく形にし、既存の顧客に案内して反応を集めます。
  3. 2〜4週間で、元の商品を知っている顧客とそうでない顧客の購入率の違いを確認します。
  4. 元の商品を知る顧客の反応が明らかに良ければ、顧客情報を共通化して次の展開につなげる仕組みづくりに進みます。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:東宝株式会社 / 映画の製作・配給・興行とIP展開。参照資料:2026年2月期 決算短信。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

あわせて読む

次の一手を、一緒に。

事業の検証から開発・運用まで、現在の段階に合わせて支援します。

事業について相談する ↗
FROM KNOWLEDGE TO ACTION

知識を、次の一手へ。

30分の無料診断で、次の一手を整理する ↗