この事例の要点
- 同社は Square と Cash App の2つを報告セグメントとし、収益区分を Commerce Enablement、Financial Solutions、Bitcoin Ecosystem の3つに組み替えたと説明しています(Form 10-K、FY2025)。
- Square は売り手に決済・ソフトウェア・ハードウェアを一体で提供し、決済のたびに取引額に対する割合の手数料を得ています(Form 10-K、FY2025)。
- 2025年の粗利益の伸びは、Cash App では Cash App Borrow、Square では Square Loans など、融資を含む金融サービスが主な要因だったと説明されています(Form 10-K、FY2025)。
どんな事業か
同社の中心は、売り手(seller)向けの Square と、消費者向けの Cash App の2つのエコシステムで、決済処理、リスク管理、本人確認、データの基盤を共有していると説明しています(Form 10-K、FY2025)。
Square は2009年2月にカード決済の受け付けから始まり、現在は30を超える製品・サービスを提供しています。POSソフト、在庫管理、給与計算、ハードウェアから融資までを一つの基盤で扱います。2025年には、ソフトウェア機能と決済手数料率を組み合わせた3段階の料金体系を導入しました(Form 10-K、FY2025)。
Cash App は個人間送金から始まり、現在は支払い、投資、後払い(BNPL)、借り入れ、貯蓄までを一つのアプリで提供しています。同社は、銀行パートナーとともに、年収$150,000までの米国世帯に向けた銀行サービスの主要な提供者を目指すとしています。このほか TIDAL とビットコイン関連事業があります(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
Commerce Enablement では、売り手から取引額の一定割合の決済手数料を受け取るほか、ソフトウェア利用料、ハードウェア販売、Cash App Card のインターチェンジ手数料、BNPL の加盟店手数料などを得ています。Square は加盟店契約上の当事者(merchant of record)として決済資金の精算とリスク管理を担います(Form 10-K、FY2025)。
Financial Solutions は、Cash App Borrow の短期融資、即時入金の手数料、ATM 引き出し手数料、顧客資金の運用益、Square Loans から成ります。Square Loans は、同社が処理する売り手の売上から一定割合を差し引く形で返済されるのが一般的です。一部の融資は投資家に売却し、回収の手数料を得ています(Form 10-K、FY2025)。
Bitcoin Ecosystem では、仕入れたビットコインに小さなマージンを乗せて販売し、販売額を総額で売上に計上しています。費用面では、売上原価のほか、製品開発、販売・マーケティング、取引・融資・消費者債権の損失が計上されています(Form 10-K、FY2025)。
数字で確かめる
- 2025年12月期の総純収益(Total net revenue)は$24,193,683 thousandで、前期は$24,121,053 thousandでした(Form 10-K、FY2025)。規模はほぼ横ばいであることが読み取れます。
- 同期の粗利益は$10.4 billionで前年比17%増、うち Cash App が$6.3 billion(21%増)、Square が$3.9 billion(9%増)でした(Form 10-K、FY2025)。売上より粗利益で事業を見ていることが読み取れます。
- 同期の Bitcoin ecosystem revenue は$8,502,787 thousand、それに対する Bitcoin ecosystem costs は$8,083,772 thousandでした(Form 10-K、FY2025)。売上は大きくても利幅は薄い区分であることが読み取れます。
- 同期の営業利益は$1.7 billionで、前期は$892.3 millionでした(Form 10-K、FY2025)。利益水準が大きく上がったことが読み取れます。
- 取引・融資・消費者債権の損失は、同期$1,337,246 thousand、前期$794,221 thousandでした(Form 10-K、FY2025)。融資を増やすほど損失の管理が重くなることが読み取れます。
- 2025年に Square を使った売り手は4.5 million超、Square GPV は$250 billionで、Cash App の月間取引アクティブは2025年12月時点で59 millionでした(Form 10-K、FY2025)。決済の接点の広さが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。決済の手数料だけでは利幅を広げにくいと考えられます。同社は決済で日々の資金の流れを押さえ、その上に融資や即時入金を重ねています。粗利益の伸びが主に融資によると説明されている点から、決済は入口で、利益の源泉は金利・手数料型の金融サービスへ移りつつあると読めます。
金利差(貸出・与信)型が成り立つ条件は、貸し倒れを見込み以内に抑えられることです。Square Loans が売り手の売上から差し引いて回収される仕組みは、決済を握っているからこそ可能な回収手段だと考えられます。裏側では、取引データによる審査、不正対策、銀行を通じた規制対応が必要になると読めます。
トレードオフは、融資の拡大が損失の増加と表裏一体である点です。損失は前期から大きく増えています。また利幅の薄いビットコイン販売が売上を大きく見せるため、売上だけでは実力が見えにくい構造と考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社を日常的に通る「お金や情報の流れ」の上に、重ねられる有料サービスはあるでしょうか。
- 顧客からの回収を、自社のサービス内で完結させられる場面はあるでしょうか。
- 売上と粗利益のどちらで事業を評価すべき区分が、自社にもあるでしょうか。
- 与信や後払いを始めた場合、損失の上限をどこに置くでしょうか。
小さく試すなら
- 既存顧客との取引データから、支払いのタイミングや金額の傾向を1週目に整理します。
- 支払いや入金に関する顧客の不便を10件ほど聞き取り、有料でも解決したい課題があるかを確かめます。
- 前払い割引や支払い方法の追加など、与信リスクを負わない形の追加サービスを1つ設計し、2〜3週間、少数の顧客に試験提供します。
- 利用率と追加の粗利、対応工数を測り、既存取引の粗利を上乗せできると分かれば、与信を伴う次の段階を検討します。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Block, Inc. / 決済「Square」と「Cash App」。参照資料:Form 10-K(FY2025)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27