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ヤマトホールディングス株式会社の宅急便・物流に学ぶ事業設計

宅急便ネットワークを基盤に、倉庫運営や国際フォワーディングを組み合わせて法人向けの物流受託を広げるヤマトホールディングスの事例です。値付けの見直しと、既存網を法人向けソリューションへ転用する設計を学べます。

この事例の要点

  • 2026年3月期の営業収益は1,865,675百万円(前期比5.8%増)、営業利益は28,304百万円(同99.2%増)でした(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
  • 同社は増収の理由として、小口法人・個人からの宅急便取扱数量の拡大、大口法人に対するプライシングの適正化、法人向けビジネスの拡大を挙げています(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
  • 中期経営計画では、コントラクト・ロジスティクス事業とグローバル事業を成長領域と位置づけ、宅急便で培った経営資源を生かすとしています(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

どんな事業か

同社グループの事業は、エクスプレス事業、コントラクト・ロジスティクス事業、グローバル事業、モビリティ事業、その他で構成されています(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

エクスプレス事業は、個人と法人に宅急便を中心とした国内輸配送サービスを提供しています。宅急便部門が小口法人・個人のお客様と、法人部門が大口法人のお客様と向き合う体制です。2025年10月に宅急便の届出運賃を改定し、同年11月には午前中に預かった荷物を当日中に届ける「宅急便当日配送サービス」と同一都道府県内運賃を新設しました。長距離区間を中継拠点でつなぐリレー方式への切り替えも進めています(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

コントラクト・ロジスティクス事業は、輸配送ネットワークに倉庫オペレーションなどの付加価値を組み合わせ、企業間の在庫・配送拠点やEC事業者の総合物流センターを運営します。2025年10月には統合型ビジネスソリューション拠点を福島県郡山市に開設しました。グローバル事業は国際フォワーディングなどを、モビリティ事業は「EVライフサイクルサービス」を法人に提供しています(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

収益の仕組み

収益の中心は、宅急便などの輸配送の運賃です。同社は基盤領域の宅急便を安定的に利益を確保できる事業構造へ転換するため、付加価値に応じたプライシングの適正化を計画的に進めるとしています。これに加えて、法人のお客様から倉庫運営や物流センター運営、国際輸送の対価を受け取る法人向けビジネスを伸ばそうとしています(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

費用については、営業費用が1兆8,373億70百万円となり、前期に比べ888億80百万円増えたと説明されています。要因は、社員やパートナーの待遇向上などの人的資本への投資、集配拠点の再配置などのネットワーク投資、調達単価の上昇です(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

同社は、荷物の流動量の変化により宅急便ネットワークの収益性は低下傾向にあるとも述べています。そのため固定費の抑制と、業務量に応じた変動費のコントロールに取り組むとしています(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。

数字で確かめる

  • エクスプレス事業の外部顧客への営業収益は1兆5,579億78百万円(前期比1.5%増)、営業利益は22億99百万円でした(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。収益の大半を占める一方、利益幅は小さいことが読み取れます。
  • コントラクト・ロジスティクス事業の外部顧客への営業収益は1,646億2百万円で、前期比69.6%増でした(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。子会社化と新規案件で法人向けが伸びたことが読み取れます。
  • グローバル事業の外部顧客への営業収益は975億52百万円(前期比13.5%増)、営業利益は81億50百万円でした(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。規模に比べ利益が厚い事業であることが読み取れます。
  • 宅急便・宅急便コンパクト・EAZYの取扱数量は1,941百万個で前期比△1.0%、ネコポス・クロネコゆうパケットは451百万個で前期比15.4%増でした(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。小さな荷物への移行が進んでいることが読み取れます。
  • 親会社株主に帰属する当期純利益は13,662百万円で、前期比△64.0%でした(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。前期の特別利益の反動が響いたことが読み取れます。
  • 2027年3月期の通期予想は、営業収益1兆9,200億円、営業利益420億円です(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。値付けと効率化で利益を伸ばす計画であることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。物流受託(3PL)型の事業は、荷主の倉庫や配送を預かる対価で成り立ちます。同社の場合、全国を網羅する宅急便の輸配送網をすでに持っていることが、法人向けの受託を広げる前提になっていると読めます。保管から配送までを自社の網でつなげられることが、輸送ターミナルとロジスティクスセンターを融合した拠点を開く理由だと考えられます。

裏側で必要な仕事は、拠点の再配置、長距離輸送のリレー方式への切り替え、仕分け人員の配置、そしてドライバーの待遇改善です。人手に依存するネットワークでは、待遇への投資と値付けの見直しを同時に進めなければ利益が残らない構造だと考えられます。

トレードオフは、基盤の宅急便が収益の大半を占めながら利益幅が小さい点です。エクスプレス事業の営業利益22億99百万円に対し、規模の小さいグローバル事業が81億50百万円を上げています。値上げは数量減のリスクを伴い、宅急便等の取扱数量が△1.0%となった一方で小型の商品が伸びた事実は、顧客がより安い選択肢に移る動きとも読めます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社がすでに持っている「網」や拠点を、法人向けの受託サービスに転用できる余地はあるでしょうか。
  • 付加価値に応じた値付けを見直したとき、どの顧客層が離れ、どの層が残るでしょうか。
  • 売上規模が最大の事業と、利益が最も厚い事業は一致しているでしょうか。
  • 人件費の上昇を、値付けと業務の見直しのどちらでどれだけ吸収する計画になっているでしょうか。

小さく試すなら

  1. 1週目に、事業・顧客層ごとの売上と粗利を並べ、規模と利益の順位が一致しているかを確認します。
  2. 既存の設備や人員で請け負える周辺業務(保管、発送代行、手続き代行など)を洗い出し、法人顧客3〜5社に有料での需要を聞きます。
  3. 2〜3週目に、付加価値ごとに料金を分けた新しい料金表の案を作り、一部の新規顧客で提示して受注率を測ります。
  4. 4週目に、受注率と1件あたりの粗利を旧料金と比べます。粗利が上がり受注率の低下が許容範囲なら、既存顧客への適用を検討します。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:ヤマトホールディングス株式会社 / 宅急便・物流。参照資料:2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

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