この事例の要点
- 株式会社ゼンショーホールディングスは「すき家」「はま寿司」「ココス」などの外食チェーンに加え、食品の製造・物流を担う会社も抱え、期末店舗数は14,947店舗(FC8,235店舗含む)です(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
- 同社は、食材調達から製造、物流、店舗販売まで一貫して設計・運営するマス・マーチャンダイジング・システム(MMD)を強化すると説明しています(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
- 2026年3月期の売上高は1,264,053百万円(前期比11.2%増)でしたが、「グローバルすき家」の営業利益は93億17百万円(前年同期比62.0%減)でした(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
どんな事業か
報告セグメントは「グローバルすき家」「グローバルはま寿司」「グローバル中食」「グローバルファストフード」「レストラン」「小売」「本社・サポート」の7区分です。「すき家」は日本国内と中国、東南アジア及び中南米で牛丼を中心に手軽な価格で提供し、2,650店舗です。「はま寿司」は日本と中国などで862店舗、「グローバル中食」は「SNOWFOX」「YO!」などのブランドで主として欧米で寿司等のテイクアウト商品を提供し、8,970店舗(FC8,102店舗含む)です。ほかに「なか卯」などのファストフード、「ココス」などのレストラン、北関東中心のスーパーマーケット「マルヤ」などがあります(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
店舗の外の機能もグループ内にあります。「本社・サポート」には食品の製造・加工を担う㈱GFF、物流機能を担う㈱グローバルフレッシュサプライ、備品・ユニフォーム等を調達する㈱グローバルテーブルサプライなどが含まれ、「その他」には醤油などを製造する㈱サンビシ、玄米・精米を販売する㈱ゼンショーライスなどが含まれます(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
収益の仕組み
お金の入り口は店舗やスーパーマーケットでの販売です。外部顧客への売上高は「グローバルはま寿司」3,202億77百万円、「グローバルすき家」3,144億54百万円、「グローバル中食」2,218億95百万円、「レストラン」1,712億81百万円などでした。営業利益は「グローバル中食」273億76百万円、「グローバルはま寿司」267億71百万円が大きく、「小売」は営業損失10億25百万円でした(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。FCからの収入の形は今回参照した資料には示されていません。
費用について同社は、コメ価格の高騰に加え、輸入牛肉や水産物などを含む原材料価格の上昇によるコスト負担増が事業運営に影響を及ぼしたと説明しています。ただし、今回参照した公開資料には費用の内訳は示されていません(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
数字で確かめる
- 営業利益81,440百万円(前期比8.4%増)、売上高営業利益率6.4%(前期6.6%)(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。増収増益のなかで利益率はわずかに下がったことが読み取れます。
- 既存店売上高前年比は「グローバルすき家」104.3%、「グローバルはま寿司」115.5%、「レストラン」109.8%(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。既存店でも売上が伸びたことが読み取れます。
- 期中に1,042店舗出店、1,514店舗退店。うち「グローバル中食」は761店舗出店、1,306店舗退店(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。店舗網を大きく組み替えていることが読み取れます。
- 「本社・サポート」の営業利益は27億80百万円(前年同期は営業損失74億18百万円)(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。支える機能も損益で管理されていることが読み取れます。
- 営業活動によるキャッシュ・フロー1,011億77百万円、投資活動によるキャッシュ・フロー△780億89百万円(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。本業の資金の多くを新規出店と改装に回していることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。MMDとして説明される垂直統合が成り立つ条件は、自前の製造・物流を満たすだけの販売量だと考えられます。14,947店舗と、牛丼・寿司・レストラン・スーパーマーケットまで広がる複数業態は、同じ製造・物流・調達の機能を多くの出口で使う構造と読めます。
裏側で必要なのは、店舗運営とは別の専門性を持つ製造・物流・調達の組織をグループ内で動かし続ける仕事です。その部門が営業利益を計上していることから、支える機能もコストではなく損益で見ていると読めます。
トレードオフは、固定的な投資と環境変化への感応度です。出店・改装への投資が続く前提になり、コメや輸入牛肉の価格上昇は統合していても調達段階で響きます。同社は物価高のなかで牛丼の値下げを実施しており、同じ期に「グローバルすき家」の営業利益が減ったことは、価格で客を呼ぶ判断と利益の間の緊張を示していると考えられます。「瀬戸うどん」「モリバコーヒー」の全店閉店も、仕組みに合う業態を選び直す作業と読めます。
自社事業に持ち帰る問い
- 調達から顧客に届くまでの工程のうち、どこを自社で持ち、どこを外に任せていますか。その理由を説明できますか。
- 自前で持つ機能を使う「出口」(店舗、チャネル、商品)は十分な量がありますか。
- 支える部門の成果を、損益で見られるようにしていますか。
- 仕入れ価格が上がったとき、値上げ・据え置き・値下げを選ぶ判断基準を決めていますか。
小さく試すなら
- 1週目:主力商品1つについて、調達・加工・配送・販売の工程を書き出し、自社で担う工程と外部に任せる工程に分けます。
- 2週目:外部に任せている工程のうち量が多く繰り返すものを1つ選び、外部費用と、自社で担う場合に必要な人・設備を並べて比べます。
- 3週目:自社で担う工程を1つ選び、売上や粗利への貢献を記録する簡単な指標を決めてつけ始めます。
- 4週目:見直す工程が1つでも特定できれば次の四半期の検証テーマにし、できなければ工程の書き出しを細かくしてやり直します。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:株式会社ゼンショーホールディングス / 「すき家」などの外食チェーン。参照資料:2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27