賃上げ促進税制とは
賃上げ促進税制とは、従業員への給与等の支給額が、比較対象となる年度から所定の水準で増えた場合に、法人税などの税額を軽減できる制度です。平たく言えば、賃上げに取り組んだ企業に対して税の面から後押しをする仕組みです。
制度の名称は、賃上げを促進するための税制という趣旨をそのまま表しています。対象は企業の区分(大企業、中小企業など)によって枠組みが分かれ、どの給与を比較するか、どの年度と比べるかといった条件が細かく定められています。
仕組み・ポイント
この制度を理解するうえで押さえたい要素は、おおむね次の四つです。
| 要素 | 確認する内容 |
|---|---|
| 企業区分 | 中小企業か、それ以外かで適用の枠組みが異なる |
| 比較対象 | どの年度の、どの範囲の給与等と比べるか |
| 増加の水準 | 前年度などと比べて所定の水準以上に増えているか |
| 手続き | 申告書への添付や、計算の根拠資料の保存 |
給与の範囲は、会計上の人件費と完全には一致しません。役員報酬や賞与の扱い、継続して雇用されている従業員に限るかどうかなど、制度固有の定義があります。計算の土台になる数字を、会計上の費用ではなく制度上の定義で集計し直す作業が必要です。
実務での使い方・具体例
以下は、状況を一般化した架空の例です。実際の事業では、自社の契約や数字に合わせて読み替えてください。
たとえば、あるスタートアップが新規事業の黒字化を見込み、翌期に従業員の給与を引き上げる計画を立てたとします。このとき、賃上げによる人件費の増加と、制度で軽減できる税額の見込みを並べて事業計画に反映すると、採用や定着のための投資判断がしやすくなります。
ただし、税の軽減は納税額が発生していることが前提になりやすく、赤字の期には効果が出にくい場合があります。新規事業は初期に赤字になることが多いため、制度の利用を前提にして賃上げ計画を組むのではなく、あくまで副次的な効果として見積もるのが現実的です。決算前に、対象となる給与の範囲と比較年度を税理士と確認する運びにしておくと、申告時に慌てません。
実務でのチェックポイント
- 自社が適用を検討できる企業区分に当たるかを、決算前に確認する。
- 比較する年度と、集計する給与の範囲を、制度の定義に沿って決める。
- 賃上げの原資となる粗利や売上の計画を、並べて見直す。
- 計算の根拠資料(給与台帳など)を、申告まで保存できる状態にする。
よくある誤解と注意点
- 賃上げすれば必ず軽減されるわけではありません。比較年度や給与の範囲の条件を満たさなければ対象外です。
- 軽減額は現金の増加ではありません。納める税額が減る効果であり、赤字なら恩恵が小さい場合があります。
- 制度は改正されやすく、要件や軽減の水準が年度によって異なります。過去の資料の数字をそのまま使わないでください。
- 賃上げは固定費の増加につながります。税の軽減だけで判断せず、売上の見通しと資金繰りを合わせて検討します。
迷ったときは、賃上げの是非を税の軽減額だけで決めず、「軽減がなくても続けられる賃上げか」を基準にします。軽減が受けられなかった場合の人件費の負担を試算し、それでも事業計画が成り立つかを先に確認すると、判断がぶれにくくなります。
なお、制度や基準は変わるため、最新情報は公的機関・専門家で確認してください。
関連用語
Otsumuに相談できること
賃上げを新規事業の計画に織り込むときは、人件費の増加と税の軽減見込みを、収益計画や資金繰りと同じ表の上で見比べることが大切です。詳しくは新規事業の戦略・事業計画の支援ページをご覧ください。
論点の整理から始めたい段階でも、30分の無料相談をご利用いただけます。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.04