適合率・再現率(Precision・Recall)とは
適合率と再現率とは、AIの検索や分類がどれくらい正確かを測るための代表的な指標で、適合率は「AIが出した結果のうち、本当に正しかったものの割合」、再現率は「本来見つけるべき正解のうち、AIが見つけられたものの割合」を表します。
平易に言えば、適合率は「出したものに外れが少ないか」、再現率は「見つけるべきものを取りこぼしていないか」です。英語では、適合率を Precision(プレシジョン)、再現率を Recall(リコール)と呼びます。
たとえば、迷惑メールの判定で考えると、適合率が高いとは「迷惑メールと判定したものは、ほとんど本当に迷惑メールだった」状態です。再現率が高いとは「届いた迷惑メールのほとんどを見つけられた」状態です。二つは別の観点で、両方を見ることで精度を正しく評価できます。
仕組み・ポイント
適合率と再現率は、AIの判定結果と正解を突き合わせ、次の四つに分類して計算します。
| 正解は「該当」 | 正解は「該当しない」 | |
|---|---|---|
| AIが「該当」と判定 | 正しく見つけた(真陽性) | 誤って見つけた(偽陽性) |
| AIが「該当しない」と判定 | 見逃した(偽陰性) | 正しく除外した(真陰性) |
計算式は次のとおりです。
- 適合率 = 正しく見つけた数 ÷(正しく見つけた数 + 誤って見つけた数)
- 再現率 = 正しく見つけた数 ÷(正しく見つけた数 + 見逃した数)
二つの指標は、一方を上げるともう一方が下がりやすい関係にあります。判定を厳しくすれば外れは減りますが取りこぼしが増え、判定を緩くすれば取りこぼしは減りますが外れが増えます。そのため、両方の釣り合いを一つの数値で表すF値(適合率と再現率の調和平均)も使われます。
どちらを重視するかは、業務での損失の大きさで決めます。
- 再現率を重視する場面:見逃しの損失が大きい。例:不正取引の検知、重要な問い合わせの検出
- 適合率を重視する場面:誤検出の損失が大きい。例:顧客への自動通知、自動で実行される処理
実務での使い方・具体例
社内文書を検索して回答するRAGの仕組みでは、検索の段階の精度を測るのに適合率と再現率がよく使われます。
ある会社が、社内規程に答えるAIの回答精度を改善しようとしているとします(架空の例)。回答の誤りの原因が、検索なのか回答の作成なのかを切り分けるため、次の手順で検索の精度を測りました。
- 評価用の質問を用意し、それぞれの質問に答えるために必要な文書の箇所(正解)を担当者が決める
- 質問ごとに検索を行い、上位五件の結果を記録する
- 上位五件のうち正解の箇所がいくつ含まれていたか(適合率)を計算する
- 正解の箇所のうち、上位五件に含まれたものの割合(再現率)を計算する
- 再現率が低い質問を調べ、文書の分割方法や検索方式を見直す
測った結果、再現率が低く、必要な規程の条文が検索で取りこぼされていることが分かりました。回答を作る指示を工夫する前に、検索の改善が必要だと判断できたのです。
RAGの検索では、取りこぼした資料はAIが参照できないため、まず再現率を確保し、そのうえで関連の薄い資料を減らして適合率を高める、という順で改善を進めることが多くあります。
よくある誤解と注意点
「正解率」だけを見ると判断を誤ります。 該当するものがまれな場合、すべてを「該当しない」と判定するだけで正解率は高くなります。適合率と再現率を分けて見ることで、この落とし穴を避けられます。
どちらか一方だけを最大にしても意味がありません。 すべてを「該当」と判定すれば再現率は最大になりますが、適合率は下がります。業務の損失を踏まえて、目標の釣り合いを決めましょう。
正解の作り方で数字が変わります。 指標の信頼性は、正解データの質に左右されます。業務を知る担当者が基準をそろえて正解を作ることが大切です。
数字の比較は同じ評価データで行いましょう。 評価に使う質問が違えば、数字を比べる意味がありません。
業務の言葉に置き換えて共有しましょう。 適合率や再現率という言葉は、現場の担当者にはなじみが薄いことがあります。「百件通知したうち何件が本当に必要だったか」「見つけるべきもののうち何件を見逃したか」のように言い換えると、目標の議論がしやすくなります。
関連用語
- 評価データセット:適合率・再現率を計算するための、正解付きの問題集
- アノテーション:正解を付ける作業。指標の信頼性を左右する
- リランキング:検索結果を並べ替え、上位の適合率を高める処理
- ハイブリッド検索:キーワードと意味の検索を組み合わせ、再現率を高める方式
- グラウンディング:回答を根拠資料に結びつける考え方。検索の精度が土台になる
- 実践記事:RAGの回答精度を改善する方法:検索・分割・プロンプトの見直し
Otsumuに相談できること
AIの精度の問題は、どこで何が起きているかを数字で切り分けることで、改善の打ち手がはっきりします。Otsumuでは、評価データと指標を最初に用意し、検索と回答の作成を分けて測りながら改善する進め方でRAG開発を支援しています。
社内文書を使ったAIの精度に悩んでいる段階でもご相談ください。30分の無料相談でお気軽にお声がけください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.01