リランキングとは
リランキングとは、検索で取り出した候補の文書を、質問との関連度をより精密に評価する方法でもう一度採点し、並べ替える処理のことです。
英語の re-ranking(再び順位を付ける)から来た言葉で、並べ替えを行うモデルを「リランカー」と呼びます。図書館にたとえると、まず司書が書架から関係しそうな本を20冊ほど手早く集め(一次検索)、その後、一冊ずつ中身を開いて質問に本当に合うものから順に並べ直す(リランキング)、という二段階の作業にあたります。
生成AIに社内文書を参照させるRAGでは、検索結果の上位にある文書ほど回答に使われるため、正しい文書を上位に持ってくるリランキングは、回答精度を高める有効な手段として広く使われています。
仕組み・ポイント
一次検索で使うベクトル検索は、文書を事前にベクトルに変換しておき、質問のベクトルと距離を比べるだけなので高速です。ただし、質問と文書を別々に変換しているため、細かな関係までは読み取りきれないことがあります。
リランカーは、質問と候補の文書を「ひと組」にしてモデルに入力し、両者の関係を直接評価します。精度は高くなりますが、候補ごとに計算が必要なため時間がかかります。そこで、一次検索で候補を数十件に絞ってから、その中だけをリランキングする二段構えが一般的です。
| 段階 | 処理 | 速度 | 精度 |
|---|---|---|---|
| 一次検索 | ベクトル検索・キーワード検索で候補を広く集める | 速い | 中程度 |
| リランキング | 質問と候補の組を精密に評価して並べ替える | 遅い | 高い |
| 生成 | 上位の文書を生成AIに渡して回答を作る | 処理量による | 渡した文書の質に依存 |
リランキングの方法には、リランキング専用のモデルを使う方法と、生成AI自体に「この文書は質問に関係するか」を判定させる方法があります。前者は比較的速く安価で、後者は柔軟ですが費用と時間がかかる傾向があります。
実務での使い方・具体例
架空の例として、ある会計事務所が、所内の手続きマニュアルや過去の相談記録を検索して回答案を作るAIを導入したとします。一次検索だけでは、「インボイス」という言葉を含むものの論点が違う文書が上位に並び、生成AIが的外れな回答を作ることがありました。
そこで次の手順でリランキングを導入します。
- 一次検索(ハイブリッド検索)で上位30件程度の候補を集める
- リランカーで30件を質問との関連度順に並べ替える
- 上位5件程度だけを生成AIに渡す
- 評価用の質問セットで、リランキングの有無による正答率の違いを比べる
- 応答時間と費用が業務上許容できるかを確認する
このように、生成AIに渡す文書の数を絞り込めるため、回答の精度が上がるだけでなく、入力するトークンが減って費用が下がることもあります。
導入にあたっては、次の点を事前に決めておきます。
- 一次検索で何件集め、リランキング後に何件を使うか
- リランキングのスコアが低い場合に「該当なし」とするしきい値
- 日本語の文書に対するリランカーの精度(自社データで確認する)
- 応答時間の目標(画面で待てる時間)
リランキングを入れるかどうか迷う場合は、まず現状の検索結果を観察するのが近道です。評価用の質問で「正解の文書は上位20件には入っているが、上位3件には入っていない」というケースが多ければ、リランキングの効果が出やすい状態です。逆に「上位20件にも正解が入っていない」ケースが多いなら、先に一次検索の方式や文書の分割、文書そのものの整備を見直すべきです。このように、取りこぼしの場所を見極めてから手を打つと、無駄な投資を避けられます。
また、リランキングのスコアを回答画面に出典の確からしさとして活用する方法もあります。スコアが低い文書しか見つからなかった場合は「関連する資料が見つかりませんでした」と正直に伝えることで、誤った回答を減らせます。
よくある誤解と注意点
- 「リランキングを入れれば検索の問題がすべて解決する」わけではない:一次検索の候補に正解が含まれていなければ、並べ替えても出てきません。一次検索の取りこぼしを先に確認します。
- 候補を増やしすぎると遅くなる:精度を求めて候補数を増やすと、応答時間と費用が増えます。評価結果を見ながら適切な件数を探ります。
- 言語への対応を確認する:リランカーによっては日本語の精度が十分でない場合があります。
- 効果は必ず測る:導入の前後で、評価用の質問に対する正解文書の順位がどう変わったかを数字で確認します。
関連用語
- ベクトル検索:一次検索として使われる代表的な手法
- ハイブリッド検索:キーワード検索とベクトル検索の組み合わせ
- セマンティック検索:意味に基づく検索の考え方
- チャンク(チャンク分割):リランキングの対象となる文書の単位
- 適合率・再現率:検索結果の良し悪しを測る指標
改善の全体像は「RAGの回答精度を改善する方法」で解説しています。
Otsumuに相談できること
「検索で文書は見つかっているはずなのに、回答の質が安定しない」という場合、候補の並べ替えや生成AIへの渡し方を見直すことで改善できる場合があります。OtsumuはRAG開発において、評価の仕組みづくりから検索・リランキングの調整まで、目的に合わせて支援しています。
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執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.01