システムプロンプトとは
システムプロンプトとは、生成AIに対して、利用者の質問や入力とは別に、あらかじめ与えておく「前提の指示」のことです。AIの役割、話し方、答えてよい範囲、守るべきルール、出力の形式などを定めます。
たとえるなら、新しく窓口に立つスタッフに渡す「業務マニュアル」と「心構えのメモ」です。お客さま(利用者)からの質問は毎回違っても、スタッフはマニュアルに沿って対応します。システムプロンプトは、このマニュアルにあたる部分で、利用者には通常見えません。
APIでは「system」という役割のメッセージとして渡す仕組みが一般的で、「システムメッセージ」と呼ばれることもあります。チャット画面のサービスでも、カスタム指示などの機能で同様の役割を持つ指示を設定できる場合があります。
仕組みと書き方のポイント
生成AIへの入力は、おおむね「システムプロンプト」「会話の履歴」「利用者の最新の入力」で構成されます。システムプロンプトは毎回の処理で先頭に置かれ、会話全体の振る舞いを方向づけます。
業務システムのシステムプロンプトには、次のような要素を書くのが一般的です。
| 要素 | 書く内容の例 |
|---|---|
| 役割と目的 | 「当社の製品サポート窓口として、利用者の困りごとを解決する」 |
| 対象者 | 「利用者はITに詳しくない一般のお客さま」 |
| 答えてよい範囲 | 「当社製品の使い方に限る。料金や契約の変更は担当窓口を案内する」 |
| 参照情報の使い方 | 「提供された資料に基づいて答え、資料にない場合は分からないと答える」 |
| 口調・形式 | 「です・ます調、300字以内、手順は番号付きで」 |
| 禁止事項 | 「個人情報を尋ねない。他社製品を評価しない」 |
| 困ったときの対応 | 「判断できない場合は有人窓口への連絡方法を案内する」 |
書くときは、抽象的な心構えより、具体的な行動の指示にするのがコツです。「丁寧に対応する」より「最初に質問内容を一文で確認してから回答する」の方が、出力が安定します。
実務での使い方・具体例
架空の例として、ある自治体向けシステム会社が、住民向けの手続き案内チャットボットを作るケースを考えます。
- 対応範囲を決める(転入・転出、各種証明書、ごみの出し方など)
- 範囲外の質問(税額の個別相談、苦情など)への対応方法を決める
- 回答の根拠となる資料の扱い方を指示する(資料にないことは答えない)
- 個人情報を入力させない、聞き出さない旨を明記する
- 想定質問と、範囲外・意地悪な質問を含む評価用データで動作を確認する
- 誤った振る舞いが見つかったら、システムプロンプトに具体的なルールを追加し、再確認する
システムプロンプトは、AIの振る舞いを決める「仕様書」のような存在です。変更が出力に与える影響が大きいため、変更履歴を管理し、変更のたびに評価用データで確認する運用にしておくと安心です。
運用中に追加するルールが増えてくると、指示同士が矛盾したり、どのルールが効いているのか分からなくなったりします。定期的に全体を読み直して、重複や古いルールを整理することも大切です。
なお、システムプロンプトを作るときは、業務担当者と開発者が一緒に確認するのが理想です。業務担当者は「どんな質問が来て、どう答えるべきか」を知っており、開発者は「どう書けばAIが守りやすいか」「システム側でどこまで制御できるか」を知っています。どちらか一方だけで書くと、業務の実態に合わないルールや、技術的に守らせにくいルールが紛れ込みがちです。完成したシステムプロンプトは、業務マニュアルと同じように、承認者と改訂日を記録して管理しておきましょう。
よくある誤解と注意点
- 「システムプロンプトに書けば必ず守られる」わけではない:AIが指示を守れない場合や、利用者の巧妙な入力で指示を回避されることがあります(ジェイルブレイク)。重要な制約は、システム側の仕組みでも守る設計にします。
- 秘密の情報を書かない:システムプロンプトの内容が、利用者の工夫によって引き出されてしまうことがあります。パスワードや内部情報は書きません。
- 何でも詰め込まない:長くなりすぎると、重要な指示が埋もれます。参照資料はRAGなど別の仕組みで渡す方が適切な場合があります。
- モデルを変えたら再確認:同じシステムプロンプトでも、モデルによって守り方が異なります。
関連用語
- プロンプトエンジニアリング:指示文を設計・改善する技術
- ガードレール(AI):AIの不適切な出力を防ぐ仕組み
- ジェイルブレイク(脱獄):AIの制約を回避しようとする入力
- コンテキストウィンドウ:システムプロンプトも含めた入力の上限
- プロンプトキャッシュ:毎回送るシステムプロンプトの処理を効率化する仕組み
チャットボットでの設計は「AIチャットボットの作り方」でも解説しています。
Otsumuに相談できること
「チャットボットが答えてはいけないことまで答えてしまう」「AIの口調や回答の範囲をそろえたい」といった課題には、システムプロンプトの設計とシステム側の制御を組み合わせて対応するのが効果的です。OtsumuはAIチャットボット開発や生成AIシステム開発で、仕様の整理から評価・運用まで支援しています。
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執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.01