ファネル分析は、ユーザーが成果に至るまでの道のりを段階に分け、各段階で何人が次に進み、何人が離れたかを見る分析です。やり方の要点は三つあります。段階を「誰が見ても同じ意味になる行動」で定義すること、比べる期間と対象者のそろえ方を決めること、そして全体の数字だけでなくセグメント別に分けて離脱の原因を探ることです。この三つを押さえれば、どこを直せば成果が増えるかを数字で説明できるようになります。
この記事は、Webサイトやアプリ、SaaSなどの改善を担当するマーケティング担当者、プロダクト担当者、事業責任者に向けて書いています。ファネルの段階の決め方、集計の方法、期間のそろえ方、セグメント比較の進め方、離脱の原因を突き止める手順、そして改善につなげるまでの流れを、具体的な例とチェックリストで示します。
分析ツールの使い方ではなく、どのツールを使っても通用する「ファネルの組み立て方」と「数字の読み方」を持ち帰っていただくことが目的です。
ファネル分析とは:成果までの道のりを段階で見る
ファネルは「漏斗(じょうご)」のことです。多くの人が入口から入り、段階を進むごとに人数が減っていき、最後に成果に至る人だけが残る様子を、上が広く下が狭い漏斗にたとえています。
たとえばECサイトなら「サイト訪問 → 商品ページ閲覧 → カート追加 → 購入手続き開始 → 購入完了」、SaaSなら「サイト訪問 → 無料登録 → 初期設定完了 → 主要機能の初回利用 → 有料プラン契約」のように段階を並べます。各段階の人数と、前の段階からの通過率を並べることで、どこで多くの人が離れているかが一目で分かります。
ファネル分析の価値は、改善の対象を絞り込めることにあります。「売上を増やしたい」という漠然とした目標を、「カート追加から購入手続き開始への通過率を上げる」という具体的な課題に変えられます。課題が具体的になれば、打つべき施策も、効果の確かめ方も明確になります。
一方で、ファネル分析は「どこで」離れているかを示すものであり、「なぜ」離れているかは教えてくれません。なぜを知るためには、セグメント別の比較や、画面の操作確認、ユーザーへの聞き取りといった追加の調査が必要です。この記事では、その手順まで含めて説明します。
ファネル分析のやり方:6つの手順
ファネル分析は、次の手順で進めます。
- 分析の目的と最終成果を決める:何を増やしたいのか、そのための最終成果はどの行動かを決めます。購入完了、有料契約、問い合わせ送信などです。
- 段階を定義する:最終成果までの主要な行動を4〜7個程度に分けます。各段階は計測できる具体的な行動で定義します。
- 期間と対象者を決める:どの期間に、どんな人を対象に集計するかを決めます。後述するように、ここが数字の信頼性を左右します。
- 段階ごとの人数と通過率を出す:各段階に到達した人数と、前の段階からの通過率、最初の段階からの累積の通過率を計算します。
- セグメント別に比較する:端末、流入元、新規・既存、プランなどで分け、特定の層だけ通過率が低い段階を探します。
- 離脱の原因を調べ、改善の仮説を立てる:数字で絞り込んだ段階について、画面の確認や聞き取りで原因を探り、改善の仮説に落とします。
以下、特に重要な手順2、3、5、6を詳しく見ていきます。
段階の定義:誰が見ても同じ意味になる行動を選ぶ
ファネルの段階は、計測できる具体的な行動で定義します。「興味を持った」「検討した」のような心理状態では、何を数えればよいかが決まりません。「料金ページを閲覧した」「無料登録フォームを送信した」のように、イベントとして記録できる行動にします。
| 段階の定義で決めること | 悪い例 | 良い例 |
|---|---|---|
| 行動の具体性 | 興味を持った | 料金ページを閲覧した |
| 完了の時点 | 登録した | アカウント作成がサーバーで成功した |
| 段階の数 | 画面ごとに15段階 | 価値に関わる主要な行動で5段階 |
| 順序の扱い | 決めていない | 順番どおりに通過した人だけ数えるか、順不同かを明記 |
| 対象の範囲 | 全ページの閲覧者 | 商品ページを1回以上見た人 |
段階の数は多すぎないようにします。画面をすべて段階にすると、数字の変化が細かく出すぎて、どこが重要なのかが分かりにくくなります。まずは主要な4〜7段階で全体像をつかみ、ボトルネックが見つかったら、その段階の内部をさらに細かく分けて分析するのが効率的です。
もう一つ決めておきたいのが「順序の扱い」です。段階を順番どおりに通過した人だけを数えるのか、順番に関係なく各行動をした人を数えるのかで、数字は変わります。たとえば、料金ページを見ずに直接登録する人がいる場合、順番どおりの集計では、その人は登録の段階に数えられません。どちらが正しいということではなく、分析の目的に合わせて選び、明記しておくことが大切です。
段階の定義は、計測の設計と表裏一体です。どのイベントで各段階を判定するかは、トラッキングプラン(計測設計書)の作り方で解説している台帳に記載しておくと、後から定義がぶれません。
期間と対象者のそろえ方:数字がぶれる最大の原因
ファネル分析で数字がおかしくなる原因の多くは、期間と対象者のそろえ方にあります。
「同じ人」を追うか、「同じ期間」で数えるか
集計の方法には大きく二つあります。
- 期間で区切る方法:ある期間に各段階の行動をした人数を、それぞれ数えます。手軽ですが、期間の終わりに訪問した人は次の段階に進む時間がないため、後ろの段階ほど人数が少なく出ます。
- 同じ人を追う方法:ある期間に最初の段階に入った人を対象とし、その人たちが一定期間内に各段階に進んだかを数えます。手間はかかりますが、通過率を正しく計算できます。
改善の判断に使うなら、同じ人を追う方法をおすすめします。たとえば「9月1日から9月30日に無料登録した人のうち、登録から14日以内に主要機能を使った人」のように、起点と猶予期間を決めます。
猶予期間を決める
同じ人を追う場合、各段階に進むまでの猶予期間を決めます。検討期間が長い商材では、猶予期間が短すぎると通過率が低く出ます。過去のデータで、成果に至った人が最初の段階から何日で到達しているかを確認し、大半の人が到達する日数を目安に猶予期間を設定します。
比較する期間をそろえる
先月と今月を比べる場合、日数、曜日の構成、キャンペーンの有無が違うと、通過率の差がそのまま施策の効果とは言えません。比較するときは、曜日の構成をそろえた週単位での比較や、大きなキャンペーン期間を除外した比較を行います。
セグメント別比較で離脱の偏りを見つける
全体のファネルだけを見ていると、原因が埋もれてしまうことがあります。全体の通過率がそれなりでも、特定の層だけ極端に低い段階があれば、そこが改善の狙い目です。セグメントの切り口としては、次のようなものがよく使われます。
- 端末:スマートフォンとPC。画面の大きさや操作方法の違いで、入力や比較の段階に差が出やすい切り口です。
- 流入元:検索、広告、SNS、紹介など。来た目的や期待の違いが、最初の段階の通過率に表れます。
- 新規・既存:初めて来た人と再訪問の人。検討の進み具合が違います。
- プランや商品カテゴリ:何に興味を持っているかで、必要な情報や不安が変わります。
- 地域や時間帯:配送や営業時間など、サービスの提供条件が関係する場合に有効です。
セグメント比較では、母数が少ないセグメントの数字を過信しないことが重要です。数十人規模のセグメントでは、通過率が偶然大きく動きます。母数をあわせて表示し、一定以上の人数があるセグメントだけで判断するルールにしておきます。セグメント分析の進め方はユーザーセグメント分析でも詳しく扱っています。
架空の例:会員制の料理レシピサービス
架空の会員制料理レシピサービスを例に、分析の流れを示します。このサービスは無料会員登録後、一部のレシピを見るには有料プランへの加入が必要という仕組みだとします。
運営チームは、ファネルを「サイト訪問 → レシピ詳細の閲覧 → 無料会員登録 → お気に入り登録 → 有料プラン加入」の5段階で定義しました。起点は「その月に初めて訪問した人」、猶予期間は過去のデータを見て30日に設定しました。
全体の数字を並べると、最も多くの人を失っていたのは「サイト訪問 → レシピ詳細の閲覧」の段階でした。しかし、この段階は検索から特定のレシピを探しに来た人が、レシピを見てそのまま離れる自然な離脱も多く含まれます。そこでチームは、次に大きな損失だった「無料会員登録 → お気に入り登録」の段階に注目しました。
セグメント別に見ると、スマートフォンから登録した人のお気に入り登録率がPCより明らかに低く、さらに流入元別では、SNSの広告から来た人が特に低いことが分かりました。実際にスマートフォンで登録してみると、登録完了後にトップページに戻されるだけで、見ていたレシピに戻る導線がありませんでした。SNSの広告から来た人は、特定のレシピの動画を見て来ていたため、登録後に元のレシピを見失っていたのです。
チームは「登録完了後に、登録直前に見ていたレシピへ戻す」という改善の仮説を立てました。このように、全体のファネルで段階を絞り込み、セグメント比較で偏りを見つけ、実際の操作で原因を確かめる、という順番で進めると、具体的で検証可能な仮説にたどり着けます。
なお、チームは最初に最大の損失だった「サイト訪問 → レシピ詳細の閲覧」の段階も無視したわけではありません。検索から来た人のうち、目的のレシピを見つけられずに離れている人がどの程度いるかを確かめるため、サイト内検索の結果が0件だった回数を別途集計することにしました。自然な離脱と、改善すべき離脱を分けて考えることが、分析の精度を上げる鍵になります。
離脱の原因を突き止める方法
数字で段階とセグメントを絞り込んだら、原因を調べます。原因の調べ方は一つではなく、複数の手段を組み合わせると確からしさが上がります。
| 方法 | 分かること | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 自分で操作する | 画面の分かりにくさ、エラー、表示の崩れ | すべての場面でまず最初に行う |
| 画面内の行動の記録を見る | どこで迷っているか、どこまでスクロールしたか | 入力フォームや長い説明ページ |
| 問い合わせ内容を読む | 不安や疑問の具体的な内容 | 料金、契約、使い方に関わる段階 |
| ユーザーへの聞き取り | 離れた理由、期待していたこと | 価値が伝わっていない可能性がある段階 |
| 離脱直前の行動を集計する | 離脱した人が最後に見ていた画面や操作 | 段階の内部をさらに細かく分けたいとき |
特に、自分で操作することは軽視されがちですが、最も手軽で効果的な方法です。分析で絞り込んだセグメントと同じ条件(スマートフォン、特定の流入元から、初めての訪問として)で操作すると、日常的にPCで管理画面を見ている担当者には見えない問題が見つかります。
原因の仮説が立ったら、CVR改善の進め方で解説している手順で優先順位を付け、施策に落とし込みます。
分析結果を改善につなげる共有の型
ファネル分析の結果は、報告の仕方次第で改善につながるかどうかが決まります。数字の表をそのまま共有すると、受け取った側は「で、何をすればよいのか」が分かりません。共有するときは、次の順番で一枚にまとめることをおすすめします。
- 結論:最も改善余地が大きい段階と、その段階で失っている人数を一文で示します。
- 根拠:段階別の人数と通過率の表、セグメント別の比較の要点を示します。全セグメントの表を並べるのではなく、差が大きかった切り口だけを載せます。
- 原因の仮説:実際の操作や問い合わせ内容から考えられる離脱の理由を、確からしさの程度とともに書きます。
- 次の行動:試す施策、担当者、効果の確かめ方、結果を確認する時期を書きます。
- 前提:段階の定義、起点の期間、猶予期間、除外した期間など、数字の前提を最後に添えます。
前提を省略すると、次回の分析で定義が変わったことに気づかず、数字を誤って比較してしまいます。前提の記載は面倒に思えますが、継続的に同じファネルを見るためには欠かせません。
また、ファネルは一度作って終わりではなく、毎月同じ定義で更新し続けることで価値が増します。段階ごとの通過率の推移を並べておけば、施策の効果や、画面変更の副作用にも早く気づけます。毎月の数字の確認を定例会議に組み込む方法は、KPIを使った定例会議の進め方で解説しています。
よくある失敗とその避け方
ファネル分析でつまずきやすい点を整理します。
- 通過率の低さだけで改善箇所を決める:母数が小さい段階の低い通過率より、母数の大きい段階で失っている人数のほうが、全体への影響は大きいことがあります。「その段階を改善したら最終成果がどれだけ増えるか」で比べます。
- 期間で区切った集計で通過率を出す:期間の終わりに入った人が次の段階に進めず、後ろの段階の通過率が低く出ます。改善の判断には同じ人を追う集計を使います。
- 段階を細かくしすぎる:全体像がつかめなくなります。まず主要な段階で見て、問題のある段階だけを細分化します。
- 自然な離脱まで改善しようとする:目的を果たして離れる人や、そもそも対象顧客ではない人の離脱は、無理に減らす必要がありません。どの離脱が問題なのかを見極めます。
- 計測の不具合を見落とす:ある段階の人数が急に減った場合、画面の変更で計測が止まっていることがあります。数字の急変は、まず計測を疑います。
- 分析で終わり、改善につながらない:分析結果の報告には、必ず「次に何を試すか」を添えます。
ファネル分析のチェックリスト
分析を始める前と、結果を共有する前に、次の項目を確認してください。
- 分析の目的と最終成果が一文で説明できる
- 各段階が計測できる具体的な行動で定義されている
- 段階の数が主要な4〜7段階に収まっている
- 順番どおりの通過を求めるかどうかを明記した
- 起点となる期間と猶予期間を決め、同じ人を追う集計になっている
- 比較する期間の曜日構成やキャンペーンの有無をそろえた
- 各段階の人数、通過率、失っている人数を並べた
- セグメント別に比較し、母数の少ないセグメントは参考扱いにした
- ボトルネックの段階を、実際に同じ条件で操作して確認した
- 結果の共有に「次に試すこと」を含めた
よくある質問
Q. ファネル分析にはどのツールを使えばよいですか?
GA4などのアクセス解析ツールや、プロダクト分析ツールにはファネルを作る機能があります。最初はそうした機能で十分です。複数のシステムのデータを組み合わせたい場合や、決済などの業務データと結合したい場合は、データを集約して集計する仕組みが必要になります。ツールの選び方はプロダクト分析ツールの選び方で比較しています。
Q. 段階の数はいくつが適切ですか?
最初の全体像をつかむ段階では4〜7個程度をおすすめします。ボトルネックが見つかったら、その段階の内部を3〜5個程度にさらに分けて詳しく見る、という二段構えで進めると、全体と詳細のバランスが取れます。
Q. 通過率がどのくらいなら良いのか分かりません。
通過率の「良し悪し」は、商材、価格帯、流入元によって大きく異なるため、一般的な基準を当てはめるのは難しいものです。自社の過去の推移と比べること、セグメント間で比べること、そして改善した場合に最終成果がどれだけ増えるかを試算することで、判断の材料にしてください。
Q. ファネル分析とコホート分析はどう使い分けますか?
ファネル分析は「成果に至るまでのどこで離れるか」を見る分析、コホート分析は「同じ時期に始めた人が、時間とともにどれだけ残るか」を見る分析です。獲得や転換の改善にはファネル分析、継続や定着の改善にはコホート分析が向いています。コホート分析についてはコホート分析のやり方で解説しています。
Otsumuに相談できること
主要な行動が正しく計測されていて、分析ツールでファネルを作れる担当者がいる場合は、この記事の手順で段階を定義し、セグメント比較まで社内で進められます。まずは最初の版のファネルを作り、毎月同じ定義で見続けることが大切です。
一方で、段階の判定に必要な計測がそろっていない、Webとアプリ、決済システムなど複数のデータをまたいで追う必要がある、分析はできたが改善の施策に落とし込めない、といった状況では、計測の整備から改善の実行までを一緒に組み立てられる相手がいると進みが早くなります。
Otsumuは自らも事業を手がける立場から、ファネルの設計、計測の整備、データの集約、改善施策の実装までを一気通貫で支援しています。KPI改善コンサルティングでは、目的から逆算して見るべき段階を絞り込み、分析を毎月の改善行動につなげる運用づくりをお手伝いします。
いまのファネルの定義を確認したい、どの段階から手を付けるべきか整理したい、という段階からご相談いただけます。まずは30分の無料相談で状況をお聞かせください。
この記事について
Otsumu株式会社が執筆しました。統計値や他社の事例には依拠せず、進め方と判断の枠組みを中心にまとめています。法務・税務・会計などの制度は、専門家や公的窓口で最新の情報をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.01