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ユーザーセグメント分析:優良顧客の特徴を見つけて増やす方法

ユーザーセグメント分析は、継続期間や単価の高い優良顧客の共通点を見つけ、獲得や育成の施策に活かすための方法です。優良顧客の定義、切り口の選び方、分析の手順、施策への落とし込み方とよくある失敗例を解説します。

売上を伸ばしたいとき、すべての顧客に同じ施策を打つよりも、「長く使い続け、たくさん買ってくれる顧客はどんな人か」を知り、その特徴を持つ顧客を増やす方が効率よく成果につながります。そのための方法がユーザーセグメント分析です。顧客を共通の特徴でグループに分け、グループごとの継続率や単価を比べることで、どんな顧客が事業を支えているのかを明らかにします。

結論から言えば、セグメント分析で大切なのは、細かく分けることではなく「優良顧客の定義を先に決め、その違いを説明できる切り口を探す」ことです。思いつく属性で分けて表を眺めるだけでは、施策につながる発見は得にくくなります。何をもって優良とするかを決め、優良顧客とそれ以外を比べて違いを見つけ、その違いを獲得・育成の施策に変える、という流れで進めます。

この記事は、SaaSやEC、会員制サービスなどで顧客データを持っている事業責任者やマーケティング担当者に向けて、優良顧客の定義、セグメントの切り口、分析の手順、施策への活かし方、よくある失敗を解説します。

ユーザーセグメント分析とは何か

セグメント分析とは、顧客を共通する特徴でグループ(セグメント)に分け、グループごとの行動や成果を比べる分析です。全体の平均だけを見ていると見えない違いが、グループに分けることで浮かび上がります。

たとえば、全体の継続率が横ばいでも、ある流入経路から来た顧客の継続率は高く、別の経路の顧客は低い、ということはよくあります。平均だけを見ていると「継続率は安定している」で終わりますが、セグメントに分ければ、伸ばすべき経路と見直すべき経路が分かります。

セグメント分析の目的は、大きく三つあります。

  • 獲得:優良顧客になりやすい人の特徴を知り、その人たちが多く集まる経路や訴求に投資する。
  • 育成:優良顧客が初期にしている行動を知り、新規顧客を同じ行動に導く。
  • 維持:離れやすいセグメントを知り、早めに支援や案内を行う。

似た分析にRFM分析があります。RFM分析は購買の新しさ・頻度・金額という決まった三つの軸で顧客をランク分けする方法で、セグメント分析の代表的な手法の一つです。購買データが中心の事業ならRFM分析から始めるのも有効で、具体的な手順はRFM分析のやり方で解説しています。

最初に「優良顧客」を定義する

セグメント分析の出発点は、優良顧客の定義です。定義がないまま分析を始めると、どのセグメントが良いのかを判断する基準がありません。事業のモデルによって、優良顧客の定義は変わります。

事業のモデル優良顧客の定義の例見る指標
サブスクリプション型SaaS一定期間以上継続し、上位プランや追加契約がある継続期間、月額、拡大売上
EC・小売一定期間内に複数回購入し、購入金額が大きい購入回数、累計購入額、購入間隔
会員制サービス継続して利用し、紹介や口コミにつながっている継続期間、利用頻度、紹介数
BtoBの受託・サービス継続的に発注があり、粗利が確保できている取引期間、取引額、粗利

定義は一つの数字にこだわる必要はありません。ただし、売上だけで定義すると、値引きが大きく粗利の小さい顧客や、サポートの負担が大きい顧客まで優良に含まれてしまうことがあります。可能であれば粗利や対応コストも考慮し、事業にとって本当に価値のある顧客を定義しましょう。顧客の価値を長期で見る考え方はLTVを伸ばす施策でも整理しています。

定義は「判定できる形」にする

「よく使ってくれる顧客」のようなあいまいな定義では、データで判定できません。「契約から12か月以上継続し、かつ月額が上位二つのプランのいずれか」のように、データの項目で機械的に判定できる形に落とし込みます。数か月後に同じ分析をやり直したときに同じ結果が出ることが、施策の効果を比べるうえで欠かせません。

セグメントの切り口の選び方

優良顧客を定義したら、優良顧客とそれ以外を分ける特徴を探します。切り口は大きく四つの種類に分けられます。

切り口の種類例分かること使いやすい施策
属性業種、企業規模、地域、年齢層どんな顧客が優良になりやすいか広告の対象設定、営業の優先順位
獲得経路流入元、キャンペーン、紹介の有無どこから来た顧客が優良になりやすいか集客予算の配分
初期行動最初の一週間に使った機能、初回購入の商品優良顧客が最初に何をしているかオンボーディング、初回の案内
利用状況利用頻度、利用している機能の数、利用人数継続している顧客の使い方活用支援、アップセルの提案

最初から多くの切り口を試すより、「施策に変えられる切り口」を優先します。たとえば、地域による差が見つかっても、その地域に絞った集客ができなければ施策にはなりません。一方、初期行動の違いは、オンボーディングの改善という形ですぐに施策に変えられます。

特に有効なことが多いのが、獲得経路と初期行動の切り口です。獲得経路は集客の投資判断に直結し、初期行動は自社でコントロールできる部分が大きいからです。初期の行動と継続の関係は、プロダクトの価値を顧客が実感する瞬間、いわゆるアハモーメントを探す手がかりにもなります。

データにない特徴はインタビューで補う

データで分けられる切り口には限りがあります。優良顧客が「なぜ」そのサービスを選び、続けているのかは、多くの場合データには残っていません。導入のきっかけになった出来事、比較した他の手段、社内で誰が推進しているかといった情報は、顧客に直接聞くことで初めて分かります。

おすすめは、優良顧客と、早期に離れた顧客の両方から数人ずつ話を聞くことです。両者の話を比べると、データでは見えなかった違いが浮かび上がります。インタビューで得た仮説を、今度はデータで確かめられる形に置き換えられれば、分析の切り口がさらに広がります。たとえば「導入を推進した担当者が現場の責任者だった」という話が多ければ、申込時に役職を尋ねる項目を加えることで、次回からはデータで比べられるようになります。

ユーザーセグメント分析の手順

実際の分析は、次の手順で進めます。

  1. 目的を決める:獲得・育成・維持のどれに使う分析かを決める。目的によって見る切り口が変わる。
  2. 優良顧客を定義する:判定できる形で定義し、全顧客を優良とそれ以外に分ける。
  3. データを集める:顧客ごとに、属性、獲得経路、初期行動、利用状況、売上のデータを一つの表にまとめる。
  4. 切り口ごとに比べる:切り口ごとにセグメントを作り、セグメントごとの優良顧客の割合、継続率、単価を比べる。
  5. 差の大きい切り口を絞り込む:優良顧客の割合に大きな差があり、かつ各セグメントの人数が十分にある切り口を選ぶ。
  6. 仮説を立てる:なぜその差が生まれるのかを、営業やカスタマーサクセスの担当者の話、顧客へのインタビューも交えて考える。
  7. 施策に落とし込む:獲得・育成・維持のどの施策で、その特徴を持つ顧客を増やすかを決める。
  8. 効果を確かめる:施策の前後で、狙ったセグメントの人数や優良顧客の割合が変わったかを確認する。

手順3のデータ集めが最も手間のかかる工程です。属性はCRM、獲得経路はアクセス解析や広告データ、利用状況はプロダクトのログ、売上は請求システムと、データが分散していることが多いためです。顧客IDで各データをつなげる準備が必要になります。

比べるときは継続期間の違いに注意する

古くからの顧客ほど累計の売上が大きくなるため、単純に累計売上で比べると「古い顧客が優良」という当たり前の結果しか出ません。比べるときは、契約から同じ期間が経った時点での継続率や売上をそろえて比べるのが基本です。この考え方はコホート分析と同じで、獲得した時期ごとにグループを分けてから比べると、公平な比較ができます。

分析用のデータを準備する:顧客単位の表を作る

セグメント分析の質は、データの準備で大きく決まります。分析しやすいのは、一人の顧客(BtoBなら一社)を一行とし、その顧客に関する情報を列として横に並べた表です。行動ログや購買履歴のように一人に何行もあるデータは、そのままでは比べにくいため、顧客ごとに集計してから表に加えます。

表に含める列の例は次のとおりです。

  • 顧客ID、獲得日(契約日・初回購入日)
  • 属性:業種、規模、地域、契約プランなど
  • 獲得経路:最初の流入元、キャンペーン、紹介の有無
  • 初期行動:獲得から一定期間内の利用回数、使った機能、初回購入の商品
  • 現在の状態:継続中か、解約日、直近の利用日
  • 成果:累計売上、月額、粗利、追加契約の有無
  • 判定結果:優良顧客かどうか

ポイントは、初期行動を「獲得から一定期間内」という同じ物差しで集計することです。獲得日からの経過日数で区切らずに累計の利用回数を使うと、長く使っている顧客ほど値が大きくなり、初期行動の違いが見えなくなります。

また、データの抜けや表記の揺れにも注意が必要です。業種が自由入力で「製造」「製造業」「メーカー」と揺れていると、正しくセグメントに分けられません。分析の前に表記をそろえ、獲得経路が記録されていない顧客は「不明」として別に扱うなど、ルールを決めてから集計します。このデータ準備の工程を一度仕組みにしておくと、次回以降の分析は短時間でやり直せるようになります。

架空の例:業務SaaSでの分析イメージ

たとえば、中小企業向けの業務管理SaaSを提供する会社で、継続率を高めるためにセグメント分析を行ったとします。優良顧客を「契約から12か月以上継続し、利用人数が契約時より増えている顧客」と定義しました。

業種や企業規模で分けても、優良顧客の割合に大きな差はありませんでした。ところが、初期行動で分けると、契約から二週間以内に「社内のメンバーを3人以上招待した顧客」は優良顧客の割合が明らかに高いことが分かりました。カスタマーサクセスの担当者に聞くと、一人で使い始めた顧客は社内に広がらず、担当者の異動とともに使われなくなる傾向があるとのことでした。

この発見をもとに、オンボーディングの案内を「まず自分で設定する」から「チームのメンバーを招待して一緒に始める」に変え、招待が進んでいない顧客には二週目に個別に声をかける運用を始めました。施策の効果は、招待した顧客の割合と、その後の継続率の変化で確かめていきます。ここで注意したいのは、招待と継続の関係が見つかっても、招待が継続の原因だとは限らないことです。もともと社内で導入に積極的な会社が招待もしている可能性があるため、施策の前後の変化で因果を確かめる姿勢が欠かせません。

分析結果を獲得と育成の施策に活かす

セグメント分析の価値は、分析結果をもとに施策を変えたときに初めて生まれます。発見の種類ごとに、つなげやすい施策を整理します。

獲得:優良顧客が多い経路と対象に寄せる

優良顧客の割合が高い獲得経路が分かったら、その経路への投資を増やし、割合の低い経路の投資を見直します。このとき、獲得単価だけで経路を比べるのではなく、獲得した顧客がどれくらい優良顧客になるかまで含めて評価することが重要です。安く獲得できても継続しない経路より、獲得単価が高くても優良顧客になりやすい経路の方が、長期的には事業に貢献します。

広告や営業の対象設定にも活かせます。優良顧客に多い業種や規模、課題が分かれば、広告の訴求やサイトの事例をその顧客像に合わせることで、似た顧客を集めやすくなります。

育成:優良顧客の初期行動に導く

優良顧客が初期にしている行動が分かったら、新規顧客をその行動に導く仕組みを作ります。オンボーディングの手順の順番を変える、最初の案内メールでその機能を紹介する、使い方の説明会を開く、といった方法があります。施策を始めるときは、その行動をとった新規顧客の割合を週ごとに追い、案内の変更で割合が上がったか、さらにその顧客たちの継続率が上がったかを二段階で確かめます。行動の割合が上がっても継続率が変わらなければ、その行動は継続の原因ではなかった可能性があり、次の仮説に移る判断材料になります。

維持:離れやすいセグメントを早めに支援する

継続率の低いセグメントが分かったら、そのセグメントの顧客に早めに支援を届けます。利用が少ない顧客に案内を送る、カスタマーサクセスの担当者が個別に連絡するなど、セグメントに合わせて支援の手厚さを変えます。解約の兆候をデータで捉える方法は解約の予兆を検知する方法で解説しています。

セグメント分析のチェックリスト

分析を始める前と、結果を施策に変える前に確認したい項目です。

  • 分析の目的(獲得・育成・維持)が決まっている
  • 優良顧客の定義が、データで判定できる形になっている
  • 顧客IDで属性・経路・行動・売上のデータをつなげられる
  • 比べるときに、契約からの期間をそろえている
  • 各セグメントの人数が、比較に耐える程度にある
  • 差が見つかった切り口について、現場の担当者の意見を聞いた
  • 相関と因果を区別し、施策の前後で効果を確かめる計画がある
  • 分析結果を、誰がどの施策に変えるかが決まっている

よくある失敗とその避け方

細かく分けすぎる。 切り口を掛け合わせて細かく分けると、各セグメントの人数が少なくなり、偶然の差を発見と取り違えやすくなります。まず一つずつの切り口で比べ、差が大きいものだけを掛け合わせるようにしましょう。

分析して終わる。 興味深い発見があっても、施策に変えなければ成果は生まれません。分析を始める前に、結果をどの会議で誰に共有し、どの施策を誰が担当するかを決めておきます。

相関を因果と取り違える。 ある行動をしている顧客の継続率が高くても、その行動が継続の原因とは限りません。相関と因果の違いを意識し、施策を打った後の変化で確かめる姿勢が大切です。

ペルソナ作りで止まる。 セグメント分析の結果から理想の顧客像を描くことは有益ですが、描いて満足してしまうと施策が変わりません。顧客像は、広告の対象設定やオンボーディングの改善といった具体的な変更に結びつけて初めて意味を持ちます。

一度だけ分析して更新しない。 顧客の構成や製品は変わっていくため、一度見つけた特徴がずっと有効とは限りません。四半期や半期ごとに同じ分析をやり直し、優良顧客の特徴が変わっていないかを確かめましょう。

よくある質問

Q. 顧客数が少なくてもセグメント分析はできますか?

顧客数が少ないと、セグメントに分けたときに各グループの人数が少なくなり、数字の差が偶然によるものか判断しにくくなります。その場合は、切り口を二つか三つのグループに大きく分ける、定量分析に加えて優良顧客へのインタビューで特徴を探る、といった方法を組み合わせましょう。

Q. どのツールで分析すればよいですか?

顧客数が少なく、データが一つの表にまとまるなら、スプレッドシートでも分析できます。データが複数のシステムに分かれている場合や、顧客数が多い場合は、データを一か所に集めてSQLやBIツールで集計する方が効率的です。ツールよりも、顧客IDでデータをつなげられるかどうかが重要です。

Q. RFM分析とセグメント分析はどう使い分けますか?

RFM分析は購買の新しさ・頻度・金額という決まった軸で顧客を分ける方法で、購買データが中心のECや小売で特に使いやすい手法です。セグメント分析はより広い概念で、獲得経路や初期行動など、事業に合わせて自由に切り口を選びます。まずRFM分析で顧客の状態をつかみ、その後に優良顧客の特徴をさまざまな切り口で探る、という組み合わせも有効です。

Q. 分析結果をもとにしたペルソナは、どのくらいの頻度で見直すべきですか?

製品や価格、集客の方法が大きく変わったときは必ず見直しましょう。大きな変化がなくても、半期に一度程度は同じ分析をやり直し、優良顧客の特徴が変わっていないかを確かめることをおすすめします。

Otsumuに相談できること

顧客データが一つのシステムにまとまっていて、優良顧客の定義も明確に決められるなら、セグメント分析は社内の担当者だけで十分に始められます。この記事の手順に沿って、まず獲得経路と初期行動の二つの切り口から比べてみてください。小さな発見でも、オンボーディングや集客の配分を変えるきっかけになります。

一方で、顧客データが複数のシステムに分かれていて顧客IDでつなげられない、優良顧客の定義について部署間で意見が分かれている、分析はしたが施策に結びつかない、といった状況では、外部の視点を入れた方が早く進むことがあります。分析と施策の間をつなぐ設計が、成果を左右する部分だからです。

OtsumuのKPI改善コンサルティングでは、優良顧客の定義づくりから、データの整備、セグメント分析、獲得・育成施策への落とし込み、効果の検証までを一緒に進めます。顧客データを一か所に集める仕組みが必要な場合は、CRM開発やダッシュボード開発として、目的に必要な範囲で仕組みづくりも支援します。

どの顧客に注力すべきかを数字で判断したいとお考えなら、30分の無料相談で今お持ちのデータと課題を伺い、分析の進め方を一緒に整理します。

この記事について

Otsumu株式会社が執筆しました。統計値や他社の事例には依拠せず、進め方と判断の枠組みを中心にまとめています。法務・税務・会計などの制度は、専門家や公的窓口で最新の情報をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.01

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