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マッチングサービスの本人確認・審査・通報機能をどう設計するか

マッチングサービスのトラブル防止は、本人確認・登録と掲載の審査・通報とブロックを、取引の型や対面の有無に合わせて組み合わせることが基本です。eKYCを含む確認水準の決め方、審査と通報機能の設計、運営体制の作り方を解説します。

マッチングサービスでトラブルを防ぐ仕組みは、本人確認、登録・掲載の審査、通報とブロックの三つを、取引の前・最中・後に分けて組み合わせることで成り立ちます。どれか一つを強くするのではなく、取引の型と金額、利用者同士が実際に会うかどうかに合わせて、それぞれの水準を決めることが大切です。また、仕組みは作って終わりではなく、通報を受けて判断し対応する運営の体制とルールがあって初めて機能します。システムの設計と運用の設計を同時に進めることが、安心して使われるサービスへの近道です。

この記事は、マッチングサービスやマーケットプレイスを立ち上げようとしている事業責任者、信頼性に関わる機能の設計を任された開発担当者やプロダクト担当者、すでに運営しているサービスでトラブルへの対応に課題を感じている方に向けて書いています。本人確認の方式と水準の決め方、審査の設計、通報・ブロック機能の設計、運営の体制づくりを、判断表とチェックリストで説明します。

読み終えたときに、自社のサービスにどの水準の本人確認と審査が必要か、通報を受けたときに誰がどう判断して対応するかを決め、開発会社に要件を伝えられる状態になることを目指しています。

マッチングサービスで信頼性の設計が重要な理由

マッチングサービスでは、利用者は運営が用意した商品ではなく、見知らぬ他の利用者と取引します。相手が本当に名乗っているとおりの人物か、約束を守ってくれるか、危険な目に遭わないか、という不安が、利用をためらわせる大きな要因になります。

さらに、トラブルが一度起きると、その影響は当事者だけにとどまりません。サービス全体の評判が下がり、他の利用者や提供者が離れていく原因になります。立ち上げ期に苦労して集めた参加者を守るためにも、信頼性の仕組みは早い段階から設計しておく必要があります。

一方で、確認や審査を厳しくしすぎると、登録の手間が増えて参加者が集まりにくくなります。特に立ち上げ期は、参加者を集めることと安全を確保することのバランスが重要です。立ち上げ期の参加者の集め方は、マッチングサービスの立ち上げ:需要と供給の鶏卵問題をどう解くかで説明しています。

取引の段階ごとに必要な仕組み

信頼性の仕組みは、取引のどの段階でリスクを減らすかで整理すると分かりやすくなります。

段階目的主な仕組み
取引の前問題のある参加者や掲載を入れない本人確認、資格・実績の確認、登録・掲載の審査、禁止事項の明示
取引の最中やり取りを見守り、問題を早く見つけるサービス内のメッセージ、不適切な表現の検知、取引状況の記録
取引の後問題を報告でき、繰り返させない相互評価、通報、ブロック、利用停止、トラブル時の窓口

どの段階にどれだけ力を入れるかは、サービスの型によって変わります。オンラインで完結する少額の取引なら、取引の後の評価と通報を中心に据え、本人確認は簡易にとどめることもできます。利用者同士が対面で会うサービスや、自宅に人を招くサービス、高額な取引を扱うサービスでは、取引の前の確認を厳しくする必要があります。

本人確認の方式と水準の決め方

本人確認の方式

本人確認には、確認の強さが異なるいくつかの方式があります。

  • 連絡先の確認:メールアドレスや電話番号に確認用のコードを送り、実際に使われている連絡先かを確かめる
  • 書類の提出と目視確認:運転免許証などの本人確認書類の画像を提出してもらい、運営が目視で確認する
  • オンラインでの本人確認:本人確認書類と本人の顔の撮影を組み合わせるなど、オンラインで本人であることを確かめる方式。eKYC(オンライン本人確認)と呼ばれ、専用の外部サービスを使うことが多い
  • 事業者の確認:法人であれば登記情報、個人事業主であれば開業の届出などで事業の実在を確かめる
  • 資格の確認:専門職の資格証や登録番号を確認する

水準の決め方

どの方式をどの参加者に求めるかは、次の観点で決めます。

判断の観点確認を厳しくする方向確認を簡易にできる方向
対面の有無利用者同士が対面で会う、自宅を訪問するオンラインで完結する
取引の金額高額な取引、継続的な取引少額の取引
立場代金を受け取る側、サービスを提供する側代金を支払う側
扱う情報個人の生活や健康、子どもに関わる一般的な商品やサービス
法令上の要請業種によって確認が求められる特段の要請がない

多くのサービスでは、全員に一律の水準を求めるのではなく、立場や利用の段階に応じて水準を変えます。たとえば、閲覧や問い合わせは連絡先の確認だけで可能にし、取引を申し込む段階で本人確認書類を求め、代金を受け取る提供者にはより強い確認を求める、といった形です。こうすることで、最初の登録の手間を減らしつつ、リスクの高い行為の前には十分な確認を行えます。

法令上の確認

サービスの業種によっては、法令で利用者の年齢確認や本人確認が求められる場合があります。たとえば、異性の交際を目的とするサービスや、特定の資格が必要な業務の仲介、金銭のやり取りの方式によっては、事業の届出や確認の方法に関する決まりが関わることがあります。どの決まりが自社のサービスに当てはまるかは、サービスの内容によって判断が分かれるため、弁護士などの専門家や所管する官庁の窓口で最新の情報を確認してください。決済に関わる法規制の論点は、マッチングプラットフォームの決済設計:エスクローと手数料徴収で整理しています。

本人確認で得た情報の扱い

本人確認で受け取る書類の画像や個人情報は、厳重に扱う必要があります。必要な期間を過ぎたら削除する、閲覧できる運営の担当者を限定する、外部の本人確認サービスを使う場合はデータの保存場所と取り扱いを確認する、といった点を決めておきます。個人情報の取り扱いについては、プライバシーポリシーに明記し、関係する法令に沿っているかを専門家に確認します。

登録・掲載の審査の設計

何を審査するか

審査の対象は、大きく二つあります。一つは参加者そのもの(登録の審査)、もう一つは参加者が掲載する情報(掲載の審査)です。

登録の審査では、本人確認の結果に加えて、サービスの対象として適切か(対象地域、対象業種、年齢など)、過去に利用停止になった人物でないか、などを確認します。

掲載の審査では、掲載内容が禁止事項に当たらないか、誇大な表現や事実と異なる記載がないか、価格や条件の表示が適切か、外部への誘導や連絡先の直接記載がないかなどを確認します。

審査の方式

  1. 事前審査:登録や掲載を公開する前に、運営が確認して承認する。安全性は高いが、公開までに時間がかかり、運営の手間も大きい
  2. 事後審査:登録や掲載をすぐに公開し、後から運営が確認する。参加者の手間は少ないが、問題のある掲載が一時的に公開される
  3. 組み合わせ:初回の登録や掲載は事前審査、実績のある参加者の掲載は事後審査、といった形で使い分ける

立ち上げ期は件数が少ないため、事前審査で一件ずつ丁寧に確認し、何が問題になりやすいかを把握するのがおすすめです。件数が増えてきたら、問題の傾向に合わせて、自動での検知(禁止語句の検知、類似した掲載の検知など)と、運営の確認を組み合わせていきます。

審査の基準を文書にする

審査の基準が担当者の感覚に頼っていると、担当者によって判断がぶれ、参加者からの不満や問い合わせにつながります。禁止事項と判断の基準を文書にし、判断に迷った事例と結論を記録して、基準を更新していきます。

通報・ブロック機能の設計

通報機能

通報は、運営が見落とした問題を、利用者の目で見つけてもらうための仕組みです。設計では次の点を決めます。

  • 通報できる対象:利用者、掲載、メッセージ、評価のそれぞれから通報できるようにするか
  • 通報の理由の選択肢:「なりすましの疑い」「不適切な内容」「約束が守られなかった」「金銭の要求」「その他」など、運営が対応の優先度を判断しやすい分類にする
  • 通報時に記録する情報:通報者、対象、理由、自由記述、該当するメッセージや取引の記録
  • 通報後の通知:通報を受け付けたことを通報者に伝える。対応の結果をどこまで伝えるかも決める
  • 通報された側への扱い:通報があったことを、誰が通報したかが分からない形で扱う

ブロック機能

ブロックは、利用者が自分で特定の相手との接触を断つための仕組みです。ブロックした相手からはメッセージや申し込みが届かなくなり、多くの場合、相手から自分の掲載やプロフィールが見えなくなるようにします。ブロックは運営の判断を待たずに利用者が自分を守れる手段なので、特に対面のサービスや個人間のやり取りがあるサービスでは、早い段階から用意しておくべき機能です。

運営による措置

通報を受けて運営が問題を確認したときの措置も、段階を決めておきます。

  • 注意の連絡
  • 掲載の非公開や修正の依頼
  • 一時的な利用停止
  • 退会の措置と、再登録の制限

措置の基準と手続きは利用規約に定め、措置を行った記録を残します。誰がいつどんな判断をしたかを後から確認できるように、管理画面での操作は記録を残す設計にします。操作の記録の考え方は、管理画面の操作ログ設計も参考にしてください。

評価・レビューを信頼性の仕組みとして使う

取引後の相互評価は、次に取引する人が相手を選ぶ材料になるだけでなく、問題のある参加者を早く見つける手がかりにもなります。ただし、設計を誤ると、かえって信頼を損なう原因にもなります。

よく起きる問題の一つは、報復を恐れて正直な評価が書かれないことです。片方が評価を書くと相手にすぐ見える仕組みでは、低い評価をつけると仕返しをされるのではと考え、利用者が高い評価ばかりをつけるようになります。これを避けるには、双方が評価を書き終えるか、一定期間が過ぎるまで、どちらの評価も公開しない形が有効です。

もう一つは、評価の操作です。知人に頼んで架空の取引を作り、高い評価を集めるといった行為が起こりえます。評価を書けるのは実際に取引が完了した当事者に限り、同じ相手との取引が短期間に繰り返されている場合は運営が確認する、といった対策を検討します。

また、低い評価がついたときに、それを運営が確認する仕組みも用意しておきます。低い評価の中には、通報には至らないものの、提供者の対応に問題があったことを示すものが含まれていることがあります。一定以下の評価がついた取引を管理画面で一覧にし、運営が内容を確認するだけでも、問題の早期発見につながります。

運営の体制づくり

信頼性の仕組みは、システムだけでは機能しません。通報を受け、判断し、対応する人と手順が必要です。

  1. 担当者を決める:審査と通報対応の担当者を決め、不在のときの代わりも決めます。
  2. 対応の優先度を決める:身体の安全に関わる通報、金銭の被害に関わる通報は最優先で対応するなど、理由ごとの優先度と対応の目安時間を決めます。
  3. 判断の基準を文書にする:どんな場合にどの措置を取るか、判断に迷ったときに誰に相談するかを決めます。
  4. 緊急時の対応を決める:利用者の身体の安全に関わる事態や、犯罪の疑いがある場合に、警察や専門機関への相談を含めた対応の手順を決めます。
  5. 記録と振り返りの場を設ける:通報と対応の記録を定期的に振り返り、審査の基準や機能の改善につなげます。

立ち上げ期は、創業メンバーが自ら通報対応を行うことも多いでしょう。その段階で判断の基準と記録の型を作っておくと、担当者を増やすときに引き継ぎやすくなります。

信頼性の設計のチェックリスト

  • 取引の型と金額、対面の有無から、必要な確認の水準を決めた
  • 立場や利用の段階ごとに、求める本人確認の方式を決めた
  • 自社のサービスに関係する法令上の確認の要否を、専門家に確認した
  • 本人確認で得た情報の保存期間と閲覧権限を決めた
  • 登録と掲載の審査の方式(事前・事後・組み合わせ)を決めた
  • 禁止事項と審査の基準を文書にした
  • 利用者・掲載・メッセージ・評価から通報できる
  • 利用者が自分でブロックできる
  • 運営の措置の段階と基準を利用規約に定めた
  • 審査と通報対応の担当者、優先度、目安時間を決めた
  • 緊急時の対応の手順を決めた
  • 管理画面での操作が記録に残る

よくある失敗とその避け方

立ち上げ期に確認を厳しくしすぎる

最初から全員に強い本人確認を求めると、登録の途中で離脱する人が増え、参加者が集まりません。リスクの高い行為の前に確認を求める段階的な設計にすることで、手間と安全のバランスを取れます。

通報機能はあるが対応する人がいない

通報を受け付けても、誰も確認しない、対応が遅い、結果が伝わらない、という状態では、利用者は通報しても無駄だと感じ、サービスへの信頼を失います。機能と同時に、対応の体制と目安時間を決めます。

審査の基準が担当者の感覚に頼っている

基準が文書になっていないと、担当者によって判断がぶれ、参加者から不公平だという不満が出ます。判断に迷った事例を記録し、基準を少しずつ明確にしていきます。

サービス外でのやり取りへの誘導を放置する

メッセージで外部の連絡先や別のサービスに誘導され、サービスの外でトラブルが起きると、運営は状況を把握できず、利用者を守れません。外部への誘導を禁止事項として明示し、メッセージ内の連絡先の記載を検知する仕組みを検討します。

具体的な場面で考える:自宅訪問型サービスの例

架空の一般例として、ベビーシッターや家事代行のように、提供者が利用者の自宅を訪問するサービスを考えます。

提供者は利用者の自宅に入り、子どもや高齢者と接することもあるため、提供者側には強い確認を求めます。登録時にオンラインでの本人確認を行い、運営との面談で経験や対応範囲を確認し、関連する資格があれば資格証を確認します。掲載の公開は運営の事前審査を経てからとします。

利用者側も、提供者を自宅に招く以上、身元が分かることが提供者の安心につながります。そこで、閲覧は連絡先の確認だけで可能にし、最初の依頼の前に本人確認を求めます。

取引の最中は、連絡をサービス内のメッセージに限定し、外部の連絡先の記載を検知して運営に知らせます。訪問の後は相互評価を行い、低い評価や通報があった場合は運営が双方に事情を聞きます。身体の安全に関わる通報は最優先とし、確認が取れるまで該当する提供者の掲載を一時的に非公開にする手順を決めておきます。

よくある質問

Q. eKYCの導入は必須ですか?

すべてのマッチングサービスで必須というわけではありません。取引の型、対面の有無、金額、業種に関する法令上の要請によって判断します。法令上の確認が求められる業種では、認められた確認の方法を使う必要があるため、専門家に確認してください。

Q. 本人確認書類の画像はどれくらいの期間保存すべきですか?

法令で保存が求められる場合はその期間に従い、そうでない場合は確認が終わった後の保存の必要性を検討して、必要以上に持たないようにするのが基本です。具体的な期間は、自社のサービスに関係する法令とプライバシーポリシーに照らして、専門家と相談して決めてください。

Q. 通報の対応結果を通報者に伝えるべきですか?

受け付けたことと、確認して対応したことは伝えるのが望ましいでしょう。一方で、通報された側への措置の詳しい内容は、相手のプライバシーにも配慮が必要です。どこまで伝えるかの方針を決め、利用規約やヘルプページに示しておくと、利用者の期待とのずれを減らせます。

Q. 審査や通報対応の一部をAIで自動化できますか?

禁止語句の検知、不適切な画像の検知、掲載内容の一次分類などは、AIや自動検知の仕組みで運営の負担を減らせます。ただし、利用停止のように参加者に大きな影響を与える判断は、人が確認してから行うのが安全です。自動化は、運営が確認すべきものを見つけて優先度をつける役割から始めるのがおすすめです。

Otsumuに相談できること

オンラインで完結する少額の取引が中心で、連絡先の確認と運営の目視での審査、問い合わせフォームでの通報受付で足りる段階であれば、この記事のチェックリストを使って、社内で信頼性の仕組みと運営のルールを整えることは十分可能です。まずは禁止事項と審査の基準を文書にし、通報への対応の流れを決めるところから始めてみてください。

一方で、利用者同士が対面で会うサービスや高額な取引を扱うサービスで、オンラインでの本人確認や段階的な確認、審査の管理画面、通報・ブロック、外部への誘導の検知などをシステムとして組み込みたい場合は、設計と開発の経験が品質を左右します。既存のサービスでトラブルへの対応が追いつかなくなっている場合も、仕組みと運用の両面から見直すと改善の糸口が見つかることがあります。

Otsumuでは、信頼性の仕組みの設計から、本人確認サービスとの連携、審査や通報対応の管理画面の開発、運営の負担を減らす自動検知の組み込みまでを一貫して支援しています。法令の判断は専門家と連携していただく前提で、その結論をシステムと運用に落とし込みます。詳しくはマッチングサービス開発のページをご覧ください。サービス全体の機能設計から検討したい場合は、マッチングサービスの作り方:必要な機能・決済・信頼性の設計もあわせてご覧ください。

自社のサービスにどの水準の確認と審査が必要か、まずは状況を伺いながら一緒に整理することもできます。30分の無料相談からお気軽にご連絡ください。

この記事について

Otsumu株式会社が執筆しました。統計値や他社の事例には依拠せず、進め方と判断の枠組みを中心にまとめています。法務・税務・会計などの制度は、専門家や公的窓口で最新の情報をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.01

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