この事例の要点
- P&S事業の売上は製品本体と消耗品の販売から成り、同社はこの事業を全社の収益基盤を支える「コア事業」と位置づけています。
- 同社は「つながるビジネス」の拡大を掲げ、利用実態の把握による提供価値の向上や純正消耗品の利用促進に努めていると記載しています。
- 消耗品の自動配送などを提供する契約型サービスやサブスクリプションモデルを、継続的な収益を確保する手段として挙げています。
どんな事業か
ブラザー工業株式会社は、プリンティング・アンド・ソリューションズ事業(P&S事業)、インダストリアル・プリンティング事業、マシナリー事業、ニッセイ事業、パーソナル・アンド・ホーム事業などを展開しています。同社はP&S事業を全社の収益基盤を支える「コア事業」と位置づけ、営業利益額を重点指標にしていると説明しています(有価証券報告書 2026年3月期)。
P&S事業では、レーザープリンター・複合機、インクジェット複合機、ラベルライターなどを扱っています(有価証券報告書 2026年3月期)。本体を販売し、その後に使われるトナーやインクを供給する事業です。
同社は「つながるビジネス」の拡大に向けて、欧米で個人向けのサービスプラットフォームの提供を始めたと記載しています。製品本体の延長保証やアプリの活用などを通じて、お客様の利用実態の把握による提供価値の向上や「純正消耗品の利用促進」に努めているとしています(有価証券報告書 2026年3月期)。
収益の仕組み
P&S事業の収入は、大きく二つです(有価証券報告書 2026年3月期)。
- 製品本体の販売
- トナーやインクなどの消耗品の販売
これに加えて同社は、事業等のリスクの対応策として、印刷体験や消耗品の自動配送などを提供する契約型サービスやサブスクリプションモデル等を含む「つながるビジネス」の拡大を通じて、継続的な収益の確保と収益力の強化を図ると説明しています(有価証券報告書 2026年3月期)。都度の購入を待つ形に、契約にもとづく継続的な供給を重ねていく方向です。費用の内訳は今回参照した公開資料には示されていません。
数字で確かめる
- 2026年3月期の連結売上収益は893,464百万円(前期比5.3%増)でした(有価証券報告書 2026年3月期)。
- P&S事業の売上収益は570,583百万円(同4.7%増)、事業セグメント利益は66,446百万円でした(有価証券報告書 2026年3月期)。連結売上収益の中でP&S事業が大きな部分を占め、コア事業という位置づけと整合していることが読み取れます。
- P&S事業のうち、通信・プリンティング機器は498,348百万円、ラベリングは72,235百万円です(有価証券報告書 2026年3月期)。プリンター・複合機の領域が事業の中心であることが読み取れます。
- P&S事業の「主要製品別売上伸び率・構成比」(レーザー・インクジェット)では、消耗品比率が2025年度(2026年3月期)通期で55%と示されています(2026年度 第1四半期 決算説明会資料)。主要製品の売上の半分強が、本体販売の後に生まれていることが読み取れます。
- 同社は通信・プリンティング機器について、本体の販売が各地域で増え、消耗品は主に価格対応の効果により堅調だったと説明しています(有価証券報告書 2026年3月期)。消耗品の売上には、数量だけでなく価格も影響していることが読み取れます。
- インダストリアル・プリンティング事業のドミノについても、主に消耗品の販売が堅調に推移したと記載されています(有価証券報告書 2026年3月期)。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。レイザー&ブレードの型は、本体を売った後、顧客が消耗品を買い足してくれるのを待つ形になりがちです。しかし待っているだけでは、顧客がどれだけ使っているかも、次にどこで買うかも分かりません。同社が利用実態の把握や純正消耗品の利用促進を掲げていることは、本体販売後に顧客が互換品へ流れることが、この型の重要な課題であることを示していると読めます。
Otsumuは、顧客にとっての価値を「消耗品そのもの」ではなく「切らさずに使い続けられること」と捉え直すと、設計の方向が見えると考えます。トナーが切れて印刷できない時間は、顧客にとって損失です。必要な時期に必要な量が届くのであれば、顧客には純正品を選び続ける理由ができます。
ただし、その価値は補充の精度で決まります。早すぎれば顧客の手元に余りがたまり、遅すぎれば欠品します。利用状況を把握する仕組み、配送の手配、契約の管理が裏側で必要になります。都度販売に比べて運用の負担は増えるため、自動化の前に、まず手作業で精度を確かめる段階を置くのが現実的だと考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 本体を販売した後、顧客の利用状況を知る手段を持っていますか。
- 顧客が消耗品を切らしたとき、どんな不便や損失が起きますか。それはどのくらい深刻ですか。
- 補充の時期を、自社の側から予測して案内できますか。
- 購入後に顧客とつながる仕組みを、本体の設計段階から組み込めていますか。
小さく試すなら
- 少数の顧客を選び、消耗品の使用状況を定期的に教えてもらいます。最初は電話やメールでの確認で十分です。
- 使用の速さから補充の時期を手作業で予測し、顧客に案内します。案内した時期と、実際に交換が必要になった時期を記録します。
- 余剰と不足を記録します。届いたときにまだ十分残っていた場合と、届く前に切れてしまった場合を分けて数え、予測がずれた理由を顧客に聞きます。2〜4週間程度で傾向の一端が見え、交換の周期が長い製品ではさらに期間が必要です。
- 手作業の案内で余剰と不足が少なくなり、顧客が案内を便利だと感じていれば、通知や配送の自動化、定額契約の検討に進みます。ずれが大きい場合は、利用状況の把握の方法を見直します。
資料の位置づけ
企業・サービス:ブラザー工業株式会社 / プリンター・複合機とトナー・インクなどの消耗品(プリンティング・アンド・ソリューションズ事業)。参照資料の対象:有価証券報告書(2026年3月期)、2026年度 第1四半期 決算説明会資料。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
zigyo.ai の関連ナレッジ ↗をもとに、Otsumuが検証・実装・運用の観点から再編集しました。制度・仕様・サービスの現況は、各提供元の最新情報をご確認ください。
編集:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.20