この事例の要点
- Bumble Inc.は、アプリの利用は無料とし、一部の会員が有料のサブスクリプションやアプリ内課金で収益をもたらすフリーミアムの形をとっています(Form 10-K、FY2025)。
- FY2025は、売上高が前年から減り、その主因は有料会員数の減少だと同社は説明しています。一方で、有料会員1人あたりの収益は上がっています(Form 10-K、FY2025)。
- 2025年6月に、全世界で約240の職種(従業員の約30%)を減らす計画を公表しています。会員数を追うか、質を整えるかの舵取りが見て取れます(Form 10-K、FY2025)。
どんな事業か
Bumble Inc.は、Nasdaq(ティッカー:BMBL)に上場する企業です(Form 10-K、FY2025)。2014年に始まったBumbleアプリ、2006年に始まったBadooアプリなど、オンラインで人と出会うためのアプリを運営しています。FY2025には、Bumbleアプリの有料会員が約240万人、Badooアプリ等の有料会員が約120万人いました(Form 10-K、FY2025)。
友人づくりのアプリBFFは、2025年9月に米国で再開されました。また、Fruitzアプリは2025年7月に第三者へ売却されています。2025年12月31日時点の従業員は約580人で、約64%が欧州にいます(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
同社は、利用は無料で、会員の一部が有料の機能のために購読やアプリ内課金を行う形だと説明しています(Form 10-K、FY2025)。
- 入り口:アプリの利用そのものは無料です。多くの人が登録できる状態をつくります。
- 課金(購読):Bumble Boost、Bumble Premium、Bumble Premium+、Badoo Premium、Badoo Extraなどの購読があります。
- 課金(都度):SuperSwipe、Spotlight、Badoo Creditsなどのアプリ内課金があります。
- その他:広告・提携・アフィリエイトの収益はBadooアプリ等の売上に含まれ、有料会員数と有料会員1人あたり収益の指標からは除かれています。
数字で確かめる
- 総売上高は、2025年が9億6,570万ドル、2024年が10億7,160万ドルでした(Form 10-K、FY2025)。前年より約1億590万ドル減っていることが読み取れます。
- 有料会員数の合計は、2025年が約367.2万人、2024年が約414.9万人でした。Bumbleアプリの有料会員は約243.4万人で、前年の約280.7万人から13.3%減っています(Form 10-K、FY2025)。売上の減少は、有料会員の減少が主因だと同社が説明していることが読み取れます。
- 有料会員1人あたり収益(ARPPU)は、全体で2025年が21.64ドル、2024年が21.23ドルでした。Bumbleアプリは26.80ドルで、前年の25.72ドルから4.2%上がっています(Form 10-K、FY2025)。会員数が減る一方で、1人あたりの単価は上がっていることが読み取れます。
- 2025年の純損失は8億9,530万ドルで、10億3,900万ドルの減損損失を含みます。2024年の減損損失は8億9,220万ドルでした(Form 10-K、FY2025)。事業の収益見通しに対する会計上の評価が、大きく見直されたことが読み取れます。
- 2025年6月に、全世界の従業員の約30%にあたる約240の職種を減らす計画を公表し、約1,500万ドルの一時費用を見込んでいます(Form 10-K、FY2025)。規模を絞って立て直す方向であることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。フリーミアムは、無料の利用者が多いほど有料に移る人の絶対数が増える、という前提で成り立ちます。ところが、出会いのアプリは、利用者が多いだけでは価値が高まりません。会う相手の質や、安心して使える雰囲気が、有料に移る理由そのものになりやすいからです。そのため、会員の増減と有料転換のしやすさが、同じ向きに動かない場面があると考えられます。
今回の数字は、有料会員数が減るなかで、1人あたりの収益は上がっているという組み合わせです。これは、残った有料会員の単価を上げて収益を支える動きと読めますが、会員数の減少をそのまま補えているわけではありません。無料の入り口を保ったまま、有料の価値を高める。この二つを同時に動かす難しさが表れていると考えられます。
トレードオフは、会員を増やす施策と、利用体験の質を守る施策が、短期では両立しにくい点です。同社が人員を絞る方向に動いたのは、規模の拡大より、運営の形を見直すことを優先した判断だと読めます。ただし、その効果は資料からは確認できません。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社のサービスで、無料の利用者が増えることは、有料に移る人が増えることに本当につながっているでしょうか。
- 利用者が有料に切り替える理由は、機能の多さでしょうか。それとも、利用体験の質や安心感でしょうか。
- 有料の顧客数が減ったとき、単価を上げる以外に、取れる打ち手は何でしょうか。
小さく試すなら
- 自社の無料利用者と有料契約者の、直近数か月の人数を月別に並べ、無料から有料への移行の割合の推移を確かめます。
- 有料に移った人と、移らなかった人の数人ずつに、有料にする(しない)決め手を聞き取ります。
- 聞き取った理由を、機能・価格・安心感・利用体験の四つに分け、どれが多いかを数えます。
- 2〜4週間のうちに、最も多かった理由に関わる点を、無料の範囲か有料の範囲のどちらかで小さく変えて、移行の割合の変化を観察します。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Bumble Inc. / Bumble、Badoo。参照資料:FY2025(2025年12月期)Form 10-K。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25