この事例の要点
- CarGurusは消費者と販売店をつなぐ自動車マーケットプレイスを米国、英国、カナダで運営し、2025年の売上は$907.0 million(前年比14%増)でした(Form 10-K、FY2025)。
- 収益は(1)販売店のサブスクリプション料、(2)自動車メーカーなどの広告、(3)金融サービス会社との提携から得ており、販売店向け「Listings」は在庫規模と地域、期待できる投資対効果に基づいて価格が決まります(Form 10-K、FY2025)。
- 2025年8月に卸売取引事業CarOfferの閉鎖を決め、12月31日に完了、第4四半期から単一の報告セグメントに移行しました(Form 10-K、FY2025)。
どんな事業か
CarGurus, Inc.は2006年に設立された自動車プラットフォームで、Similarwebのデータを根拠に、米国で最も訪問される自動車ショッピングサイトだと説明しています。消費者向けには、独自の「Deal Rating」で中古車の掲載を5段階で評価し、その基礎となる「Instant Market Value(IMV)」で地域ごとの市場価格を算出します。生成AIによる対話型検索「CG Discover」も提供しています(Form 10-K、FY2025)。
販売店向けには、在庫、マーケティング、成約、データの4つの柱で製品を揃えています。在庫面では消費者が車を売る「Sell My Car」で下取りリードを届け、価格設定ソフト「PriceVantage」を提供します。マーケティング面では、露出やリード、ツールの組み合わせが異なる段階制の「Listings」に加え、掲載枠を増やす「Highlight」、サイト外に広告を届ける「Audience Targeting」、商圏を広げる「Geo Expansion」などの追加製品を用意しています(Form 10-K、FY2025)。
なお、2025年8月6日には販売店間取引と即時買取を扱うCarOfferの閉鎖を決めました。価格変動が大きい環境ではこの取引モデルが機能しにくいと判断し、今後は取引の仲介ではなく、仕入れと価格判断を支える技術と分析に集中すると説明しています。閉鎖に伴う支出は$13.3 millionでした(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
売上の第一の柱は販売店のサブスクリプション料です。Listingsは月次、四半期、半年、年次で価格が設定され、販売店の在庫規模と地域、そして同社がリードの量と質から見込む投資対効果に基づいて決まり、更新時には実績に応じて価格が引き上げられることがあります。無料の「Restricted Listings」には上限付きの匿名リードが提供されます。Highlightなどの追加製品やSell My Car、PriceVantageも継続的なサブスクリプション料で収益化されています(Form 10-K、FY2025)。
第二の柱は自動車メーカーなどからの広告収入、第三の柱は金融サービス会社との提携で、オンライン購入手続き「Digital Deal」の融資事前審査では、提携先の融資が実行された件数に基づいて収益を得ると説明しています。今回参照した公開資料には、継続事業の費用の内訳は示されていません(Form 10-K、FY2025)。
数字で確かめる
- 2025年の売上は$907.0 millionで、前年の$798.0 millionから14%増えました(Form 10-K、FY2025)。サブスクリプション中心の事業が成長していることが読み取れます。
- 継続事業からの純利益は$196.7 million(前年$128.7 million)でした(Form 10-K、FY2025)。増収分の多くが利益に残る構造であることが読み取れます。
- 2025年第4四半期の月間平均ユニークユーザーは米国32,480 thousand、合計41,418 thousand(前年同期38,421 thousand)でした(Form 10-K、FY2025)。送客の源泉が拡大していることが読み取れます。
- 非継続事業のCarOfferの売上は2025年$32,069 thousand、2023年$215,821 thousandでした(Form 10-K、FY2025)。取引仲介型の事業が急速に縮小していたことが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。リード獲得・送客メディアの型は、一方の利用者(消費者)を無料で集め、もう一方(販売店)に接点や露出を売る構造です。成り立つ条件は、消費者が集まり続ける理由と、販売店がその接点に価値を認める根拠の両方を持つことだと読めます。CarGurusではDeal RatingやIMVといった価格の透明性が消費者を集める理由になり、その集客量が販売店にとってのリードの量と質になっていると考えられます。
もう一つの型であるサブスクリプションは、送客の売り方を安定させる働きをしていると読めます。リード1件ごとの課金ではなく、在庫規模と地域、期待できる投資対効果に基づく定額(月次〜年次)とすることで、販売店は費用を見通せ、同社は売上を積み上げられます。裏側では、投資対効果を説明できるだけの計測、つまりユニークユーザーや販売店への「コネクション」の把握が必要で、同社が指標の定義を詳しく開示しているのは、計測が価格の根拠だからと考えられます。
トレードオフは、車そのものの取引に踏み込むかどうかにありました。CarOfferの閉鎖は、取引仲介が価格変動の大きい環境で機能しにくいという判断であり、送客と分析に集中する選択と読めます。取引に踏み込めば取扱高は増えますが、在庫や価格のリスクを抱えることになります。
自社事業に持ち帰る問い
- 無料で集める側の利用者は、何を理由に自社に集まり続けるのか。
- 有料側の顧客に対して、リード単価ではなく月額で課金する場合、価格の根拠となる指標を自社で計測できているか。
- 送客の先にある取引そのものに踏み込むべきか。その場合に引き受けるリスクは何か。
小さく試すなら
- 無料利用者が最も使っている機能や情報を特定し、それが有料側の顧客にどんな接点を生んでいるかを一覧にします。
- 有料側の候補顧客5〜10社に規模や地域に応じた月額案を提示し、リード単価の案と比較してどちらが選ばれるかと理由を記録します。
- 送客の量と質を示す指標(訪問者数、問い合わせ数)を定義し、2〜4週間分を計測して顧客に見せられる形にします。
- 露出枠の追加のような追加製品を1つだけ用意し、既存顧客の何割が追加するかを見て、段階制の設計に進むかを判断します。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:CarGurus, Inc. / 自動車販売店向けリード・マーケットプレイス。参照資料:Form 10-K(FY2025)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27