この事例の要点
- Chunghwa Telecomは、個人向け(Consumer)、法人向け(Enterprise)、国際(International)の3つの事業グループを持つ、台湾の総合通信事業者です(Form 20-F、2025年12月期)。
- 2025年の売上高は2,361億台湾ドルで、個人向けが60.7%、法人向けが32.7%。営業利益は486億台湾ドル、売上に対する営業利益率は20.6%でした(Form 20-F、2025年12月期)。
- 固定電話の売上比率は2023年の9.5%から2025年の8.1%へ下がる一方、法人向けではICT(IDC、クラウド、セキュリティなど)の成長を説明しています(Form 20-F、2025年12月期)。
どんな事業か
Chunghwa Telecom Co., Ltd.は、台湾(台北)に本社を置き、台湾証券取引所とNYSE(ADS)に上場しています。2005年8月12日に、政府の持株比率が50%未満となる形で民営化されました。モバイル、固定回線、ICT、販売などのサービスを提供しています(Form 20-F、2025年12月期)。
個人向けは、モバイル、固定ブロードバンド、Wi-Fi、IPTV(MOD)、OTT(Hami Video)といった、個人と家庭向けの事業が中心です。法人向けは、IDC(データセンター)、クラウド、サイバーセキュリティ、5G+AIoT、ビッグデータ、AI、システム統合などのICTを提供します。国際事業は、海外進出する台湾企業などを対象に、回線やICTサービス、ローミングなどを扱います(Form 20-F、2025年12月期)。
収益の仕組み
収益の土台は、毎月の料金を払い続けてもらう回線契約です。後払い(ポストペイド)のモバイル契約は、12か月から60か月の契約期間があり、月額料金と従量料金で構成されます。端末の購入時に新規契約や契約更新を結ぶ形です(Form 20-F、2025年12月期)。
- 入り口:モバイル、ブロードバンド、IPTV、Wi-Fiなど、個人・家庭の通信サービス。
- 課金:月額料金と従量料金。会員向けのポイント(Hami Points)などの特典で、5Gプランへの加入を促す。
- 継続・拡張:法人顧客に、回線に加えてIDC、クラウド、セキュリティを重ね、案件型とリカーリング(継続)型の収益を得る。
数字で確かめる
- 2025年の売上高は2,361億台湾ドル(7.5十億米ドル)、連結純利益は405億台湾ドルでした。前年(売上2,300億台湾ドル、純利益385億台湾ドル)より増えています(Form 20-F、2025年12月期)。成熟した通信事業でも、売上と利益が緩やかに伸びていることが読み取れます。
- 事業グループ別の売上は、個人向け1,434億台湾ドル、法人向け772億台湾ドル、国際95億台湾ドルでした(Form 20-F、2025年12月期)。個人向けが事業の約6割を支え、法人向けが約3分の1を占めていることが読み取れます。
- 2025年末のモバイル契約者数はIoT SIMを除き約1,120万、市場シェアは契約数で約39.7%、モバイルサービス売上で約40.8%でした。うちプリペイドは約130万(11.0%)です(Form 20-F、2025年12月期)。契約者の大半が月額課金の後払いであることが読み取れます。
- 固定電話は、売上比率が2023年9.5%、2024年8.7%、2025年8.1%と下がり、減少の主因をモバイルへの移行とVoIPの利用増と説明しています(Form 20-F、2025年12月期)。従来の収益源が縮む中で、他の事業が穴を埋める必要があることが読み取れます。
- 法人向けでは、2024年にICTの売上が増え、案件型と継続型の両方が寄与したと説明しています。同社はIDC市場で70%超のシェアがあるとしています(Form 20-F、2025年12月期)。基盤の回線事業が、法人ITの入り口にもなっていることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は、通信回線という「毎月使われ続けるもの」を土台に、その上のサービスを重ねていく設計だと読めます。個人では契約者数と利用の継続、法人では回線に加えてIDCやセキュリティといった、より単価の高い領域に広げる。入り口の契約があるため、追加のサービスを提案する機会が生まれやすいと考えられます。
ただし、同社自身が、低価格競争や無制限の低価格データプランの出現をリスクとして挙げています。回線そのものでは差がつきにくい中で、5Gの品質、会員特典、法人向けの付加価値によって、単価を守る必要があるということだと読み取れます。
また、固定電話の比率が下がっている点は、既存の主力が縮むことを前提に、次の柱を育てる必要性を示しています。自社の主力事業が、将来どう推移するかを数字で見ておくことが、この事例の出発点になると考えます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の「毎月使われる」入り口となる商品は何で、その上に重ねられるサービスは何でしょうか。
- 主力事業の売上比率は、過去3年でどう動いているでしょうか。縮んでいるものはないでしょうか。
- 価格以外の理由で、顧客が自社の契約を続けている理由は何でしょうか。
小さく試すなら
- 顧客別に、契約している商品の数と月額の合計を一覧にし、1商品だけの顧客を抽出します。
- 1商品だけの顧客の中から5〜10社に、困っていることや、他に任せたい作業を聞きます。
- 聞いた内容の中から、既存の入り口商品に重ねられる追加サービスの案を1つ作ります。
- 2〜4週間のうちに、その案を一部の顧客に提案し、追加の契約に関心を示すかを確かめます。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Chunghwa Telecom Co., Ltd./モバイル・固定回線・ICT。参照資料:Form 20-F(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25