分類:企業事例 › ソフトウェア・SaaS
この事例の要点
- Cloudflareは、無料プラン、オンラインで申し込むクレジットカード払いの有償プラン(Pro・Business)、営業チームが売る法人契約(Enterprise)という三つの入口を、同じネットワーク基盤の上に用意しています。
- 収益の大半は契約顧客から得ており、契約は原則として期間にわたって均等に売上計上されます。
- 売上は拡大しつつ、大口顧客の数も増えています。無料で広げた接点が、契約額の大きい顧客層へつながる構造として読めます。
どんな事業か
Cloudflare, Inc.は米国の企業で、Class A普通株式をNYSEに上場しています(Form 10-K、FY2025〔2025年12月31日終了年度〕)。同社は自社を「コネクティビティ・クラウド」という分類の企業と位置づけ、オンプレミス、ハイブリッド、クラウド、SaaSにまたがるアプリケーションに対して、セキュリティ、性能、信頼性を提供しています。ネットワークは125を超える国の330を超える都市に広がっていると記載しています(Form 10-K、FY2025)。
顧客は、個人や小規模な利用者から大企業までと幅があります。同社は、余っているネットワークの容量を使って無料の階層を提供していると説明しています。無料で始めて、利用が広がるにつれて有償プランへ移れる設計です(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
Form 10-K(FY2025)に書かれた販売の形は、次の三つに整理できます。
- 入り口:無料プラン。クレジットカードも営業との会話も不要で使い始められます。
- 課金(自己申込):有償のProまたはBusinessプランを、オンラインで申し込み、クレジットカードで支払います。一括のプランも個別の製品も選べ、月払いまたは年払いです。
- 課金(法人契約):Enterprise。インサイドセールスとフィールドセールスが直接売るほか、MSP、リセラー、ディストリビューター、グローバルSIなどのパートナー経由でも販売します。契約期間は通常1〜3年で、一部の大口顧客には、期間中に使う金額をあらかじめ約束する「資金プール」型の契約があります。
売上は、顧客との契約期間にわたって均等に計上されると記載しています。従量課金型の顧客への請求は、通常は月ごとです(Form 10-K、FY2025)。
数字で確かめる
- FY2025の売上高は2,167.9百万ドルで、FY2024は1,669.6百万ドル、FY2023は1,296.7百万ドルでした。FY2025の前年比は、この数値から計算すると約29.8%の増加です。二年続けて3割近い成長を保っていることが読み取れます(Form 10-K、FY2025)。
- 2025年12月31日時点の有償顧客は約332,000で、190を超える国にいます(Form 10-K、FY2025)。個人・小規模から大企業まで、広い層が有償で使っていることが読み取れます。
- 大口顧客は2025年末に4,298で、2024年末の3,497、2023年末の2,756から増えています(Form 10-K、FY2025)。有償顧客全体の中で、契約額の大きい層も着実に増えていることが読み取れます。
- FY2025の売上の「大部分」は契約顧客からのものだと記載しています(Form 10-K、FY2025)。無料や自己申込の接点が多くても、収益の中心は法人契約にあることが読み取れます。
- 海外顧客からの売上は、2025年に51%、2024年に49%、2023年に48%でした(Form 10-K、FY2025)。海外の比率が少しずつ高まっていることが読み取れます。なお同年度の純損失は102.3百万ドルです(2024年は78.8百万ドル)。成長への投資を続けている状況が読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は、フリーミアム、サブスクリプション、段階制プランの型が重なっていると読めます。無料プランは、利用者が社内の稟議を待たずに試せる入口です。使い続けると、より高い性能や管理機能が必要になり、カード払いの有償プランへ、さらに組織全体で使う段階で法人契約へ移る、という流れが想定できます。入口、自己申込、法人契約が同じ基盤の上にあるため、顧客が大きくなっても乗り換えずに済む点が設計の要だとOtsumuは見ます。
無料の提供が成り立つ理由として、同社が、余っている容量を使っていると説明している点は重要です。無料利用者が増えても追加の費用が小さければ、入口を広げる判断がしやすくなります。つまり、無料の範囲は気前の良さではなく、自社の費用構造から決まっていると読めます。
トレードオフは、法人契約を売る営業体制への投資です。同社の従業員数は2023年末の3,682人から2025年末の5,156人へ増えていると記載しており(Form 10-K、FY2025)、広い入口を持つ事業でも、大口を取るには人手のかかる営業が必要になると読めます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社のサービスで、追加の費用がほとんどかからずに無料で提供できる部分はどこでしょうか。
- 無料から有償、有償から法人契約へ移るとき、顧客が乗り換えなくて済む設計になっているでしょうか。
- 申し込みが自動で完結する顧客と、人が売る顧客を、どの基準で分けるのがよいでしょうか。
小さく試すなら
- 現在の顧客を、利用の規模と問い合わせの手間で三つほどのグループに分け、各グループの売上と対応にかかる時間を並べます。
- 自社のサービスのうち、追加の費用がほぼかからない機能を一覧にし、無料で出せる範囲の案を一つ作ります。
- 無料の範囲を超えて使いたくなる場面を、顧客数人への聞き取りで確かめ、有償プランの境目の案に反映します。
- 2〜4週間のうちに、小さな顧客群に無料プランと有償プランの案を見せ、申し込みの意思が言葉で語られるかを確認します。語られなければ、無料と有償の線を引き直します。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Cloudflare, Inc. / コネクティビティ・クラウド。参照資料:Form 10-K(FY2025、2025年12月31日終了年度)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25