← 企業事例

OTSUMU KNOWLEDGE

会員制倉庫型店(Costco)

Costcoは絞り込んだ品目を会員に低価格で販売し、年会費を安定した収益源としています。年会費収入は53億2,300万ドル、更新率は全世界89.8%です。商品の採算と会員が更新する理由を分けて設計する考え方を学べる事例です。

分類:企業事例 › 小売・EC

この事例の要点

  • Costcoは年会費を払った会員向けの倉庫型店を世界に914店運営し、1店あたり4,000未満の品目に絞って低価格で販売しています。
  • 収益は商品販売と年会費からなり、年会費53億2,300万ドルは営業利益103億8,300万ドルの約半分に当たります。
  • 更新率は米国・カナダで92.3%、全世界で89.8%です。上位のExecutive会員が全世界の売上の約73.6%を占めます。

どんな事業か

Costcoは、会員制の倉庫型店とECサイトを運営しています。同社は、全国ブランドとプライベートブランドの限られた品目を低価格で会員に提供することで、大きな販売量と速い在庫回転を生み出すという考え方で運営していると説明しています(Form 10-K、FY2025)。2025年8月31日時点で、世界に914の倉庫店(米国629、カナダ110、メキシコ42、日本37など)があります(Form 10-K、FY2025)。

品ぞろえは意図的に狭くしています。中核の倉庫店事業で扱う有効な品目数(SKU)は1店あたり4,000未満で、同社は他の総合小売業者より大幅に少ないとしています(Form 10-K、FY2025)。

収益の仕組み

お金の入り口は、商品販売と会員の年会費の二つです(Form 10-K、FY2025)。

  • 米国の個人向け(Gold Star)と法人向け(Business)の年会費は65ドルです。
  • 米国では追加の年会費65ドルで、上位の「Executive」会員になれます。Executive会員は、対象となる購入額の2%(年間上限あり、一般に1,250ドル)の還元を受けられます。
  • 年会費は、返金分を除いて1年間の会員期間にわたり按分して収益に計上しています。

年会費は会計上、会員期間に分けて計上されるため、収益としては期間を通じてならされて現れると読めます。上位会員への還元は、会員にとっては追加の年会費を取り戻す手段になり得るもので、同社にとっては購入額が増えるほど還元も増える仕組みだと読めます。

お金を払う人・対価会員:年会費会員:商品の購入代金会員制倉庫型店舗かかる費用Executive会員への還元
図1 Costcoの収益の流れ(Form 10-K、FY2025にもとづく整理)。

数字で確かめる

  • 売上高合計は2,752億3,500万ドルで、うち商品売上2,699億1,200万ドル、年会費53億2,300万ドルです(Form 10-K、FY2025)。売上に占める年会費の割合は小さいことが読み取れます。
  • 営業利益は103億8,300万ドルです(Form 10-K、FY2025)。年会費収入はその約半分に当たり、年会費が利益に大きく貢献していることが読み取れます。
  • 年会費収入は前年比10%増で、同社は新規入会と年会費の値上げによると説明しています。米国とカナダでは2024年9月1日から年会費を値上げし、増加分の約40%がこの値上げによるものだったとしています(Form 10-K、FY2025)。値上げと会員増の両方が効いていることが読み取れます。
  • 有料会員数は8,100万(うちExecutive会員3,870万)、家族カードを含む会員カード保有者は1億4,520万です(Form 10-K、FY2025)。
  • 更新率は米国・カナダ92.3%、全世界89.8%です(Form 10-K、FY2025)。年会費収入の大部分が翌年も続く見通しの立ちやすさを示していると読み取れます。
  • Executive会員の売上構成比は全世界の売上の約73.6%です(Form 10-K、FY2025)。上位会員が購買の中心であることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。年会費制の販売は、商品では利幅を抑えて安さを示し、利益の相当部分を年会費で確保するという役割分担の型と考えられます。この型が成り立つ条件は、会員が「年会費を払っても得だ」と実感し、翌年も更新することです。したがって、会員が更新する理由と商品の採算は、別々の問いとして把握する必要があるとOtsumuは見ます。

品目を絞ることは、会員にとっては選ぶ手間が減り、運営側にとっては一品目あたりの販売量が大きくなることにつながると読めます。ただし、Costcoのような規模の調達力を、新規事業が最初から前提にすることはできないと考えられます。Otsumuは、大規模な調達力を初期の前提に置かず、限られた顧客群と限られた商品で「会費に見合う得」が成り立つかを先に確かめるべきだと考えます。

トレードオフは、年会費が入会の壁になることです。壁を越えてもらうには、来店や購入の頻度が十分にあり、そのたびに得を感じられる商品が必要です。同社が更新率や上位会員の売上構成比を開示しているように、会員数だけでなく会員の質を測る指標を最初から決めておくことが欠かせないと考えられます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の顧客は、会費を払ってでも繰り返し利用したい理由を持っていますか。それは価格ですか、品ぞろえですか、別の便益ですか。
  • 商品やサービス単体の採算と、会費から得る利益を、分けて試算していますか。
  • 更新率に当たる指標を、どの時点の、どの顧客を母数にして測りますか。
  • 上位プランを設ける場合、還元や特典の費用は、増える購入額で賄えますか。

小さく試すなら

  1. 既存顧客の購買履歴から、同じ商品を繰り返し買っている顧客群を一つ特定し、購入の頻度と金額を整理します。
  2. その顧客群が繰り返し買う商品を少数選び、会員向け価格を仮に設定して、会費と一回あたりの得の関係を示した案内を作ります。
  3. 2〜4週間程度、対象の顧客に案内して、入会の意向、想定する利用頻度、会費に見合うと感じる利点を聞き取ります。可能なら少人数で実際に運用します。
  4. 「この頻度で使うなら会費の元が取れる」と顧客自身が説明できる状態になれば、商品の採算と会費収入を分けた収支表を作り、対象を広げます。説明できない場合は、商品の選び方か会費の水準を見直します。

資料の位置づけ

企業・サービス:Costco Wholesale Corporation / 会員制倉庫型店(Costco)。参照資料の対象:FY2025(2025年8月期)Form 10-K。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

zigyo.ai の関連ナレッジ ↗をもとに、Otsumuが検証・実装・運用の観点から再編集しました。制度・仕様・サービスの現況は、各提供元の最新情報をご確認ください。

編集:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.20

あわせて読む

次の一手を、一緒に。

この型を自社の事業に当てはめるとどうなるか、現在の段階に合わせて一緒に整理します。

事業について相談する ↗
FROM KNOWLEDGE TO ACTION

知識を、次の一手へ。

AIツール診断で、次の一手を整理する ↗