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Deere & Companyの農業機械と販売金融に学ぶ事業設計:機械と金融の一体運営

農業・建設機械の3つの機器事業と、自社機器の購入を支える金融事業(John Deere Financial)で構成されるDeere & Company。機器の販売に金融と購入後の支援を重ねる構造と、市況が下がった年に何が起きるかを一次資料から読み解きます。

この事例の要点

  • Deere & Companyは、Production & Precision Agriculture(PPA)、Small Agriculture & Turf(SAT)、Construction & Forestry(CF)の3つの機器事業と、Financial Services(John Deere Financial)の4セグメントで事業を運営していると説明しています(Form 10-K、FY2025)。
  • Financial Servicesは、John Deere製の機器・部品・サービスなどの購入に対するリテール・ノート、リボルビング・チャージ・アカウント、卸売債権、リース、延長保証を提供しています(Form 10-K、FY2025)。
  • 2025年度は市況悪化による出荷量減少で、PPAの売上高は$17,311(百万米ドル、△17%)となり、全社の売上原価率は72.4%(前年68.8%)に上昇しました(Form 10-K、FY2025)。

どんな事業か

同社は1837年から農業機械を製造していると説明しています。PPAはトラクターや収穫機などをトウモロコシ・大豆・綿花・サトウキビの生産者に、SATは小型トラクターや芝刈り機を酪農・畜産や芝地管理の顧客に、CFは油圧ショベルや林業・道路建設機械を提供しています(Form 10-K、FY2025)。

Financial Servicesは、顧客がJohn Deereの機器、部品、サービス、その他の営農に必要な資材を購入するための金融を提供する部門です。同社は「Smart Industrial Operating Model」として、顧客の生産システムに合わせた製品の整理、技術投資、購入後の部品供給・サービス・精密農業のアップグレードを一体で支えるLifecycle Solutionsの3本柱を掲げています。目標群「Leap Ambitions」ではSolutions as a Service(SaaS)などの利用を重視していますが、2025年度時点でSaaS製品の収益は総収益の重要な割合には達していないと説明しています(Form 10-K、FY2025)。

収益の仕組み

売上の中心は機器事業の機器販売です。2025年度はPPAで売上高$17,311(百万米ドル)と前年から17%減少し、内訳として販売数量などが△17、価格実現が+1、為替換算が△1の寄与だったと示されています。金融事業は、自社機器の購入資金をリテール・ノートやリース、卸売債権として供給し、延長保証の保険料も得ています。「その他収益」は$1,019(百万米ドル、前年$1,198)で、ライセンス収入と投資収益が減少した一方、延長保証の保険料収入は増加しました(Form 10-K、FY2025)。

費用面では、販売費・一般管理費$4,663(百万米ドル、前年$4,840、△4%)、支払利息$3,170(同$3,348、△5%)が示されています。売上原価率の上昇は、関税の増加と、出荷量減少に伴う生産の非効率による間接費の増加が要因で、材料費の低下と従業員への利益分配の減少が一部相殺したと説明されています。2025年度に同社が直接負担した追加関税の影響は約$600(百万米ドル)でした(Form 10-K、FY2025)。

数字で確かめる

  • PPA売上高$17,311(百万米ドル、前年$20,834、△17%)、営業利益$2,671(Form 10-K、FY2025)。主力の大型農機が市況の影響を最も強く受けたことが読み取れます。
  • 売上原価率72.4%(前年68.8%)(Form 10-K、FY2025)。数量が減ると生産の固定費が重くなる、製造業の構造が読み取れます。
  • 販売費・一般管理費$4,663(百万米ドル、前年比△4%)(Form 10-K、FY2025)。利益分配の減少やBanco John Deere S.A.の連結除外により費用が縮んだことが読み取れます。
  • 支払利息$3,170(百万米ドル、前年比△5%)(Form 10-K、FY2025)。金融事業を自社で持つため、借入金利と借入残高が費用の大きな項目になることが読み取れます。
  • 追加関税の直接影響約$600(百万米ドル)、国内販売の80%近くが米国内で組み立て(Form 10-K、FY2025)。輸出入をまたぐ製造業では通商政策が原価に直結することが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。「販売金融(自社製品のローン・リース)」の型では、機器を売る会社が顧客の購入資金も供給することで、高額な機器の購買判断を後押しし、販売店の在庫(卸売債権)も支えます。同社の資料では、2025年に「販売インセンティブへの依存の高まり」と「債権の償却の増加」が起きたと説明されており、市況が悪化すると製品販売と金融の両方に同時に影響が出るというトレードオフが読めます。金融部門の2026年度見通しでは、平均ポートフォリオの縮小が不利に、金融スプレッドが有利に働くとされ、金融事業の利益は残高と利ざやの2つで動くと読めます。

「ハードウェア+サービス」の型では、機器に加えて部品・サービス・精密農業のアップグレードをライフサイクルにわたって提供する設計が鍵になります。同社は購入時期にかかわらず支援するLifecycle Solutionsを掲げ、延長保証の保険料収入が増えたと説明しています。一方で、修理ツールへのアクセスを巡ってFTCなどから訴訟を受けている点は、サービス収益を自社に閉じるほど外部からの圧力も受けるという裏側の課題と考えられます。この事業が成り立つ条件は、機器の品質と販売店網に加え、金融の与信管理と技術投資を同時に回せることだと考えられます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の商品が高額で購買判断が重い場合、支払い方法の設計(分割・リース・保証)で顧客の決断を軽くできる余地はあるか。
  • 販売と金融、販売と保守のように、同じ顧客の景気に連動して同時に悪化する収益源を抱えていないか。
  • 商品を売った後の支援(部品・保守・アップグレード)を、購入時期に関係なく提供できる体制になっているか。

小さく試すなら

  1. 主力商品の購入を見送った直近の見込み客に、見送り理由が「価格」か「支払い方法」かを聞き取り、分割や保証の提案で変わるかを確かめる。
  2. 既存顧客の購入後1年間に発生した問い合わせ・修理・追加購入を一覧にし、有償サービスとして設計できる項目を洗い出す。
  3. 販売数量が落ちた場合の費用の動きを試算し、固定で残る費用の割合を確認する。減らせない費用が大きければ、業績連動の費用設計を検討する。

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資料の位置づけ

企業・サービス:Deere & Company / 農業・建設機械と販売金融(John Deere Financial)。参照資料:Form 10-K(FY2025)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

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