この事例の要点
- 株式会社ディスコは、半導体向けの精密加工装置と、消耗品である精密加工ツールを提供しており、2026年3月期は出荷額4,428億24百万円(前期比10.3%増)、売上高4,368億89百万円(同11.1%増)で、通期の出荷額・売上高ともに6期連続で過去最高を更新しました(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
- 営業利益は1,849億89百万円(同10.9%増)で営業利益率は42.3%、親会社株主に帰属する当期純利益は1,355億21百万円(同9.4%増)で純利益率は31.0%でした(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
- 同社は「4年累計経常利益率20%以上」を目標の一つとし、当期時点の4年累計経常利益率は41.4%で、目標を10期連続で達成したと説明しています(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
どんな事業か
同社は、半導体・電子部品業界の顧客に向けて精密加工装置と精密加工ツールを提供しています。2026年3月期は、生成AIの需要拡大を背景に先端ロジックやHBMなどの高性能半導体向け需要が高水準で推移した一方、パワー半導体向けはEV需要の鈍化を背景に低調だったと説明しています(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
このような環境で、精密加工装置の出荷は高性能半導体向けの高付加価値製品を中心に好調に推移し、消耗品である精密加工ツールの出荷も、顧客の設備稼働率等に連動して高水準で推移しました。製品および用途構成の変化に伴う僅かなGP率低下や、人件費・研究開発費の増加があったものの、売上高の増加と高付加価値製品の収益寄与により増収増益となったと説明しています(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
同社は、顧客の投資意欲が短期間で激しく変動し需要予測が困難であることから、業績予想を「1四半期先までの開示」とし、2027年3月期第1四半期の出荷額を1,320億円と予想しています(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
収益の仕組み
売上は、装置の販売と、装置を使い続けるために必要な消耗品(精密加工ツール)の販売から成ります。同社の説明では、消耗品の出荷は顧客の設備稼働率等に連動します。装置は投資が集中する時期に大きく売れ、消耗品は据え付けられた装置が動いている限り継続して出荷されるという2つの流れが、一つの会社の中にあると読めます。同社は売上高とは別に「出荷額」も開示しており、2026年3月期は出荷額4,428億24百万円、売上高4,368億89百万円でした(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
費用面では、製品および用途構成の変化に伴う僅かなGP率低下と、人件費・研究開発費の増加があったと説明されています。投資活動によるキャッシュ・フローは1,357億69百万円の支出で、定期預金の預入や工場設備用の土地建物などの取得によるものです。費用のこれ以上の内訳は今回参照した公開資料には示されていません(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
数字で確かめる
- 売上高4,368億89百万円(前期比11.1%増)、出荷額4,428億24百万円(同10.3%増)(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。出荷と売上を別々に追い、需要の動きを先に捉えていることが読み取れます。
- 営業利益1,849億89百万円(同10.9%増)、営業利益率42.3%(前期42.4%)(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。増収でも利益率がほぼ一定であることから、費用が売上に応じて増えていることが読み取れます。
- 4年累計経常利益率41.4%(前期40.0%)(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。単年ではなく複数年の累計で利益率を評価する仕組みが読み取れます。
- 自己資本比率78.9%(前期末比3.8ポイント上昇)、ROE 25.1%(前期比2.5ポイント低下)(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。利益の蓄積で資本が厚くなり、ROEは下がる関係が読み取れます。
- 営業活動によるキャッシュ・フロー1,335億43百万円の収入(前期比10.9%増)、フリー・キャッシュ・フロー△22億25百万円(定期預金の預入1,000億円等の影響)(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。本業の現金創出は増えつつ、余剰資金を定期預金に振り向けたことが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。「消耗品モデル」の型では、装置を据え付けた顧客が、その装置を動かすたびに消耗品を買い続けます。同社が消耗品の出荷を「顧客の設備稼働率等に連動」と説明している点がこの型の核で、装置の販売が一時的な収益、消耗品が稼働に応じた継続的な収益になります。装置の需要が「短期間で激しく変動」する業界において、稼働している装置の台数が消耗品需要の土台になる構造は、変動を和らげる役割を果たしていると読めます。
「ハードウェア+サービス」の型として見ると、装置を売った後に顧客の生産を支え続けることが収益の前提になります。高性能半導体向けの高付加価値製品が収益に寄与したと説明されているように、装置の技術水準が消耗品の需要量と単価を決めるため、研究開発費と人件費の増加は継続収益を守るための投資と考えられます。裏側では、顧客の設備稼働率を把握して消耗品を切らさず供給する体制と、工場設備への投資による生産能力の確保が必要になります。
トレードオフとして、装置の据え付け台数が増えるほど消耗品の収益が積み上がる一方、装置需要の急変を自社では制御できません。同社が業績予想を1四半期先までに限り、4年累計の経常利益率を目標に置いている点は、変動の大きい市場で長期の利益水準を評価するための工夫と読めます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の商品のうち、一度売ったら終わりのものと、使い続ける限り購入が続くものはどれか。後者の比率を把握しているか。
- 継続購入の量を決めるのは顧客側のどの指標か(稼働率、利用者数、生産量)。その指標を自社で把握できているか。
- 需要が短期間で大きく動く市場にいる場合、単年ではなく複数年で評価する利益指標を持っているか。
小さく試すなら
- 過去2年の売上を「一時的な販売」と「継続的な購入」に分け、継続部分の割合と、それが顧客のどの活動に連動しているかを書き出す。
- 継続購入をしている顧客について、購入頻度と数量を月次で並べ、顧客側の稼働・利用の指標と対応しているかを確認する。
- 継続購入が途切れた顧客に理由を聞き、供給体制や品質の問題か、顧客側の稼働低下かを切り分ける。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:株式会社ディスコ / 精密加工装置と消耗品(精密加工ツール)。参照資料:2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27