この事例の要点
- eToro Group Ltd.は2007年創業の投資プラットフォームで、他の投資家のポートフォリオを見て、CopyTraderで同じ運用を追加費用なしにまねられる「ソーシャル投資」を打ち出しています(Form 20-F、2025年12月期)。
- 経営指標のNet Contribution(総収益から暗号資産の原価と信用取引の金利費用を引いた額)を5つの収益源に分けて開示しており、株式・コモディティ・通貨、暗号資産、金利、eToro Money、サブスクリプション他に分かれています(Form 20-F、2025年12月期)。
- 2025年12月期のNet Contributionは868百万ドル(前期比10%増)、純利益は216百万ドル(前期は192百万ドル)でした(Form 20-F、2025年12月期)。
どんな事業か
eToro Group Ltd.は英領ヴァージン諸島法人で、主たる事務所はイスラエルにあります。Class A普通株式を米国のナスダックに上場しています(ティッカー:ETOR)。同社は、低手数料のデジタル取引プラットフォームが個人の市場参加を広げた一方で、教育や他の投資家と学び合う機能が足りないと考えて、社会的な交流と取引を結びつけた投資の場をつくったと説明しています。ユーザーは他の投資家のポートフォリオや成績を見て、意見を交わせます。株式、コモディティ、通貨、暗号資産を取引でき、地域によって原資産または派生商品として扱います(Form 20-F、2025年12月期)。
主な機能は、他の投資家の運用をワンステップでまねるCopyTrader(2010年に開始)、テーマ別・戦略別のSmart Portfolios(2017年開始)、入出金や現地通貨での株取引を支えるeToro Moneyなどです。同社は2025年12月31日時点で、約381万の資金のある口座(Funded Accounts)を75か国に持つと開示しています。ユーザーの年齢の中央値は37歳で、ユーザーの平均的なログインは1日に約4回、1回あたり約12分とも説明されています(Form 20-F、2025年12月期)。
収益の仕組み
同社は収益を、取引、利息、資金管理の手数料、付加価値サービスで構成される多面的なモデルだと説明しています。経営指標のNet Contributionは、次の5つに分けて開示されています。
- 入り口:登録して教育コンテンツやコミュニティを使う。入金して1回取引をし、残高のある口座(Funded Account)になる段階が、収益を生む最も深い層。
- 課金(取引):株式・コモディティ・通貨の取引収益と、暗号資産の取引収益。
- 課金(残高):ユーザーの預り金と信用取引にともなう純金利、ステーキングの収益。
- 課金(資金管理):eToro Moneyによる通貨両替、出金、デビットカードの手数料、暗号資産の送金、ウォレット手数料。
- 継続:サブスクリプションなどの収益、ブロックチェーン報酬。CopyTraderでまねられる側の投資家は、Pro Investorプログラムのもとで、自分の運用をまねる資産額を収益化できると同社は説明している。
数字で確かめる
- Net Contribution:2025年12月期868百万ドル、2024年12月期787百万ドルで、80百万ドル(10%)の増加(Form 20-F、2025年12月期)。取引量だけでなく複数の収益で積み上げる設計であることが読み取れます。
- 5つの収益源(四半期ごとの開示の合算):株式・コモディティ・通貨400百万ドル、暗号資産155百万ドル、金利217百万ドル、eToro Money 84百万ドル、サブスクリプション他12百万ドル(2025年12月期、Form 20-F)。株式等が全体の約46%で、金利が約25%、暗号資産が約18%を占めることが読み取れます。2024年は暗号資産が193百万ドルで、2025年は155百万ドルへ減っており、市場の局面で比率が動くことがうかがえます。
- 暗号資産の比率の変動:暗号資産は2024年第4四半期のNet Contributionの38%を占め、2025年第2四半期は株式・コモディティ・通貨が54%を占めたと同社は説明しています(Form 20-F、2025年12月期)。市場の局面によって収益の中心が入れ替わることが読み取れます。
- 資産と口座:運用管理資産(assets under administration)は185億ドル(2024年末は166億ドル、2023年末は96億ドル)、資金のある口座は約381万(Form 20-F、2025年12月期)。運用管理資産が2023年末から2025年末にかけて拡大していることが読み取れます。
- 利益:純利益216百万ドル(前期は192百万ドルで、24百万ドル・12%増)、調整後EBITDAは317百万ドル(前期は304百万ドル)(Form 20-F、2025年12月期)。純利益の伸びが調整後EBITDAの伸びを上回ったことが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事例は、コミュニティの存在そのものを「集客」と「商品」の両方に使う設計として読むことができます。他の投資家の成績を見られる場は、登録を促す入り口になり、CopyTraderは操作を1ステップに簡単にすることで、経験の浅い利用者を取引に進めます。まねられる側にもPro Investorプログラムで収益化の道があるため、経験のある投資家が情報を出し続ける動機にもなっていると考えられます。
収益の面では、5つの収益源に分けて開示している点が特徴です。取引が増えれば取引収益が、預り金が増えれば金利が増える構造で、市場の局面によって主力が入れ替わります。同社も、暗号資産が好調な局面と、株式が好調な局面があることを説明しています。ひとつの収益に偏らないことは、安定面の根拠になりますが、一方で金利収益は金利水準の影響を受けます。20-Fは、短期金利が下がると利息収益と純利益が減ることもリスクとして開示しています。
もう一つ、資金のある口座(Funded Account)という指標に着目している点も参考になります。同社は、登録しただけの利用者と、入金し取引した利用者を分け、後者を収益の源泉の最も深い層と位置づけています。コミュニティの人数を追うだけでなく、「収益を生む状態」へ進んだ数を測る考え方と読めます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の顧客同士が学び合う場やコミュニティは、集客や購入のきっかけとして機能しているでしょうか。
- 自社の登録者・会員のうち、実際に収益を生む状態の人数を、どの指標で数えているでしょうか。
- 自社の収益を取引、残高、手数料、継続課金に分けたとき、市場や景気の局面で入れ替わる主力を持てているでしょうか。
小さく試すなら
- 会員・登録者を、登録のみ、1回購入、継続利用の3段階に分け、人数と割合を出します。
- 継続利用に進んだ顧客の事例(使い方、成果)を3〜5件集め、新規の顧客が見られる形に整理します。
- 2〜4週間のあいだ、新規の問い合わせ客の半分に事例を共有し、もう半分には共有せずに、次の行動への進み方を比べます。
- 結果をもとに、事例を出してくれた顧客への還元(優遇、紹介など)の形を2つ考え、1社に相談します。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:eToro Group Ltd. / ソーシャル投資とCopyTrader。参照資料:Form 20-F(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25