この事例の要点
- Etsy, Inc.は在庫を持たず、売り手と買い手をつなぐことで手数料を得ており、売上は「マーケットプレイス収益」と「サービス収益」の二つに分けて開示されています。
- 2025年はGMS(流通総額)が前年より減った一方で売上は増え、テイクレートが上昇しました。同社は、サービス収益の増加は主にEtsy Adsのクリック単価の上昇によるものと説明しています。
- 2024年に導入した売り手の登録料によってアクティブな売り手の数は減りましたが、同社はこれを、売り手のコミットメントを高めるための想定どおりの影響だと説明しています。
どんな事業か
Etsyは、独立した売り手の手作り品や一点物などを扱うオンラインマーケットプレイス「Etsy」を運営する会社です。ファッションの二次流通マーケットプレイス「Depop」も運営しています。同社は、在庫を持たず、売り手と買い手をつなぐことで手数料を得ると説明しています(FY2025 Form 10-K)。
2025年12月31日時点で、Etsyマーケットプレイスのアクティブな買い手は8,650万人、アクティブな売り手は560万人でした(FY2025 Form 10-K)。お金を支払うのは売り手の側です。
なお、2026年2月15日に、DepopをeBayに売却する契約を結んだと記載されています(FY2025 Form 10-K)。
収益の仕組み
マーケットプレイス収益は、出品料、取引手数料、決済手数料などで構成されます。売り手が支払う料金は、次のように記載されています(FY2025 Form 10-K)。
- 出品料:1品の出品につき0.20ドル
- 取引手数料:成約ごとに、送料込み金額の6.5%
- 決済手数料:多くの場合3.0〜6.5%に、1注文ごとの固定額を加えた額
- Offsite Ads手数料:Etsyが外部サイトに出した広告から売れた場合に、売り手の売上規模に応じて12%または15%
サービス収益は、サイト内広告(Etsy Ads)や配送ラベルなど、売り手が任意で使うサービスの料金です(FY2025 Form 10-K)。
つまり、出品した時点、売れた時点、決済された時点にそれぞれ料金が発生し、そこに売り手が自分の判断で使う広告などの料金が加わります。費用の内訳は、今回参照した記載の範囲では確認できません。
数字で確かめる
- 2025年の連結GMS(流通総額)は119億1,690万ドルで、うちEtsyマーケットプレイスが104億6,070万ドル(全体の87.8%)でした(FY2025 Form 10-K)。流通の大半がEtsy本体で生じていることが読み取れます。
- 2025年の売上高は28億8,350万ドルで、マーケットプレイス収益が20億716万ドル(69.6%)、サービス収益が8億7,634万ドル(30.4%)でした(FY2025 Form 10-K)。取引に連動する手数料が主で、任意のサービスがそれに次ぐ構成であることが読み取れます。
- 同社が定義するテイクレート(売上÷GMS)は24.2%で、前年の22.3%から上昇しました。GMSは前年比約5%減少しましたが、売上は2.7%増えています(FY2025 Form 10-K)。取扱高が減っても、取扱高あたりの収入が上がれば売上は伸び得ることが読み取れます。
- 同社は、サービス収益の増加は主にEtsy Adsのクリック単価の上昇による広告収益の増加だと説明しています(FY2025 Form 10-K)。テイクレート上昇の背景に、売り手向け広告があることが読み取れます。
- 同社は、2024年に導入した売り手の登録料(seller set-up fee)によってアクティブな売り手の数が減ったこと、これは売り手のコミットメントを高めるための想定どおりの影響であることを説明しています(FY2025 Form 10-K)。売り手の数よりも、出品への本気度を優先する判断だったことが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。マーケットプレイスは、売り手が出品し続ける理由と、買い手が安心して買える条件の両方がそろって、はじめて取引が生まれるとOtsumuは見ます。売り手にとっての理由は、自分だけでは出会えない買い手に届くことです。買い手にとっての条件は、商品の情報が信頼でき、決済と配送に不安がないことです。決済や配送ラベルを運営者が用意することは、手数料の源であると同時に、買い手の安心を支える役割も果たしていると読めます。
料金の設計は、必須の手数料と任意のサービスの二層になっています。任意のサービスは、売りたい意欲の強い売り手ほど多く使うため、取扱高が伸びない局面でも収入を伸ばす余地になると考えられます。ただしトレードオフがあります。売り手の手元に残る額が減りすぎれば、出品をやめる、価格を上げる、別の場に移るといった動きにつながり、買い手にとっての品ぞろえが痩せていきます。テイクレートは上げられる数字である前に、売り手の採算と釣り合っていなければならない数字だと考えられます。
登録料の導入は、数を追うか質を追うかという論点に関わります。売り手の数は減りますが、信頼しにくい出品が減れば、買い手の安心は増します。どちらを優先するかは、その場が買い手に約束している価値から決まるものであり、設計の早い段階で考えておくべき論点だとOtsumuは見ます。
自社事業に持ち帰る問い
- 売り手が自社の場に出品し続ける理由は何でしょうか。手数料を引いたあとに売り手に残る額を把握しているでしょうか。
- 買い手が購入をためらう要因は、商品情報、売り手への信頼、決済、配送のどこにあるでしょうか。
- 必須の手数料と、売り手が任意で使う有料サービスを、分けて設計できているでしょうか。
- 売り手の数を増やすことと、売り手の質を保つことがぶつかったとき、どちらを優先するかを決めているでしょうか。
小さく試すなら
- 扱う専門分野を一つに絞ります。売り手と買い手の双方に詳しい人が社内外にいる分野を選び、少数の売り手に声をかけて出品してもらいます。
- 2〜4週間を目安に、閲覧から購入、受け取りまでの流れを観察します。商品ページを見たが買わなかった、買い物かごまで進んでやめた、届いたあとに問い合わせが来た、といった止まった地点を記録します。
- 止まった地点を、商品情報、信頼、決済、配送の四つに分類し、買い手と売り手の双方に理由を聞き取ります。どこが最も多く取引を止めているかが、ここで分かります。
- 最も多い一点だけに手を入れ、同じ規模でもう一度観察します。取引が成立する割合に変化が見えてから、手数料の水準や任意サービスの検討に進みます。
資料の位置づけ
企業・サービス:Etsy, Inc. / Etsyマーケットプレイス。参照資料の対象:FY2025(2025年1〜12月)Form 10-K。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
zigyo.ai の関連ナレッジ ↗をもとに、Otsumuが検証・実装・運用の観点から再編集しました。制度・仕様・サービスの現況は、各提供元の最新情報をご確認ください。
編集:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.20