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Genmab「抗体医薬のロイヤルティと自社製品」に学ぶ収益源を入れ替える事業設計

デンマークのバイオ企業Genmabが、他社に許諾した抗体のロイヤルティで稼ぎながら、自社販売の製品へ軸足を移す設計を解説します。2025年12月期のForm 20-Fから、段階制ロイヤルティと買収の位置づけを確かめます。

分類:企業事例 › 医療・医薬・ヘルスケア

この事例の要点

  • Genmabは、自社で創った抗体や技術基盤を他の製薬会社に許諾し、その売上に応じたロイヤルティを受け取る事業を、収益の中心に置いています(Form 20-F、2025年12月期)。
  • 2025年は、J&Jによるダラツムマブ(DARZALEX)関連のロイヤルティが収益の66%を占め、特許の満了に備えて自社販売の製品へ軸足を移そうとしています(Form 20-F、2025年12月期)。
  • 2025年12月にMerus N.V.を80億17百万米ドルで買収し、自社で権利を持つ後期の開発品を加えました(Form 20-F、2025年12月期)。

どんな事業か

Genmab A/Sは、デンマークのヴァルビュ(Valby)に本社を置くバイオテクノロジー企業で、ADS(米国預託証券)がNasdaqに登録されています。がんなどの重い病気を対象に、抗体をもとにした医薬品とその候補を開発しています。同社は、自社の抗体や、独自技術のDuoBody(二重特異性抗体を作る基盤)を使って創られた医薬品を、世界の製薬会社がそれぞれ開発・販売している、と説明しています。承認済みの医薬品は6品目で、ダラツムマブ、アミバンタマブ、テクリスタマブ、タルケタマブ、オファツムマブ、テプロツムマブが挙げられています(Form 20-F、2025年12月期)。

同社は同時に、自社で市場に届ける姿勢も明確にしています。優先する後期プログラムはエプコリタマブ(AbbVieと共同)、Rina-S、ペトスマブ(petosemtamab)で、Rina-Sとペトスマブは同社の完全所有です。もう一つの自社製品Tivdakは、Pfizerと共同で開発・販売しています(Form 20-F、2025年12月期)。

収益の仕組み

収益は「他社に任せて受け取る部分」と「自社で売る部分」の二層です。同社は、収益がロイヤルティ、製品の純売上、マイルストン収入、償還収入、共同開発による収入、ライセンス料から成ると説明しています。

  • 入り口:自社の抗体や技術を他社に許諾し、契約時に一時金(ライセンス料)を受け取ります。
  • 課金:許諾先の売上に応じた段階制のロイヤルティと、開発や承認、売上の節目で支払われるマイルストンです。ダラツムマブは、年間の純売上に応じて12%から20%の5段階で、最初の7.5億米ドルまでが12%、30億米ドル超が20%と定められています。
  • 継続:ロイヤルティは国ごとに、初回販売から13年か、同社の特許が切れる時の遅い方まで続きます。
  • 自社製品:エプコリタマブは、米国と日本で同社が主体となって売上を計上し、AbbVieと売上とコストを50%ずつ分け合います。米国・日本以外ではAbbVieが販売し、同社は22%から26%の段階制ロイヤルティを受け取ります。Tivdakは、欧州・日本などで同社が売上を計上し、Pfizerに低い十数%台のロイヤルティを払います。

(以上、Form 20-F、2025年12月期)

数字で確かめる

  • J&Jのダラツムマブ関連ロイヤルティ:2025年の収益の66%。収益が一つの製品と一つの提携先に大きく寄っていることが読み取れます(Form 20-F、2025年12月期)。
  • 特許の満了:米国の特許は2029年、欧州は2031年に満了し、日本は2030年から順に満了します。同社は、売上が一定なら、ロイヤルティは2029年から大きく減り始めると見込んでいると書いています。時限のある収益を、次の柱で補う必要があることが読み取れます(Form 20-F、2025年12月期)。
  • ダラツムマブの契約:同社は一時金55.0百万米ドルを計上し、これまでにマイルストン920百万米ドルを計上しました。さらに95百万米ドルを上限に受け取る可能性があります。契約の初期に一時金とマイルストンを得て、その後はロイヤルティが続く設計であることが読み取れます(Form 20-F、2025年12月期)。
  • Merus N.V.の買収:2025年12月12日に80億17百万米ドルで完了しました。これにより、ペトスマブと、米国以外でのBIZENGRIの世界権利を得ました。買収資金の一部は、借入とシニア債の発行でまかなったと書かれています(Form 20-F、2025年12月期)。
  • 承認済みの6品目と、同社が権利の50%以上を持つ自社開発品が5つ:他社経由の収益と自社の権利を、並行して育てていることが読み取れます(Form 20-F、2025年12月期)。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事例は、知的財産を他社に許諾して「待ち」の収益を得る型を軸にしています。許諾先の売上が伸びれば、同社は追加の営業活動をしなくても収益が増えるため、段階制のロイヤルティは成功の果実を分け合う仕組みとして読めます。売上が大きくなるほど率が上がる設計は、許諾先が売るほど同社の取り分も増える、という誘因をつくっています。

一方で、この型には期限があります。ロイヤルティは特許と年数に縛られ、同社自身も、収益の多くが一社・一製品に依存すると書いています。そのため、同社の戦略は「許諾の収益で稼ぎながら、自社で権利を持つ製品を増やす」ことへ移っていると読めます。共同販売の形で自社の売上と費用を取り込むエプコリタマブは、その途中段階にあたります。

ただし、自社で売る側に回ると、開発費、販売体制、買収にともなう借入という重い負担も抱えます。許諾で得た現金を、より大きな取り分を狙う投資へ振り向ける設計ですが、開示には、買収の効果が見込みどおり出ない可能性も明記されています。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の技術・ノウハウ・ブランドのうち、他社に許諾して売上に連動して受け取れるものはありますか。
  • 自社の収益の何割が、特定の一社・一契約に依存していますか。期限や更新条件は把握できていますか。
  • 待ちの収益で得た資金を、自社で権利を持つ次の柱にどう振り向けますか。

小さく試すなら

  1. 過去1年の売上を、客先別に並べ、上位1社・3社への依存度を計算します。
  2. 自社の独自の手順・テンプレート・分析方法のうち、他社が使える形に切り出せる候補を3つ挙げ、使用許諾の条件を一枚にまとめます。
  3. 候補に近い事業をしている2〜3社へ、売上連動の段階制料金(例:売上が増えるほど料率が変わる)の案を持ち込んで反応を聞きます。
  4. 反応のあった1社と、小さな範囲で試験的に契約し、受け取る金額と手間を記録して、継続するかを判断します。

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資料の位置づけ

企業・サービス:Genmab A/S / 抗体医薬のロイヤルティと自社製品。参照資料:Form 20-F(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

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