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OTSUMU KNOWLEDGE

プリンター本体とインク・トナーなどのサプライ(Printing事業)

HPのPrinting事業は、プリンター本体で繰り返し使われるインクやトナーなどのSuppliesがセグメント売上の約65%を占めます。消耗品売上が稼働台数と使用量に連動するという、替え刃モデルの強みと弱みの両方を確かめられる事例です。

分類:企業事例 › 半導体・電子機器

この事例の要点

  • Printingセグメントの売上は、法人向け本体、家庭向け本体、Suppliesの三つに分けて開示され、Suppliesが最も大きな割合を占めます。
  • Suppliesの売上は前年を下回り、同社は稼働しているプリンターの台数と使用量の減少、為替の影響を要因に挙げています。
  • 同社は純正以外のサプライとの競争を課題に挙げ、サブスクリプション型のソリューションを長期的な重点にしています。

どんな事業か

HP Inc.は、パソコンなどのPersonal Systems、プリンターなどのPrinting、Corporate Investmentsの3つの報告セグメントを持つ企業です。Printingセグメントは、個人向け・法人向けのプリンター本体、サプライ(消耗品)、ソリューション、サービスを提供しています(Form 10-K、FY2025)。

相手は家庭から大企業まで幅広く、届け方も相手によって変えています。個人・中小企業向けにはInstant Ink ServicesやHP All-In Planなどのサブスクリプション型のソリューションを、大企業向けにはManaged Print Servicesを提供することを長期的な重点としています(Form 10-K、FY2025)。

収益の仕組み

同社はPrintingの売上を次の三つに分けて開示しています(Form 10-K、FY2025)。

  • Commercial Printing:法人向けプリンター本体など(サプライを除く)
  • Consumer Printing:家庭向けプリンター本体など(サプライを除く)
  • Supplies:インクやレーザーのカートリッジから産業用・3Dプリンティング用のサプライまでを含む消耗品

同社はSuppliesを、個人向け・法人向けのハードウェアで繰り返し使われる(for recurring use)消耗品と定義しています(Form 10-K、FY2025)。本体を一度売ると、その本体が動いている間は消耗品の購入が続く、というのが収入の流れです。

裏返すと、消耗品の売上は本体の稼働に依存します。同社はSuppliesの減収の主な要因を、稼働しているプリンターの台数(installed base)と使用量の減少、為替の影響と説明しています(Form 10-K、FY2025)。本体や消耗品の原価の内訳は、今回参照した公開資料には示されていません。

お金を払う人・対価法人・家庭:プリンター本体の購入利用者:インク・トナーなど消耗品の購入プリンター本体と消耗品の販売
図1 HPの収益の流れ(Form 10-K、FY2025にもとづく整理)。

数字で確かめる

  • FY2025の全社売上高は552億9,500万ドル、Printingセグメントの売上高は167億200万ドル(前年比3.7%減)、営業利益率は18.7%でした(Form 10-K、FY2025)。売上が減る中でも、セグメントとして利益を確保していることが読み取れます。
  • Printingの内訳は、Supplies 109億1,600万ドル、Commercial Printing 46億3,300万ドル、Consumer Printing 11億5,300万ドルで、Suppliesがセグメント売上の約65%を占めます(Form 10-K、FY2025)。収入の中心が本体ではなく消耗品にあることが読み取れます。
  • Suppliesの売上は前年比3.4%減でした(Form 10-K、FY2025)。稼働台数と使用量が減れば、消耗品の売上も下がる関係にあることが読み取れます。
  • プリンター本体の販売台数は4.2%減でした(Form 10-K、FY2025)。本体の販売減は、将来の稼働台数を通じて消耗品にも影響し得ると読めます。
  • 同社は、Printingの課題として、顧客行動の変化や、模倣品・詰め替え品・再生品といった純正以外のサプライとの競争を挙げています(Form 10-K、FY2025)。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。レイザー&ブレードの型が成り立つ条件は三つあると考えられます。本体が顧客の手元で実際に使われ続けること、使うたびに消耗品が減ること、そしてその消耗品を自社から買ってもらえることです。本体の販売数は入口の数にすぎず、将来の収益を決めるのは稼働と購入の継続だとOtsumuは見ます。

この事例は、三つの条件のそれぞれが崩れ得ることを示しています。印刷する量が減れば、消耗品はなかなか減らず、買い替えの間隔が延びます。本体が使われなくなれば購入は止まります。互換品が安く手に入れば、消耗品の購入先は他社へ移ります。どれも本体を売った後に起きるため、販売時点の数字だけを見ていると気づくのが遅れます。

定額のサービスは、この弱点への対応と読めます。消耗品を都度買ってもらう形から、継続的な契約に切り替えれば、購入先が他社へ流れにくくなり、収入の見通しも立てやすくなります。その代わり、使用量の把握、配送、契約の管理といった運用の仕事が新たに必要になります。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の本体は、販売した後にどれだけの割合が実際に使われ続けていますか。それを把握する手段はありますか。
  • 一台あたりの使用量は増えていますか、減っていますか。顧客の行動の変化をどう捉えていますか。
  • 顧客が互換品ではなく純正品を選ぶ理由を、価格以外で説明できますか。
  • 消耗品の購入を定額契約に変えた場合、配送や在庫の運用を自社で担えますか。

小さく試すなら

  1. 本体と交換品を一体にして、少数の顧客に提供します。売り切りではなく、使用の状況を継続して教えてもらう約束を最初に取り付けます。
  2. 使用頻度を記録します。週に何回使われ、交換品がどのくらいの速さで減るかを顧客ごとに把握します。
  3. 補充の手間を確かめます。顧客が交換の時期に気づいてから、注文し、受け取り、取り付けるまでの流れを追い、面倒に感じる箇所を聞きます。併せて、交換品の原価と配送の費用を記録します。
  4. 交換が一巡するまで続けます。交換の周期が顧客の間で安定しており、交換品の利益で本体の費用を回収できる見通しが立てば、台数を増やします。周期が大きくばらつく場合は、対象とする顧客の用途を絞ります。

資料の位置づけ

企業・サービス:HP Inc. / プリンター本体とインク・トナーなどのサプライ(Printing事業)。参照資料の対象:Form 10-K(FY2025、2025年10月31日終了年度)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

zigyo.ai の関連ナレッジ ↗をもとに、Otsumuが検証・実装・運用の観点から再編集しました。制度・仕様・サービスの現況は、各提供元の最新情報をご確認ください。

編集:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.20

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