この事例の要点
- 電源開発株式会社の2026年3月期の連結は、売上高1兆1,822億円(前期比10.2%減)、経常利益1,585億円(同13.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益585億円(同36.7%減)でした(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
- 経常利益が増えたのは、米国火力発電事業の持分譲渡による持分法投資利益の増加等によるものです。持分法投資損益は63,878百万円で、前期の14,464百万円から増えました(2026年3月期 決算短信)。
- 有利子負債1兆8,832億円のうち3,343億円は、海外事業のノンリコースローン(責任財産限定特約付借入金)です(2026年3月期 決算短信)。
どんな事業か
電源開発株式会社は、東京証券取引所に上場する発電会社で、コード番号は9513です。2026年3月期の決算短信は、セグメントを「発電事業」「送変電事業」「電力周辺関連事業」「海外事業」「その他の事業」に分けて報告しています(2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結))。
発電事業では、再生可能エネルギーの販売電力量が98億kWh、火力が418億kWh、卸電力取引市場等から調達した電力の販売量が150億kWhで、発電事業全体の販売電力量は667億kWhでした。海外事業の販売電力量は144億kWhです。電力周辺関連事業の売上には、豪州炭鉱権益保有子会社の石炭販売価格の低下が影響したと説明されています(2026年3月期 決算短信)。
収益の仕組み
決算短信のセグメント別の記載から、事業ごとの収益の出方を整理できます。
- 入り口:発電事業の売上高は8,656億円(前期比10.5%減)で、セグメントの中で最も大きい金額です。松島火力発電所の休廃止や容量市場価格の下落等が減収の理由とされています。
- 課金:送変電事業は託送収益で、売上高は498億円(同1.2%減)。電力周辺関連事業は売上高899億円(同12.4%減)でした。
- 継続:海外事業は売上高2,278億円(同6.9%減)ながら、セグメント利益は948億円(同174.9%増)で、発電事業の453億円を上回りました。
2027年3月期の見通しとして、売上高は電力販売価格の上昇等により16.7%増の1兆3,800億円、営業利益は23.8%増の1,250億円と示されています。経常利益は米国持分法適用関連会社の持分譲渡による売却益の反動等により21.2%減の1,250億円と説明されています(2026年3月期 決算短信)。
数字で確かめる
- 連結業績:売上高1兆1,822億円(10.2%減)、営業利益100,992百万円(27.0%減)、経常利益158,532百万円(13.2%増)(2026年3月期 決算短信)。本業の営業利益が減る中で、営業外の持分法投資利益が経常利益を押し上げたことが読み取れます。
- セグメント利益:発電事業453億円(33.8%減)、送変電事業17億円(37.4%減)、電力周辺関連事業169億円(50.2%減)、海外事業948億円(174.9%増)でした(2026年3月期 決算短信)。国内の各事業が減益となる中で、海外事業が利益を支えたことが読み取れます。
- 減損と除却:豪州の再生可能エネルギー発電設備や高砂火力発電所等で減損損失を計上し、大間原子力発電所計画では一部の機器類を除却したことに伴う固定資産除却損を特別損失に計上しました(2026年3月期 決算短信)。設備を持つ事業では、資産の評価の見直しが純利益を大きく動かすことが読み取れます。
- 財務:総資産は3兆7,397億円、自己資本比率は37.6%(前期末36.4%)、営業活動によるキャッシュ・フローは2,242億円の収入でした(2026年3月期 決算短信)。巨額の資産を抱えながら、自己資本比率が前期末より1.2ポイント上がったことが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は「インフラ保有・利用料」の型を、国内と海外に分けて持つ形として読めます。国内では水力・火力などの発電設備と送変電設備を持ち、海外では発電所の持分を持つことで、収益の出方が異なる複数の事業を一つのグループに置いています。2026年3月期は、国内の発電が松島火力の休廃止や容量市場価格の下落で減収減益となった一方、海外の持分譲渡益が全体を押し上げました。
もう一つ注目したいのは、資金の組み立てです。海外事業の借入にノンリコースローンを使うと、資料の表記にある「責任財産限定特約付」のとおり、返済の責任を対象の事業の資産などに限る形と考えられます。海外の大きな設備投資を、グループ全体のリスクと切り離して進める工夫と読めます。一方で、持分の売却益は毎年あるとは限りません。決算短信が次期の経常利益を「売却益の反動」で減少と見通しているように、一時的な利益と、毎年入る利益を分けて見る視点が欠かせないと考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の利益のうち、毎年入るものと、資産の売却や評価替えなど一度きりのものはそれぞれどのくらいですか。
- 新しい投資の返済を、その事業の収益だけに限定する形(案件ごとの資金の切り分け)にできますか。
- 国内と海外、または既存と新規の事業で、収益の出方が異なる事業を意図して持っていますか。
小さく試すなら
- 直近3年の利益を「継続して入る部分」と「一度きりの部分」に分けた表を作ります。
- 新しい投資や新規事業の案を1つ選び、その案件だけの収支(入る額、出る額、返済期間)を独立した表で作ります。
- その案件の収支だけで返済できるかを確かめ、足りない場合に何を変えれば成り立つかを2〜4週間で検討します。
- 結果を社内で共有し、既存事業の収支と混ぜて判断していないか見直します。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:電源開発株式会社 / 発電事業と海外事業。参照資料:2026年3月期 決算短信。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25