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OTSUMU KNOWLEDGE

LIFULLの不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」に学ぶ事業設計

住まいを探すユーザーを集め、成約確度の高い送客としてクライアントに届ける不動産・住宅情報サイトの事業です。国内の主力事業と海外事業で明暗が分かれた決算短信から、送客メディアが成り立つ条件を確かめます。

この事例の要点

  • 連結売上収益は34,466百万円(前期比△5.3%)ですが、一時的な売上と譲渡した事業の影響を除くと前期比+2.1%の増収だったと説明されています(2024年9月期決算短信〔IFRS〕(連結))。
  • 主力のHOME'S関連事業は売上収益24,034百万円(前期比+3.4%)、セグメント利益2,673百万円で、国内の移動者数がほぼ横ばいの中でもトラフィックが増加しました(2024年9月期決算短信〔IFRS〕(連結))。
  • 海外事業ではのれんの減損損失3,854百万円を計上し、連結では営業損失3,241百万円となりました(2024年9月期決算短信〔IFRS〕(連結))。

どんな事業か

同社グループの主力はHOME'S関連事業です。このセグメントは不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」や不動産投資と収益物件の検索サイト「健美家」及び関連事業で構成されています。同社は、ユーザー一人ひとりにぴったりな住まい探しを提案し、成約確度の高い送客を行えるよう、AI技術を活用した新機能の開発、UX・UIの改修、クライアントネットワークの拡大・強化に取り組んでいると説明しています(2024年9月期決算短信〔IFRS〕(連結))。

海外事業は、主にLIFULL CONNECTが運営する不動産・住宅情報のポータルサイトとアグリゲーションサイト、DXエージェント(テクノロジーを活用した不動産取引)で構成されています。成長戦略「Moving to Direct」を推進し、DXエージェントを中心とするDirect領域は好調でしたが、アグリゲーションサイトの減収が続いています(2024年9月期決算短信〔IFRS〕(連結))。

その他は、老人ホーム・介護施設の検索サイト「LIFULL 介護」や地方創生事業等です。2024年2月には「LIFULLトランクルーム」を運営していた株式会社LIFULL SPACEの株式を譲渡し、主力事業への経営リソースの集中を進めています(2024年9月期決算短信〔IFRS〕(連結))。

収益の仕組み

同社は、クライアント・ユーザーへの価値提供の向上を掲げ、「成約確度の高い送客」を行えるよう、新機能の開発やクライアントネットワークの拡大・強化に取り組んでいると説明しています。当期のHOME'S関連事業の増収は「各種施策の効果によりトラフィックは順調に増加し」た結果と説明されており、サイトに集まるユーザーの量と送客の質が売上につながる構造と読めます。ただし、クライアントからの課金形態の詳細は今回参照した資料には示されていません(2024年9月期決算短信〔IFRS〕(連結))。

費用の内訳も今回参照した公開資料には示されていません。資料からは、HOME'S関連事業で中長期の成長拡大に向けた積極的な採用活動を行ったことがセグメント利益の減少要因とされていること、海外事業で前CEOの退任や体制移行に伴う一時的な費用が発生したことが読み取れます(2024年9月期決算短信〔IFRS〕(連結))。

数字で確かめる

  • 売上収益:34,466百万円(前期比△5.3%)、営業損失:3,241百万円(前期は営業利益1,842百万円)(2024年9月期決算短信〔IFRS〕(連結))。海外事業の減損などで連結の損益が大きく動いたことが読み取れます。
  • HOME'S関連事業:売上収益24,034百万円(前期比+3.4%)、セグメント利益2,673百万円(同△3.8%)(2024年9月期決算短信〔IFRS〕(連結))。主力の国内事業は黒字を保ちつつ、採用などへの投資で利益が伸び悩んでいることが読み取れます。
  • 海外事業:売上収益8,154百万円(同△1.2%)、セグメント損失1,464百万円(前期はセグメント損失246百万円)(2024年9月期決算短信〔IFRS〕(連結))。アグリゲーションの減収が損益に響いていることが読み取れます。
  • 全国移動者数:前期比0.2%減少(当期、総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」より)(2024年9月期決算短信〔IFRS〕(連結))。市場全体が伸びない中でトラフィックを増やしたことが読み取れます。
  • 2025年9月期の業績予想:売上収益38,000百万円、営業利益3,500百万円(2024年9月期決算短信〔IFRS〕(連結))。同社が黒字への回復を見込んでいることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は「リード獲得・送客メディア」と「比較・アグリゲーター」の型で読むことができます。住まいを探すユーザーは多くの物件を見比べたいと考え、クライアントは確度の高い見込み客に出会いたいと考えます。その両者の間に立ち、探しやすさと送客の質を高めることで対価を得る構造は、ユーザーの集客力とクライアントの掲載・参加の厚みが互いを支え合うときに成り立つと考えられます。

同社が「成約確度の高い送客」を強調している点は、量だけでなく質で評価される送客モデルの特徴を示していると読めます。裏側では、物件情報を集めるクライアントネットワークの拡大、検索体験を磨くUX・UIの改修、AIによる提案機能の開発といった仕事が続きます。人口移動が横ばいの市場では、新たなユーザーを増やすよりも、一人ひとりの探索をどれだけ成約に近づけられるかが勝負になると考えられます。

一方で海外事業の結果は、この型のもろさも示しています。海外事業では自然流入の減少傾向が続き、立て直し計画からも乖離が生じたと説明されています。集客を外部環境に依存する比較サイトは、流入経路が変化したときに売上が急に細る可能性があり、同社がDirect領域へ軸足を移そうとしたことは、そのリスクへの対応と読めます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社がつくる見込み客は、量ではなく「成約に近いかどうか」で評価されているでしょうか。
  • 集客の多くを一つの流入経路に頼っていないでしょうか。流入が細ったときの代わりはありますか。
  • 市場全体が伸びないとき、一人ひとりの顧客の行動をどう変えれば成果が増えるでしょうか。
  • 送客先(クライアント)の数を増やす仕事と、ユーザーの体験を磨く仕事の配分は適切でしょうか。

小さく試すなら

  1. 自社の問い合わせや紹介の実績を流入経路別に分け、成約につながった割合を集計します。
  2. 成約率の高い経路と低い経路の違い(入力項目、提案内容、対応の速さ)を書き出し、仮説を一つ選びます。
  3. 2〜4週間、問い合わせ前の質問項目を一つ増やすなど、送客の質を上げる変更を一部の経路だけに試します。
  4. 送客数の減少と成約率の上昇を比べ、クライアント側の評価も聞いたうえで、全経路に広げるかを判断します。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:株式会社LIFULL / 不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」。参照資料:2024年9月期 決算短信。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27

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