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Mastodon gGmbH「Mastodon」に学ぶ小口の継続寄付と大口寄付を組み合わせる事業設計

分散型SNSのMastodonを運営する非営利団体Mastodonの年次報告書2024から、Patreonの継続寄付、大口寄付、助成金、受託収入の構成と、費用の使い方を確かめる事例です。

分類:企業事例 › メディア・広告・ゲーム

この事例の要点

  • Mastodonは、分散型SNSのソフトウェアMastodonを開発する非営利組織で、ドイツのMastodon gGmbHと、2024年に設立した米国の非営利法人Mastodon, Inc.の2つで運営しています(Mastodon Annual Report 2024)。
  • 2024年の総収入は2,191千ユーロ(前年545千ユーロ)で、うち寄付・拠出金が2,111千ユーロを占めます(同、Revenue表)。
  • Patreonからの継続寄付は248,531ユーロですが、定期的に寄付をしているユーザーはMastodonの利用者の1%未満と報告されています(同)。

どんな事業か

Mastodonは、利用者が各地のサーバー(インスタンス)に参加し、互いにつながる分散型のSNSです。開発元は、ドイツの非営利有限会社Mastodon gGmbHで、2024年には米国の501(c)(3)非営利法人Mastodon, Inc.を設立し、2024年が両方を運営する最初の通年だったと説明されています。CEOの書簡では、チームが3人から6人を超える専任の体制に増えたと述べられています(Mastodon Annual Report 2024)。同組織は未上場の非営利組織で、数字は自ら公表した年次報告書によります。

この報告書は、2024年を財務面で転機の年と位置づけています。Mozilla Foundationなどからの寄付や、個人の大口寄付によって人員を増やし、すべてのプラットフォームの開発を加速できたと説明しています(同)。2024年には、マスコットのぬいぐるみ「Plushtodon」も発売しました。

収益の仕組み

同組織は、2024年の収入源を複数の流れとして報告書に示しています。

  • 継続の寄付:Patreon(ドイツ)での小口の継続寄付が248,531ユーロでした。同組織は、Patreonによる主な収入は非営利の認定を必要としないと述べています。
  • 大口の寄付:米国での直接寄付が1,582,095ドルで、大口の贈与を含みます。内訳には、使途を指定した寄付と、組織再編を支える寄付があります。
  • 助成金:EUの支援プログラムNGIの資金(NLnet経由のQuote Posts、Fediscovery)などです。
  • 受託収入:欧州委員会のMastodonインスタンスの運用と、シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州との保守契約です。

そのほか、ぬいぐるみなどのグッズ販売が2024年に始まり、売上は718件の注文で36,152ユーロでした(同)。

数字で確かめる

  • 総収入は2,191千ユーロで、2023年の545千ユーロから大きく増えました。寄付・拠出金は545千ユーロから2,111千ユーロへ増えています(Mastodon Annual Report 2024)。収入の増加の大半が寄付によるものであることが読み取れます。
  • Patreonの継続寄付は248,531ユーロで、総収入の約11%です(248,531÷2,191,000、為替の扱いは同資料の表記のまま)。小口の継続寄付が、安定した土台として位置づけられていることが読み取れます。
  • 定期的に寄付をしているユーザーは利用者の1%未満と記載されています(同)。支援者が少数でも成り立つ一方、支援者の裾野を広げる余地が大きいことが読み取れます。
  • 総費用は774千ユーロで、そのうち人件費(専任の給与とフリーランスの報酬)が約585千ユーロ、総費用の75.5%です。技術ホスティングは84千ユーロでした(同)。費用の大半が人にかかる事業であることが読み取れます。
  • 現金・預金は152千ユーロから1,590千ユーロに増え、2025年の収益目標は4.2百万ユーロと示されています(同)。一年の寄付の増加を、基盤の強化と次年度の計画につなげようとしていることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は「寄付・パトロン(支援型)」の型の中で、小口の継続と大口の単発を組み合わせた設計と読めます。小口の継続寄付は金額こそ限られますが、毎月入る見通しがあるため、人を雇う判断の根拠になります。大口の寄付は、組織再編や開発の加速のように、一度に大きな資金が要る場面を支えます。報告書でも、両者が合わさって専任の人員の増加が可能になったと説明されています。

気になるのは、定期寄付者が利用者の1%未満であることです。数が多いほど安定するのが継続寄付の強みですが、ここでは裾野が小さく、報告書は2025年に「継続収入を重視しつつ、企業の影響からの独立を保つ」収入モデルを目指すと述べています。大口の寄付への依存を下げ、継続寄付を厚くするという課題が、数字の裏にあると読めます。

また、報告書は、2024年にドイツの税務当局が非営利の認定を取り消したと記し(同組織は異議を申し立てて対応中)、日々の運営は大きく影響を受けなかったと述べています。主な収入であるPatreonが非営利の認定を必要としないためだと説明されており、支援者から直接受け取る収入は法人の認定の枠に依存しにくいという特徴があると考えられます。ただし、受託収入や助成金も含めた収入全体の安定性は、この資料だけでは判断できません。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の収入のうち、毎月確実に入る部分と、一度きりの大きな部分は、それぞれどの程度でしょうか。
  • 利用者のうち、継続して支援してくれる人の割合を、自社は把握しているでしょうか。
  • 大口の支援者に頼りすぎないために、小口の継続支援をどのような形で設けられるでしょうか。

小さく試すなら

  1. 過去1年の収入を、「毎月入るもの」「年に数回入るもの」「一度きりのもの」に分け、それぞれの金額と件数を並べます。
  2. 日ごろ利用してくれている人のうち、応援してくれそうな数人に、継続して支援する場合の金額帯と、使い道への希望を聞きます。
  3. 聞いた内容を踏まえ、月ごとの継続支援の案内を1ページにまとめ、使い道と、集まった資金の報告方法も書き添えます。
  4. 2〜4週間のあいだ既存の利用者に案内し、申し込みの件数と、辞退した理由を記録して、金額と使い道の見せ方を見直します。

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資料の位置づけ

企業・サービス:Mastodon gGmbH・Mastodon, Inc. / Mastodon。参照資料:Mastodon Annual Report 2024(同組織の公表)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

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