この事例の要点
- 同社は、個人とSME(中小企業)に銀行口座のNuAccount、クレジットカード、個人向けローンなどを提供し、ブラジル、メキシコ、コロンビアで事業を行っていると説明しています(Form 20-F、FY2025)。
- 2025年のTotal revenueは15,774,741(千米ドル)で、そのうち金融商品にかかる利息収益等が13,434,683(千米ドル)を占めます(Form 20-F、FY2025)。
- 収益から差し引かれる主な費用は、資金調達などの利息費用と、予想信用損失(Expected credit loss)です(Form 20-F、FY2025)。
どんな事業か
同社の顧客は、口座を開設した個人またはSMEと定義されています。個人向けにはPersonal NuAccount、SME向けにはSME NuAccountという口座を提供し、クレジットカードとプリペイドカード、個人向けローンを組み合わせています。クレジットカードとローンを合わせた事業を「consumer finance」と呼んでいます(Form 20-F、FY2025)。
顧客との接点はウェブサイトとアプリです。同社は、広告をクリックせずに直接または既存顧客の紹介で来た顧客を「organic」と定義し、有料の広告経由で来た顧客と区別して数えています。(Form 20-F、FY2025)。
同社は、ブラジル、メキシコ、コロンビアを含む事業展開国で、事業の成長を支えるため設備投資を増やす見込みだとしています(Form 20-F、FY2025)。
収益の仕組み
損益計算書では、収益は「Interest income and gains net of losses on financial instruments」と「Fee and commission income」の2つに分かれます。前者が大半を占めます。同社は、利息を計上しているクレジットカード債権と顧客向けローンを「interest-earning portfolio」と定義しています(Form 20-F、FY2025)。
費用は、まず「Total cost of financial and transactional services provided」として、利息その他の金融費用、取引費用、予想信用損失が差し引かれ、Gross profitが算出されます。そのうえで、顧客サポート・オペレーション、一般管理費、マーケティング費用などの営業費用がかかります(Form 20-F、FY2025)。
同社は、カード、個人ローン、NuAccountの収益から直接の変動費(利息費用、取引費用、予想信用損失)を引いたものを「contribution margin」と定義しています。顧客獲得費用(CAC)は、カードの印刷・発送、信用情報の費用、有料マーケティングで構成されるとしています(Form 20-F、FY2025)。
数字で確かめる
- Total revenueは15,774,741(千米ドル)で、前年の11,517,075(千米ドル)から増えました(Form 20-F、FY2025)。事業規模が広がっていることが読み取れます。
- 利息収益等は13,434,683(千米ドル)、Fee and commission incomeは2,340,058(千米ドル)(Form 20-F、FY2025)。収益の中心が与信にもとづく利息であることが読み取れます。
- Interest and other financial expensesは(4,578,680)、Expected credit lossは(4,204,876)(いずれも千米ドル)(Form 20-F、FY2025)。調達コストと貸倒れの見積もりが、収益に対する大きな控除項目であることが読み取れます。
- Gross profitは6,625,002(千米ドル)、Income before income taxesは3,868,419(千米ドル)(Form 20-F、FY2025)。与信コストを差し引いた後も利益が残っていることが読み取れます。
- Marketing expensesは(302,822)(千米ドル)で、General and administrative expensesの(1,420,460)(千米ドル)より小さい水準です(Form 20-F、FY2025)。広告費への依存が小さいことが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。金利差の型は、預金などで集めた資金の調達コストと、貸し出した資金から得る利息の差に、貸倒れの損失を上回る余地があるときに成り立ちます。同社の損益計算書で、利息費用と予想信用損失がそれぞれ大きな控除項目になっている点は、この型の成否が「誰にどれだけ貸すか」を見極める与信判断にかかっていることを示していると読めます。
バンドル・クロスセルの観点では、口座、カード、ローンを一つのアプリで提供することに意味があると考えられます。同社は、税引き後の月収の少なくとも50%がNuAccountを出入りする顧客を「primary bank」として数えています。給与などのお金の流れが口座に集まるほど、その顧客の返済能力を見極める材料が増え、カードやローンを安全に提案しやすくなると読めます。
裏側で必要な仕事は、与信モデルの運用、延滞の早期把握(同社は支払期日から10日目時点の未払いをfirst payment defaultと定義)、そしてITシステムへの投資だと考えられます。トレードオフは、貸出を増やすほど利息収益が増える一方で、予想信用損失も同時に膨らむ点です。成長の速さと貸倒れの水準をどう釣り合わせるかが、この型の中心的な判断になると考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の顧客について、日常的に集まっている行動データのうち、次の商品の提案に使えるものは何でしょうか。
- 顧客一人あたりの売上から、直接かかる変動費を引いた「貢献利益」を把握しているでしょうか。
- 後払い・分割払いなど、自社が相手に信用を与えている取引で、回収できないリスクをどう見積もっていますか。
小さく試すなら
- 既存顧客を「広告経由」と「紹介・直接流入」に分け、獲得にかかった費用を顧客ごとに整理します。
- 最初に買った商品と、その後に追加で買った商品の組み合わせを集計し、追加購入が起きやすい組み合わせを2〜3個見つけます。
- その組み合わせを、条件に合う顧客にだけ2〜4週間案内し、案内した群としない群の追加購入率を比べます。
- 追加購入で得た粗利が、案内の費用と未回収リスクを上回ることが確認できれば、案内の対象を広げます。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Nu Holdings Ltd. / 中南米の個人・SME向け金融サービス(クレジットカード・ローン・NuAccount)。参照資料:Form 20-F(FY2025)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27