この事例の要点
- Ouster, Inc.は、デジタルライダー(レーザーで周囲を3次元で測るセンサー)を、自動車、産業、ロボット、スマートインフラの4市場に販売しています(Form 10-K、FY2025)。
- 収益の中心はセンサー本体の販売です。直販に加えて、国内外の販売代理店を通じて顧客に届けます。2025年には、IPライセンス契約に基づくロイヤルティの売上を初めて計上しました(Form 10-K、FY2025)。
- 売上は52%増の169.4百万ドルで、純損失は60.4百万ドルに縮まりました。用途の分散と、新しい収益の柱が数字に出始めています(Form 10-K、FY2025)。
どんな事業か
Ouster, Inc.は、米国カリフォルニア州サンフランシスコに主たる事務所を置き、Nasdaqに上場しています(Form 10-K、FY2025〔2025年12月31日終了年度〕)。同社は自らを、機械が周囲を知覚して動く「フィジカルAI」のための、センシングと知覚の企業と位置づけています。主力のOSシリーズは、同社が特許を持つデジタルライダーの設計に基づき、チップに集約した方式の製品です(Form 10-K、FY2025)。
市場は四つに分かれています。産業は港湾、倉庫、鉱山、農場の車両などに、スマートインフラは市の道路や施設の安全・監視に、ロボットは車輪型や脚型のロボットに、自動車は自動運転や運転支援の開発に使われます。さらに、2023年にVelodyneと合併し、2026年2月にはカメラの知覚技術を持つStereolabsを買収しました(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
売上の大半は、ライダーセンサーと付属品の販売です。10-Kの記載を、入り口・課金・継続に分けて読みます。
- 入り口:小ロットで評価する顧客が、まず少数のセンサーを発注します。多くの顧客は、新技術を早く取り入れる事業者で、自社製品に組み込んで使います。
- 課金:製品は出荷時に売上計上されます。販売の多くは直販で、国内外の販売代理店の網も使います。ほかに、開発・検証のサービス、ライセンス、延長の保守契約も収益に含まれます。
- 継続:量産に進んだ顧客は、より大きな数量を、見通しやすい生産計画で発注します。IPライセンスの顧客からは、その顧客の製品の売上に応じたロイヤルティを受け取ります。
製造は主にBenchmark ElectronicsとFabrinetに委託し、サンフランシスコの工場は新製品の立ち上げなどを担います。同社は、単純なデジタル構造により、全モデルで製造工程と部品調達を共通化できると説明しています(Form 10-K、FY2025)。
数字で確かめる
- 2025年の売上高は169.4百万ドルで、前年の111.1百万ドルから58.3百万ドル(52%)増えました。センサーの販売増と、ロイヤルティ22.8百万ドルの計上が理由です(Form 10-K、FY2025)。本体販売とIP収益の両方が伸びたことが読み取れます。
- 売上の内訳は、製品売上が146.6百万ドル、ロイヤルティが22.8百万ドルでした。ロイヤルティは2024年にはゼロでした(Form 10-K、FY2025)。ハードウェア販売に、新しい収益源が加わったことが読み取れます。
- ロイヤルティのうち16.1百万ドルは、過去に結んだ複数年のIPライセンス契約に関する累計額です。不確実性が解消されたため、2025年第4四半期に計上されました(Form 10-K、FY2025)。一部は、過去分がまとめて計上された一回限りの性格を持つことが読み取れます。
- 粗利益は、2024年の40.5百万ドルから83.4百万ドルに増えました。同社は、ロイヤルティには対応する原価が立たないため、粗利益と粗利率を押し上げると説明しています(Form 10-K、FY2025)。収益の種類で、利益の出方が変わることが読み取れます。
- 純損失は2025年が60.4百万ドル、2024年が97.0百万ドルで、2025年12月31日時点の累積赤字は973.4百万ドルです。2025年は2社の顧客が、売上の10%超を占めました(Form 10-K、FY2025)。赤字は縮小したものの、累積では大きく、販売先の集中も残ることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事例は、一つの部品を複数の市場に売り分ける、用途分散のハードウェア事業と読めます。自動車向けは量産の判断が遅く、需要も読みにくい一方、産業やインフラ、ロボットは小ロットから売上が立ちます。同社は、同じチップとほぼ同じ構造で、全市場に対応できると説明しており、開発費を市場ごとに分けずに済む設計だと考えられます。
もう一つの柱は、IPライセンスです。製品を自社で作って売るだけでなく、設計の権利を他社に使わせて使用料を得る形は、設備を持たずに収益を得られる点で、本体販売と性格が異なります。ただし、今回の22.8百万ドルには累計の一括計上が含まれるため、毎期同じ水準で続く収益とは読めません。
課題は、競争による価格低下です。同社も、競合が多く、販売価格に下げ圧力がかかると記載しています。単純な設計で原価を下げ続けられるかが、利益を守る条件になります。また、売上が評価用の小ロットに偏ると、安定した売上の見通しは立てにくくなります。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の製品やサービスは、今の用途のほかに、どの業界で小さく売れる可能性があるでしょうか。
- 自社の技術やノウハウを、販売以外に、他社へ使わせて使用料を得る形にできないでしょうか。
- 売上の中に、一回限りの要因が含まれていないか、毎期どこまで続くかを分けて見ているでしょうか。
小さく試すなら
- 過去1年の売上を、業界・用途ごとに分けて並べ、小さくても継続的に売れている用途を探します。
- その用途の顧客数社に、導入の理由と、他に使えそうな場面を聞き、新しい用途の候補を三つ出します。
- 候補のうち一つについて、既存の製品を変えずに試せる小さな提案(お試し提供など)を作り、数社に出します。
- 2〜4週間で反応を集め、売上の種類(本体、保守、使用料)ごとに見込みを整理して、次に力を入れる用途を一つ決めます。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Ouster, Inc. / OSシリーズ。参照資料:Form 10-K(2025年12月31日終了年度)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25