この事例の要点
- Pegasystemsは、業務自動化とAI意思決定の基盤を、Pega Cloud、サブスクリプションライセンス、保守で提供しています。クライアントがクラウドへ移ると保守売上は減る、と同社は説明しています。
- 移行の進み具合を、契約の年換算額であるACV(Annual Contract Value)で追っています。Pega CloudのACVは、2025年末に866.6百万ドルまで増えました。
- コンサルティングは、パートナーとクライアント主導の導入を促す方針で、売上に対する原価の関係は10-Kの数字から確かめられます。
どんな事業か
Pegasystems Inc.は1983年にマサチューセッツ州で設立され、本社はウォルサムにあり、NASDAQグローバル・セレクト・マーケットに上場しています(Form 10-K、2025年12月期)。同社は、AIによる意思決定と、ワークフロー自動化のソフトウェアを提供しています。マーケティング、営業、サービス、運用、ITの業務に使われます(Form 10-K、2025年12月期)。
提供形態は複数あります。同社が運用するPega Cloudのほか、クライアントが好みのクラウドで自ら運用する形も選べます。同社は、このマルチクラウドの考え方を、クライアントがセキュリティ、データアクセス、導入の速さ、予算の条件に合わせて選べる点に置いています(Form 10-K、2025年12月期)。
収益の仕組み
Form 10-K(2025年12月期)の売上区分は、サブスクリプションサービス、サブスクリプションライセンス、コンサルティングの三つです。サブスクリプションサービスには、Pega Cloudと保守が含まれます。
- 入り口:まず特定の業務(顧客対応、申請処理など)で導入し、プラットフォームの上に業務アプリケーションを重ねます。Blueprintという設計支援機能で、試作や開発を早める説明もあります。
- 課金:Pega Cloudは契約期間にわたって課金されます。永久ライセンスは、通常、権利が発効した時点で請求・回収されると記載されています。
- 継続:保守は、クラウドへ移ると通常は発生しません。そのため、保守の減少とクラウドの増加が表裏の関係になります。
- 導入支援:コンサルティングは、パートナーやクライアント主導の導入も含めて支援する方針です。
数字で確かめる
- 2025年の総売上は1,745.8百万ドルで、2024年の1,497.2百万ドルから17%増えました。サブスクリプション売上は1,517.9百万ドルで、総売上の87%を占めます(Form 10-K、2025年12月期)。売上の大半が継続課金型であることが読み取れます。
- Pega CloudのACVは、2024年末の652.4百万ドルから2025年末の866.6百万ドルへ、33%増えました(Form 10-K、2025年12月期)。クラウドが成長の中心であることが読み取れます。
- 保守のACVは291.8百万ドルから288.9百万ドルへ、1%減りました。ACV全体は1,371.5百万ドルから1,608.4百万ドルへ、17%増えました(Form 10-K、2025年12月期)。保守の減少を、クラウドの増加が上回っていることが読み取れます。
- 保守売上の減少は、クライアントがPega Cloud型の提供へ移ったことが主因と説明されています(Form 10-K、2025年12月期)。提供形態の移行が、売上の内訳を直接動かすことが読み取れます。
- コンサルティング売上は227.9百万ドル、同原価は250.8百万ドルでした(Form 10-K、2025年12月期)。導入支援の部分は、原価が売上を上回っており、主役はサブスクリプションであることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は、永久ライセンスや保守を中心にした売り方から、サブスクリプションとクラウドへ軸足を移す途中にある型だと読めます。移行の最中は、売上の区分が入れ替わるため、単年の売上だけでは進み具合が見えにくくなります。ACVのような年換算の指標を置くことで、契約の価値を一貫して追えるようにしていると考えられます。
もう一つの論点は、保守が減ること自体を、設計に織り込んでいる点です。保守はこれまで安定した収入源でしたが、クラウドが保守の役割を取り込むため、旧来の収入が自然に減ります。減る部分と増える部分を同じ表で見せることで、移行が成功しているかを判断しやすくしていると見ます。
コンサルティングが原価割れに近い形なのは、導入を早め、サブスクリプションの契約につなげるための投資という見方もできます。ただし、これはOtsumuの推測であり、同社の説明ではありません。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社が売り方を変えるとき、旧来の収入が減る部分を、数字でどう見せるだろうか。
- 契約の価値を、売上の認識時期と切り離して追える指標を、自社は持っているだろうか。
- 導入支援を、採算のとれる事業と、契約につなげる投資のどちらとして扱うだろうか。
小さく試すなら
- 1週目:自社の契約を、一括請求のものと、期間にわたって請求するものに分けて一覧にします。
- 2週目:各契約を、契約総額÷契約年数で年換算し、旧来型と継続型の合計を比べます。
- 3週目:導入支援や保守にかかった工数を契約ごとに記録し、売上との差を確認します。
- 4週目:年換算額の推移を月次で見る簡単な表を作り、売り方を変える場合の影響を試算して、関係者に共有します。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Pegasystems Inc.「Pega Cloud」。参照資料:Form 10-K(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25