この事例の要点
- 顧客はアプリやWebサイトから国をまたいで送金し、受取人は銀行口座、モバイルウォレット、現金受け取りなどから受け取り方法を選べます(Form 10-K、FY2025)。
- 収益の大半は送金サービスから生じ、顧客に課す取引手数料と、送金額に適用する為替スプレッドで構成されます(Form 10-K、FY2025)。
- 2025年のSend volumeは$74.9 billion(37%増)、Revenueは$1,635,147 thousand(29%増)で、営業損益は黒字に転じました(Form 10-K、FY2025)。
どんな事業か
同社は2011年に設立され、175を超える国に展開し、5,300を超える送金経路(コリドー)を持つと説明しています。コリドーとは、送金元の国と受取国の組み合わせのことです。顧客は主に米国、カナダ、英国、その他の欧州諸国から送金し、送金額が大きい受取国にはインド、メキシコ、フィリピンが挙げられています(Form 10-K、FY2025)。
顧客はスマートフォンのアプリ、Webサイト、メッセージサービスを通じて利用し、数分で口座を作って送金を始められ、処理の状況も追跡できます。受け取り側では、5.4 billionを超える銀行口座とモバイルウォレット、約490,000か所の現金受け取り拠点に送れると説明されています(Form 10-K、FY2025)。
同社の特徴は、入金と受け取りの提携先ネットワークを通じて、国ごとに現地の拠点を置かずに取引を完了できる点です。デジタルサービスのため、現金を受け付ける送金代理店は通常持たず、その費用や手数料もかからないとしています。今後は、高額送金者、事業者、受取人といった新しい顧客層や、後払いで送金できるRemitly Flex、デジタルウォレットとカード、会員プログラムRemitly Oneなどへ広げる方針です(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
取引手数料は、コリドー、受け取り通貨、入金方法(ACH、クレジットカード、デビットカードなど)、受け取り方法(銀行入金、モバイルウォレット、現金受け取りなど)、送金額によって変わります。為替スプレッドは、顧客に提示する為替レートと、同社が通貨を購入するレートの差です(Form 10-K、FY2025)。
初回の手数料を免除したり、初回の為替レートを優遇したりする販促は、売上の減額として処理されます。同社はこれを顧客との長期的な関係への投資と位置づけています(Form 10-K、FY2025)。
費用面では、Transaction expensesの増加は、取引量の増加に伴う処理・支払いの直接費用と、取引損失の引当金の増加によるものと説明されています。マーケティング費用は新規顧客獲得のための広告や販促が中心で、新規顧客の獲得費用は獲得した四半期の利益を押し下げる一方、その後の期間の利益に寄与すると見込んでいます(Form 10-K、FY2025)。
数字で確かめる
- Revenue:$1,635,147 thousand(前年$1,263,963 thousand、29%増)(Form 10-K、FY2025)。取扱額とともに売上が伸びたことが読み取れます。
- Active customers(2025年第4四半期):9,279(単位:千人、19%増)(Form 10-K、FY2025)。顧客基盤の拡大が成長の主因であることが読み取れます。
- Transaction expenses:549,480(単位:千ドル)、売上に対して34%で前年と同じ水準(Form 10-K、FY2025)。送金1件ごとにかかる費用が売上の大きな部分を占めることが読み取れます。
- Marketing:342,903(単位:千ドル)、売上に対して21%(前年24%)(Form 10-K、FY2025)。獲得の効率が改善したと同社が説明していることが読み取れます。
- Income from operations:77,468(単位:千ドル、前年は(39,086))、Net income:67,933(同)(Form 10-K、FY2025)。規模の拡大で黒字化したことが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は送金・為替の型で、1回あたりの手数料と為替スプレッドを、繰り返し利用される取引の数で積み上げる形と読めます。同社は、顧客の多くが定期的で生活に欠かせない送金を月に複数回行うと説明しており、これが成り立つ条件だと考えられます。一度信頼を得た顧客が繰り返し使うため、獲得費用を後の期間で回収できるという前提が置かれています。
裏側で必要な仕事は、国ごとに異なる規制への対応、不正やマネーロンダリングを防ぐリスクモデル、為替の調達と資金の管理、そして提携先の選定と管理です。店舗を持たない代わりに、入金と受け取りの提携網の質が、送金の速さと確実さを決めると考えられます。新しい送金元の国を1つ加えると多くのコリドーが一度に開くという説明は、提携網への先行投資が拡大を容易にする構造を示すと読めます。
トレードオフは、価格と利幅の間にあります。手数料や為替レートを競争力のある水準に保つほど1件あたりの収益は薄くなり、Transaction expensesが売上の34%を占めるため、取引量が増えないと利益は出にくいと考えられます。初回優遇などの販促も売上を直接減らすため、どこまで獲得に使うかの判断が重要になると考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の手数料は、何の要素(経路、方法、金額など)によって変えているか。その根拠を説明できるか。
- 顧客が繰り返し使う理由は、生活や業務に欠かせない用途に結びついているか。
- 自前で拠点を持たずに、提携先の網でサービスを届けられる部分はないか。
- 新規獲得の費用を、何か月で回収できるかを把握しているか。
小さく試すなら
- 既存顧客の取引を、利用頻度と用途で分け、繰り返し使う顧客の特徴を洗い出す(1週間)。
- 手数料を決める要素を書き出し、要素ごとに料金を変えた案を作って、一部の顧客に提示する(2週間)。
- 自前で対応している受け渡しや納品の一部を、提携先に任せた場合の費用と品質を見積もる(2〜4週間)。
- 繰り返し利用の多い顧客層が特定でき、提携による費用の削減が見込めれば、その顧客層に絞った獲得施策に進みます。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Remitly Global, Inc. / デジタル国際送金。参照資料:Form 10-K(FY2025)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27