分類:企業事例 › 機械・素材・航空宇宙
この事例の要点
- ロールス・ロイスの民間航空部門は、2025年の基礎的売上高103億8,200万ポンドのうち、サービスが71億6,500万ポンドを占めます。
- TotalCareなどの長期保守契約(LTSA)は通常8〜15年で、顧客は通常、エンジンの飛行時間当たりで料金を支払います。
- 同社は、採算の悪い契約の再交渉など、契約の採算改善を進めていると説明しています。
どんな事業か
Rolls-Royce Holdingsは、民間航空(Civil Aerospace)、防衛(Defence)、パワーシステムズ(Power Systems)などの部門の業績を開示しています(Annual Report 2025)。ロンドン証券取引所に上場する英国企業としての報告義務にもとづいて情報を開示していると記載しています(Annual Report 2025)。
このうち民間航空部門は、大型機向けのTrentシリーズや、ビジネスジェット向けのエンジンを手がけています(Annual Report 2025)。エンジンを納めて終わりではなく、TotalCareやCorporateCareといったアフターマーケット契約を通じて、納入後のエンジンの面倒を見続けます。
この契約での同社の主な義務は「顧客のエンジンを運用可能な状態に保つこと」であり、整備・修理・オーバーホールやエンジンのモニタリングを契約期間にわたって行うとしています(Annual Report 2025)。
収益の仕組み
収入は、新品エンジン(OE)の販売とサービスの二つに大きく分かれます。サービスの中心である長期保守契約(LTSA)は通常8〜15年で、顧客は通常、エンジンの飛行時間当たり(例:USD/EFH)の「使った分」で支払います(Annual Report 2025)。同社は、この支払い方がエンジンの摩耗と顧客自身の収入の流れに合っていると記載しています(Annual Report 2025)。
収益は契約期間にわたり、発生した原価の進み具合にもとづいて認識します(Annual Report 2025)。アフターマーケットには、LTSAのほかに都度請求(time and materials)もあります。
費用の面では、同社は、民間航空のエンジンの性能を高め、翼に付いたまま使える時間(time on wing)を延ばすために10億ポンドを投じていると説明しています(Annual Report 2025)。
数字で確かめる
- 2025年のグループの基礎的売上高(underlying revenue)は201億ポンド(Annual Report 2025)。部門別の数字を読む前提となる、グループ全体の規模であることが読み取れます。
- 民間航空部門の基礎的売上高は103億8,200万ポンドで、新品エンジン(OE)が32億1,700万ポンド、サービスが71億6,500万ポンド(Annual Report 2025)。サービスの比率は約69%(公開資料の数値からの計算値)で、納入後の収入が販売時の収入を上回っていることが読み取れます。
- 同部門の基礎的営業利益は21億3,000万ポンド、利益率は20.5%(2024年は16.6%)(Annual Report 2025)。同社は増益の要因として、LTSAと都度請求の双方でのアフターマーケットの好調などを挙げています。
- 大型エンジンのLTSAの飛行時間は1,700万時間(前年比8%増)、LTSAの工場整備(ショップビジット)は1,079回(Annual Report 2025)。飛行時間が収入の量を、工場整備の回数が費用の量を表す関係にあると読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事例には、製造業のサービス化、保守によるリカーリング、従量課金という三つの型が重なっていると考えられます。製品の販売から稼働を支える価値へ広げると、収入は長期にわたって入るようになりますが、同じ長さで責任も続きます。
成り立つ条件は、提供側が故障や整備の費用を顧客よりも正確に見積もれることだと考えられます。飛行時間当たりの料金は先に決まり、整備の費用は後から発生します。見積もりが合っていれば安定した利益になり、外れれば長い契約期間にわたって損が続きます。同社が翼に付いたまま使える時間を延ばすために資金を投じ、採算の悪い契約の再交渉を進めていることは、この構造の表れだとOtsumuは見ます。裏側では、稼働のモニタリング、整備の計画、部品の手当て、契約条件の見直しが継続的な仕事になると読めます。
なお、航空機エンジンは安全にかかわる分野であり、そこで求められる要件は一般の製品のサービス化とは別に扱うべきだと考えます。他の業種が持ち帰れるのは、稼働の指標と保守の負担を結び付けて、約束できる範囲を決めるという考え方の部分です。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の製品について、顧客が本当に欲しいのは製品そのものですか、それとも製品が使える状態ですか。
- 稼働を約束する場合、料金の基準にする使用量(時間、回数、距離など)を、自社と顧客の双方が同じ数字で確認できますか。
- 故障の頻度と一回当たりの対応費用を、料金を決められるだけの精度で把握していますか。
- 契約期間の途中で前提が変わったとき、料金や条件を見直す取り決めはありますか。
小さく試すなら
- 既存の顧客のなかから協力を得やすい少数の先を選び、製品の稼働の指標(使用時間や回数など)を記録する方法を決めます。
- 同じ期間、その製品にかかった保守の負担(訪問の回数、作業時間、交換した部品)を、稼働の記録と並べて残します。
- 2〜4週間の記録から、稼働の量と保守の負担に関係が見えるかを確かめます。関係が見えなければ、記録の項目か期間を見直します。
- 関係が見えた範囲に限って、自社が約束できるサービスの内容(対象の製品、対応時間、含める作業)を文書にまとめ、顧客に見せて反応を聞きます。約束できない範囲は、都度請求として分けておきます。
資料の位置づけ
企業・サービス:Rolls-Royce Holdings plc / 民間航空機エンジンと長期保守契約(TotalCareなど)。参照資料の対象:Annual Report 2025(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
zigyo.ai の関連ナレッジ ↗をもとに、Otsumuが検証・実装・運用の観点から再編集しました。制度・仕様・サービスの現況は、各提供元の最新情報をご確認ください。
編集:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.20