この事例の要点
- Sea Limitedは、E-commerce(Shopee)、Digital Financial Services(Monee)、Digital Entertainment(Garena)の3つの主要事業を運営しています(Form 20-F、FY2025)。
- 同社は、3事業それぞれが多面的なプラットフォームであり、利用者が増えるほど各利用者にとっての価値が高まる循環があると説明しています(Form 20-F、FY2025)。
- total revenueは2024年のUS$16.8 billionから2025年のUS$22.9 billionへ36.4%増え、Operating incomeは1,985,306(US$ thousands)でした(Form 20-F、FY2025)。
どんな事業か
Shopeeは、売り手と買い手をつなぐECマーケットプレイスです。また同社は、メーカーや第三者から商品を仕入れてShopee上で買い手に直接販売しており、その売上はSales of goodsとして計上しています(Form 20-F、FY2025)。
Moneeは、クレジット・銀行、電子ウォレット、決済処理、資産運用、保険を手がけるデジタル金融サービスです。Garenaはデジタルエンターテインメント事業で、同社はゲームを基本無料(freemium)のモデルで提供しているとしています(Form 20-F、FY2025)。
地域別では、2025年のtotal revenueのうち「Southeast Asia excluding Singapore」が62.7%、「Latin America」が24.1%を占めます(Form 20-F、FY2025)。
収益の仕組み
Shopeeでは、主に売り手に有料の広告サービスを提供すること、取引ベースの手数料を課すこと、物流やフルフィルメントを含む付加価値サービスに課金することで収益化しています。同社は、売り手と買い手が多いほど取引の数と金額が大きくなり、それが時間とともに広告収入と取引手数料収入を押し上げると説明しています(Form 20-F、FY2025)。
Garenaの主な収入源はゲーム内アイテムの販売です。同社は、アクティブユーザーを課金ユーザーに転換し、課金ユーザーあたりの収入を高めることが収益化に重要だとしています。Moneeは、クレジット・銀行業務の利息と手数料、電子ウォレット等の手数料、保険の手数料と保険料で収益を得ています(Form 20-F、FY2025)。
費用の主な構成要素として、同社は、顧客獲得・維持費用を中心とする販売・マーケティング費用、ECの物流費用、クレジット事業の資金調達コストや貸倒費用、ゲーム事業の決済チャネル費用やロイヤルティ、人件費、研究開発費などを挙げています。自社の電子ウォレットと決済処理によって決済チャネル費用の削減を図っているとも説明しています(Form 20-F、FY2025)。
数字で確かめる
- E-commerce(Shopee)のservice revenueは14,545,894(US$ thousands)で、total revenueの63.4%でした(Form 20-F、FY2025)。売上の中心がマーケットプレイスであることが読み取れます。
- ShopeeのGMVは2024年のUS$100.5 billionから2025年のUS$127.4 billionへ26.8%増えました(Form 20-F、FY2025)。取引の規模自体が拡大していることが読み取れます。
- Digital Entertainment(Garena)のservice revenueは2,408,765(US$ thousands)、gross marginは67.1%でした(Form 20-F、FY2025)。売上規模は小さくても利益率の高い事業であることが読み取れます。
- E-commerce(Shopee)のgross marginは34.7%、Digital Financial Services(Monee)は87.5%でした(Form 20-F、FY2025)。事業ごとに利益の出方が大きく異なることが読み取れます。
- Provision for credit lossesは1,372,616(US$ thousands)でした(Form 20-F、FY2025)。金融事業の拡大に伴う貸倒のコストが無視できない規模であることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。マーケットプレイスの観点では、Shopeeは売り手と買い手の両方を集め、その取引から広告と手数料で収入を得る構造と読めます。この型は両側の参加者がある規模を超えることが前提になります。そのため、決済や物流といった周辺サービスを自社で整え、取引の体験を支える裏側の仕事が欠かせないと考えられます。
アイテム課金(基本無料+少額課金)の観点では、Garenaはゲームを無料で遊べるようにして利用者の母数を広げ、その一部の課金で収益を得る形です。gross marginが高い一方で、売上はアクティブユーザー数と課金への転換率に左右されるため、各市場の好みに合わせたコンテンツのローカライズや価格設定の継続的な調整が求められると読めます。
トレードオフとして、複数の事業を持つことで利用者の相互送客や決済の内製化といった相乗効果が期待できますが、事業ごとに異なるリスクも抱えます。Provision for credit lossesが前年から増えていることは、その一例と考えられます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社のサービスに売り手と買い手(提供者と利用者)の両側がいる場合、どちら側を先に集める設計になっているか。
- 取引が増えたときに、広告・手数料・付加価値サービスのどれで収入を得るかを決めているか。
- 無料で使える範囲と有料にする範囲の境目は、利用者の母数と課金率の両方から見て妥当か。
小さく試すなら
- 1週目:自社サービスの利用者を、無料で使っている層と支払っている層に分け、それぞれの人数と主な利用行動を整理します。
- 2週目:支払っている層の利用行動から、有料化の対象として受け入れられやすい機能や付加サービスの候補を洗い出します。
- 3週目:候補の一つについて、少額の追加オプションや広告枠などの有料メニューを限定的に提示し、申し込みの有無と反応を記録します。
- 4週目:一定の申し込みがあり、無料層の利用が減っていなければ、対象を広げて提供します。無料層の離脱が見られれば、無料の範囲を見直します。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Sea Limited / EC「Shopee」・デジタル金融「Monee」・ゲーム「Garena」。参照資料:Form 20-F(FY2025)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27