この事例の要点
- SoFi Technologies, Inc.は、借りる・貯める・使う・投資する・守るを1つのアプリで提供する金融サービス会社で、貸出(Lending)、Technology Platform、Financial Servicesの3セグメントで事業を行っています(Form 10-K、FY2025)。
- 連結の純金利収入は2025年に$2,218,956 thousandでした。自社の銀行(SoFi Bank)の預金を貸出の原資に使えることを、同社は利点として挙げています(Form 10-K、FY2025)。
- 既存会員に追加の商品を使ってもらう循環を「Financial Services Productivity Loop」と呼び、会員数は13.6 million超、商品数は約20.2 millionに達しています(Form 10-K、FY2025)。
どんな事業か
同社は2011年に設立され、顧客を「members」と呼んでいます。個人ローン、学生ローン、住宅ローンといった貸出に加え、SoFi Money、SoFi Credit Card、SoFi Crypto、SoFi Investなど、日々使う金融商品をそろえています。さらに有料の会員制度SoFi Plusでは、優遇価格や追加の特典、ファイナンシャルプランニングなどを提供しています(Form 10-K、FY2025)。
事業は3つの報告セグメントに分かれます。Lendingは貸出とその管理、Technology Platformは金融機関などの企業が金融商品をつくり運営するための基盤の提供、Financial Servicesは預金・カード・投資などの商品と、第三者のためにローンを組成するLoan Platform Businessを含みます(Form 10-K、FY2025)。
同社は銀行持株会社で、SoFi Bankを通じて当座・普通預金、クレジットカードなどを提供しています。新規の貸出はすべてSoFi Bankで組成しているとしています。アプリ内の「member home experience」で会員ごとに内容を出し分け、新しい商品の利用につなげていると説明しています(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
Lendingセグメントでは、貸出で得る金利収入と資金調達にかかる利息費用の差である純金利収入が収益性の中心で、ローン組成手数料などの手数料収入も加わります(Form 10-K、FY2025)。同社は銀行を持つ利点として、預金を貸出の原資に使うことでウェアハウスや証券化より調達コストを下げられること、ローンをより長く保有して金利を得られることなどを挙げています。
手数料収入も伸びています。2025年の手数料収入は$1.5 billionで、Loan Platform Business、組成手数料、紹介手数料、カードのインターチェンジ手数料、証券の手数料が寄与したとしています。Technology Platformは複数年契約が多く、料金は主に利用量に応じた体系で、月次の後払いが中心です(Form 10-K、FY2025)。
費用面では、2025年の預金にかかる利息費用が$83.9 million増えたと説明されています。セグメントに配賦されない費用として、株式報酬、人件費、減価償却、広告宣伝などの本社費用が開示されています(Form 10-K、FY2025)。
数字で確かめる
- 純収益(Total net revenue):$3,613,354 thousand(2025年)、前年比35%増(Form 10-K、FY2025)。貸出と手数料の両方で規模が拡大していることが読み取れます。
- 純利益:$481,320 thousand(2025年)、前年は$498,665 thousand(Form 10-K、FY2025)。増収ほどには利益が増えていないことが読み取れます。
- 純金利マージン:5.85%(2025年)、前年は5.80%(Form 10-K、FY2025)。金利環境が変わる中でも利ざやを維持していることが読み取れます。
- 預金残高:$37.5 billion(2025年12月31日時点)(Form 10-K、FY2025)。貸出の原資を自前の預金で賄う体制が広がっていることが読み取れます。
- Financial Servicesセグメントの純収益:$1,542,016 thousand、前年比88%増(Form 10-K、FY2025)。貸出以外の商品が収益の柱に育ちつつあることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。金利差モデルは、安く集めたお金を高い金利で貸すことで成り立ちます。SoFiの場合、預金を集めること自体が調達コストの低い原資づくりになり、同時に預金口座やカードが会員との日常の接点になっています。貸出の利ざやと、預金による接点づくりが同じ仕組みの中でつながっている点が特徴だと考えられます。
バンドル・クロスセルの観点では、1つの目的で入ってきた会員に別の商品を使ってもらうことで、獲得費用を分散させる設計です。そのためには、アプリの画面で何をいつ勧めるかを決めるデータと、複数の商品をまたいだ会員情報の管理が裏側で必要になると考えられます。
トレードオフは、預金金利を競争的に設定すると利息費用が増える点と、貸出を長く持つほど信用リスクを抱える点です。銀行としての規制対応も必要になります。商品の数を増やすほど運営の負荷も増えるため、どの商品が次の商品につながるかを見極めることが鍵になると読めます。
自社事業に持ち帰る問い
- 最初に使われる商品と、その後に使ってほしい商品の順番を設計できているでしょうか。
- 顧客との日常的な接点(毎日・毎週使うもの)と、単価の高い商品を分けて考えているでしょうか。
- 自社の資金や在庫の調達コストを下げる手段を、顧客との関係から得られないでしょうか。
- 他社向けに自社の基盤を提供する収益(Technology Platformのような形)は考えられるでしょうか。
小さく試すなら
- 1週目:既存顧客の購入履歴から、最初に使った商品と2つ目に使った商品の組み合わせを集計します。
- 2週目:最もつながりやすい組み合わせを1つ選び、最初の商品を使った顧客への案内文と画面を用意します。
- 3週目:一部の顧客にだけ案内を出し、案内しない顧客と2つ目の商品の利用率を比べます。
- 4週目:顧客1人あたりの商品数と獲得費用を並べて記録し、差が確認できれば案内の対象を広げます。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:SoFi Technologies, Inc. / デジタル金融サービス。参照資料:Form 10-K(FY2025)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.27