この事例の要点
- Trip.com Groupは、宿泊予約、交通チケット、パッケージツアー、法人出張、その他(広告・金融サービス)の5つで収益を上げ、宿泊と交通が収益の大半を占めます(Form 20-F、2025年12月期)。
- 収益の中心は、宿泊施設や航空会社などの提携先から受け取る手数料です。宿泊予約の収益は、予約が取り消せなくなった時点で認識されると説明されています(Form 20-F、2025年12月期)。
- 2025年の総収益は625億元(前期比17%増)で、宿泊の伸びが交通を上回り、収益に占める比率が上がりました(Form 20-F、2025年12月期)。
どんな事業か
Trip.com Group Limitedは、ケイマン諸島で設立された持株会社で、主たる事務所はシンガポールにあります。1999年に創業し、2003年にナスダックに、2021年に香港取引所に上場しました。ブランドは、中国の旅行サービスのCtrip、オンライン旅行会社のQunar、海外旅行者向けのTrip.com、旅行検索のSkyscannerなどです(Form 20-F、2025年12月期)。
同社は、旅行者と提携先(宿泊施設、航空会社、ツアー会社など)をつなぐ「ワンストップの旅行プラットフォーム」を掲げています。商品の予約に加え、利用者が共有する口コミや旅の体験談などのコンテンツも集め、情報を探す段階から予約、旅先での支援までを一つの場に集める設計です。提携先には、オンラインでの存在感づくりや利用者へのアクセスを支える技術的な仕組みを提供するとしています(Form 20-F、2025年12月期)。
収益の仕組み
同社は、提携先との取引に応じた手数料を中心に、事業ごとに収益の認識方法を開示しています(Form 20-F、2025年12月期)。
- 入り口:旅行の計画段階の情報、口コミ、検索。ここで利用者を集めます。
- 課金その1(宿泊予約):宿泊提携先からの手数料。予約が取り消せなくなった時点で収益を認識します。
- 課金その2(交通チケット):発券した時点で手数料を認識し、関連サービスはサービス提供時に認識します。
- 課金その3(パッケージツアー):提携先から受け取る紹介手数料を、ツアーの出発日に認識します。
- 課金その4(法人出張):企業顧客からのサービス料型で、予約を代行し、サービス提供後に純額で認識します。
- 課金その5(その他):オンライン広告と、金融サービスです。金融は、提携先の金融機関から受け取るプラットフォームサービス料と、利用者への債権の利息収入で構成されます。
数字で確かめる
- 2025年の総収益は625億元(前期比17%増)で、2023年の446億元、2024年の534億元から伸びました。純利益は2023年の100億元、2024年の172億元、2025年の334億元でした(Form 20-F、2025年12月期)。増収と並行して、利益も大きく増えたことが読み取れます。
- 宿泊予約の収益は2023年の173億元、2024年の216億元、2025年の261億元で、総収益に占める割合は39%、40%、42%です。2025年は取扱高(GMV)が17%増え、収益は21%増えました(Form 20-F、2025年12月期)。宿泊の比重が年々高まっていることが読み取れます。
- 交通チケットの収益は2025年に225億元(前期比11%増)で、総収益に占める割合は2023年の41%から、2024年の38%、2025年の36%へ下がりました。GMVは6%増でした(Form 20-F、2025年12月期)。交通は伸びているものの、構成比は下がっていることが読み取れます。
- 「その他」(広告・金融)は2023年の35億元から2024年の46億元、2025年の64億元に増えました(Form 20-F、2025年12月期)。手数料以外の収益が、規模を増していることが読み取れます。
- 販売・マーケティング費用の収益比は、2023年の21%から2024年の22%、2025年の24%に上がりました(Form 20-F、2025年12月期)。集客のための費用が増えていることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事例は、取引の当事者ではなく「仲介」として、提携先の在庫を預からずに手数料を得る設計だと読めます。宿泊や航空の在庫は提携先が持ち、同社は利用者を集めて予約を成立させることに専念します。在庫リスクを持たない分、取扱高が増えるほど収益が伸びる構造です。
収益の認識タイミングも重要です。予約が取り消せなくなった時点、発券の時点、出発日など、事業ごとに「約束を果たした」と言える点が異なります。仲介業では、予約が成立しても取り消しが起こりうるため、どの時点で収益を確定させるかが、利益の質に直結すると考えられます。
さらに、旅行の予約だけでなく、広告と金融サービスを足して、同じ利用者基盤から取れる収益を増やそうとしている点が目立ちます。ただし、集客費用が増えていることから、仲介が競争の激しい領域であることも読み取れます。利用者を集める手段を、広告費に依存し続けるのか、コンテンツや会員の仕組みで自前の入口を育てるのかが、今後の分かれ目だとOtsumuは考えます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社が在庫や実作業を持たずに、顧客と提携先をつなぐだけで成り立つ取引はあるでしょうか。
- その取引で「成立した」と言える時点はいつで、取り消しや変更はどのくらい起こるでしょうか。
- 手数料以外に、同じ顧客基盤から取れる収益(広告、周辺サービス)は何があるでしょうか。
小さく試すなら
- 自社の顧客と、自社が紹介・仲介できそうな提携先を一覧にし、顧客が「探すのに困っていること」を数名から聞き取ります。
- 提携先の候補に、紹介が成立した場合の手数料の考え方(成約時、実施時など)を相談し、どの時点で対価を受け取るのが無理がないかを確認します。
- 顧客5〜10社を対象に、手作業で紹介を行い、成立した件数と、取り消しや変更があった件数を記録します。
- 2〜4週間で、成立率と取り消し率をもとに、紹介の仕組みを継続できるかを判断します。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Trip.com Group Limited / Ctrip・Trip.com・Skyscanner。参照資料:Form 20-F(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25