← 企業事例

OTSUMU KNOWLEDGE

半導体ファウンドリ(ウエハー製造の受託)

TSMCは、顧客が設計した回路にもとづいて半導体ウエハーを製造する専業ファウンドリです。売上総利益率59.9%と巨額の設備投資が並ぶ構造から、受託製造で価格を決める力がどこから生まれるのかを考える材料になります。

分類:企業事例 › 半導体・電子機器

この事例の要点

  • TSMCは、顧客から提供された回路設計にもとづいてシリコンウエハー上に半導体を製造する専業ファウンドリで、2025年の売上高の約86%がウエハー製造です。
  • 2025年の売上総利益率は59.9%で、同じ年の設備投資は1兆2,724億台湾ドルに上ります。
  • 上位10社で売上高の約78%を占め、同社は顧客の集中が進むと大口顧客の需要変動の影響を受けやすくなると説明しています。

どんな事業か

TSMCは、1987年に台湾政府と民間投資家の合弁として設立され、専業ファウンドリ(dedicated foundry)として製造能力を築いてきたと説明しています(2025年12月期 Form 20-F)。株式は1994年から台湾証券取引所に、ADSは1997年からニューヨーク証券取引所に上場しています(2025年12月期 Form 20-F)。

事業の中身について、同社は「顧客から提供された独自の回路設計にもとづき、シリコンウエハー上に半導体を製造する」と記載しています(2025年12月期 Form 20-F)。顧客には、製造工場を持たない半導体設計会社(ファブレス)やシステム企業が含まれます。設計は顧客、製造はTSMCという分担です。

収益の仕組み

収入の柱はウエハーの製造です。2025年の売上高の約86%がウエハー製造で、残りは主にパッケージング・テスト、マスク製作、設計、ロイヤルティ収入です(2025年12月期 Form 20-F)。

費用の側では、設備投資の大きさが目立ちます。同社は、ファウンドリの製造能力を特徴づけるのは生産能力と製造プロセス技術の二つだと説明しており、2ナノメートル技術は2025年に量産を始めたと記載しています(2025年12月期 Form 20-F)。生産能力と技術の両方に資金を投じ続けることが、受注の前提になっている構造だと読めます。

お金を払う人・対価顧客(ファブレス等):ウエハー製造パッケージング・テスト、マスク製作などウエハー製造の受託かかる費用設備投資生産能力と製造プロセス技術への投資
図1 TSMCの収益の流れ(Form 20-Fにもとづく整理)。

数字で確かめる

  • 2025年の売上高は3兆8,090億5,400万台湾ドル(2024年は2兆8,943億800万台湾ドル)。売上総利益率は59.9%(2024年は56.1%)(2025年12月期 Form 20-F)。受託製造でありながら高い利益率を保っていることが読み取れます。
  • 用途別の売上構成は、HPC(高性能計算)58%、スマートフォン29%、IoT 5%、自動車5%など(2025年12月期 Form 20-F)。需要の中心がHPC向けにあることが読み取れます。
  • 上位10社で売上高の約78%、最大の顧客で19%、2番目の顧客で17%(2025年12月期 Form 20-F)。少数の大口顧客との関係が事業の土台になっていることが読み取れます。
  • 2025年の設備投資は1兆2,724億台湾ドル(約409億ドル)で、2026年は520億〜560億ドルを見込むと記載しています(2025年12月期 Form 20-F)。大きな資金を次の生産能力と技術に投じ続ける構造であることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。同じ受託製造(OEM・ODM)の型でも、この事例は利幅の薄い受託とは成り立ち方が違うと考えられます。顧客が自分では持てない設備と製造技術を提供しているため、受託側が価格を決める力を持ちやすい、と読めます。

もう一つの条件は役割分担です。専業ファウンドリという立場は、顧客の設計と競合する自社製品を持たない立場だと考えられます。Otsumuは、顧客と直接競合しないという線引きそのものが、設計情報を預けてもらうための信頼になり、製造への専門化を支えていると見ます。裏側では、預かった設計情報を守る管理体制と、約束した品質・納期で引き渡す運用が欠かせない仕事になると考えられます。

トレードオフは投資の重さと顧客の集中です。巨額の設備投資を続ける構造は、小規模な事業にそのまま移せるものではありません。持ち帰れるのは投資の規模ではなく、「顧客のどの工程を、競合しない立場で、専門的に引き受けるか」という設計の考え方だとOtsumuは見ます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社が提供しようとしている能力は、顧客が自分で持とうとすると難しいものですか。それとも、手間を省く程度のものですか。
  • 自社の既存事業や将来の計画は、受託の顧客と競合しませんか。競合しないことを、顧客にどう示しますか。
  • 顧客から預かる設計情報やデータを、どの体制で管理しますか。その体制は取引の前に説明できる状態ですか。
  • 売上が少数の顧客に集中したとき、その顧客の需要の変動を吸収できる余力はありますか。

小さく試すなら

  1. 見込み顧客の業務の流れを工程ごとに書き出し、自社の専門能力を提供する工程を一つに絞ります。複数の工程にまたがる提案は、この段階では行いません。
  2. その工程について、引き渡す成果物の品質の基準、納期、預かる情報の扱いを、書面の案としてまとめます。
  3. 見込み顧客の数社に案を見せ、「自社でやる場合と比べて任せたい理由があるか」「競合の懸念はないか」を聞き取ります。任せたい理由が品質や技術にあるのか、単に手が足りないだけなのかを区別します。
  4. 2〜4週間の聞き取りで、品質や技術を理由に任せたいという反応が複数得られれば、一社と小さな試行の契約に進みます。手が足りないという理由だけなら、価格競争になりやすいと考え、提供する工程を選び直します。

資料の位置づけ

企業・サービス:Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited(台湾積体電路製造) / 半導体ファウンドリ(ウエハー製造の受託)。参照資料の対象:2025年12月期 Form 20-F。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

zigyo.ai の関連ナレッジ ↗をもとに、Otsumuが検証・実装・運用の観点から再編集しました。制度・仕様・サービスの現況は、各提供元の最新情報をご確認ください。

編集:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.20

あわせて読む

次の一手を、一緒に。

この型を自社の事業に当てはめるとどうなるか、現在の段階に合わせて一緒に整理します。

事業について相談する ↗
FROM KNOWLEDGE TO ACTION

知識を、次の一手へ。

AIツール診断で、次の一手を整理する ↗