分類:企業事例 › ソフトウェア・SaaS
この事例の要点
- Varonisは、2021年後半にSaaS提供を始め、2022年末に主力のデータセキュリティ製品をSaaSで提供できるようにしました。2025年12月末のARRに占めるSaaSの割合は約86%です(Form 10-K、2025年12月期)。
- 2025年12月期の売上高は623.5百万ドルで、前期比13.2%増です。このうちSaaSは462.6百万ドルで121.6%増、期間ライセンスは109.6百万ドルで56.9%減と、売上の中身が入れ替わりました(Form 10-K、2025年12月期)。
- 同社は、自社運用型の製品を2026年12月31日に提供終了すると発表しており、移行の終点を明確に区切っています(Form 10-K、2025年12月期)。
どんな事業か
Varonis Systems, Inc.は米国フロリダ州マイアミに本社を置き、ナスダックに上場するデータセキュリティ企業です。クラウドとオンプレミスにあるファイル、メール、データベース、SaaSアプリなどの機密データについて、誰がどこまでアクセスできるかを把握し、不要な権限を自動で減らし、異常な動きに対処する製品を提供しています(Form 10-K、2025年12月期)。
同社は、データがクラウドやSaaS、AIツールに広がる中で、手作業のセキュリティ運用では追いつかないという考えを示しています。そのうえで、自動化された成果を提供するため、SaaS型への切り替えを進めたと説明しています(Form 10-K、2025年12月期)。
収益の仕組み
収益は、SaaS、期間ライセンスのサブスクリプション、保守・サービスの三つに分かれて開示されています。移行にあたり、同社は次の設計を採っています(Form 10-K、2025年12月期)。
- 入り口:リスク評価をきっかけに接点をつくり、評価を受けた企業が有料の顧客に転換する流れが、収益に影響すると同社は述べています。
- 課金:従来は複数の製品ライセンスを組み合わせて販売していましたが、SaaSでは主要な5つのライセンスを一つのプラットフォームライセンスにまとめて簡素化しました。
- 継続:SaaSの収益は契約期間にわたって均等に計上されます。期間ライセンスは契約時に一括で収益が計上されるため、SaaSへ切り替えると、同じ契約でも売上の計上の時期が変わります。
販売は、2024年と2025年に、実質的にすべてがチャネルパートナー(ディストリビューターや再販業者)を通じて行われました。さらに、SaaSでのみ提供するマネージドのデータ検知・対応サービス(MDDR)が、新規顧客の獲得に貢献したと説明されています(Form 10-K、2025年12月期)。
数字で確かめる
- 総売上高:2025年12月期は623.5百万ドル、2024年は551.0百万ドルで、13.2%増です。移行の途中でも売上が伸びていることが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
- SaaS売上:2025年は462.6百万ドル、2024年は208.8百万ドルで、121.6%増です。売上全体に占める割合は37.9%から74.2%になり、中心がSaaSに移ったことが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
- 期間ライセンスと保守・サービス:期間ライセンスは254.2百万ドルから109.6百万ドルへ、保守・サービスは87.9百万ドルから51.3百万ドルへ減少しました。移行に伴い、従来型の売上が縮んでいることが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
- ARR:2025年12月末は745.4百万ドル、2024年末は641.9百万ドル、2023年末は543.0百万ドルで、前年比で16%と18%の増加です。SaaS ARRは638.5百万ドルです。契約の積み上がりが売上高の伸びとは別に開示されていることが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
- 純損失:2025年は129.3百万ドル、2024年は95.8百万ドル、2023年は100.9百万ドルです。移行期は損失が続いていることが読み取れます(Form 10-K、2025年12月期)。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事例から学べる点は、ビジネスモデルを切り替えるときに、売上高だけでは進み具合を読めないということです。期間ライセンスは契約時に収益が計上され、SaaSは均等に計上されるため、同じ顧客数、同じ契約額でも、移行の間は売上が小さく見えます。同社がARR(契約の年換算値)とSaaS比率を併記して開示しているのは、そのためだと読めます。
もう一つは、移行を顧客の都合に任せず、終点を示している点です。自社運用型の提供終了日を決めることで、顧客に切り替えを促し、社内も二つの製品系統を同時に持ち続ける負担から解放されます。SaaS限定の機能(MDDRなど)を用意し、切り替える理由をつくっている点も同じ方向の工夫と考えられます。
損失が続く点は留意すべきですが、売上の質が入れ替わる過渡期の姿とも読めます。小さな会社が同じ型を試すなら、どの指標で進み具合を測るかを、先に決めておくことが重要です。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社が売上以外に、契約の積み上がりを示す指標(契約の年換算値など)を持っていますか。
- 旧来の提供形態を続ける顧客に、切り替える理由と期限を示せていますか。
- 新しい形態でしか提供できない価値を、一つでも用意できていますか。
小さく試すなら
- 現在の契約を、一括で収益になるものと、期間にわたって積み上がるものに分け、年換算の金額を表にします。
- 表をもとに、売上高と年換算額の差が大きい顧客を3〜5社特定します。
- その顧客に、新しい提供形態でしか出せない小さな追加価値を2〜4週間の試行として案内します。
- 試行の結果と、年換算額の変化を記録し、旧形態の終了時期を決めるための材料にします。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Varonis Systems, Inc. / Varonis Data Security Platform。参照資料:Form 10-K(2025年12月31日終了会計年度)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25