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Walmart Inc.「Sam's Club」に学ぶ年会費で営業利益を支える会員制倉庫型の事業設計

売上総利益だけでは営業費用を賄えない年に、会員収入が営業利益2,442百万ドルを支えたSam's Clubの構造を、Walmart Form 10-K(2026年1月期)の数値で確かめます。

分類:企業事例 › 小売・EC

この事例の要点

  • Walmart Inc.のSam's Club U.S.セグメントは、会員のみが買える倉庫型クラブを米国とプエルトリコで601店運営しています。会員は年会費50ドルのClub会員と、110ドルのPlus会員の2種類です(Form 10-K、2026年1月期)。
  • 2026年1月期のセグメント売上は93,015百万ドルで、売上総利益は10,556百万ドル、営業費用は10,639百万ドルでした。売上総利益から営業費用を引くとわずかな赤字ですが、会員収入などの「会員収入その他」2,525百万ドルが加わり、営業利益は2,442百万ドルです(Form 10-K、2026年1月期)。
  • 同社は、会員のみのクラブでは会員収入が営業利益の重要な構成要素になる、と説明しています(Form 10-K、2026年1月期)。

どんな事業か

Walmart Inc.は米国アーカンソー州ベントンビルに本社を置く上場企業です。同社は小売、卸売、会員制クラブなどを展開しており、Sam's Club U.S.はその報告セグメントの一つです。2026年1月期のSam's Club U.S.の売上は、連結の売上の13%を占めました(Form 10-K、2026年1月期)。

Sam's Clubは、会員のみが買える倉庫型クラブで、samsclub.comとモバイルアプリも運営しています。会員はClub会員とPlus会員のどちらかを選び、配偶者や世帯のカードは追加料金なしで付きます。追加の会員資格は1件45ドルで購入でき、階層ごとの上限があります。Club会員は店舗前での受け取りが無料で、Plus会員はクラブからの配達の無料、50ドル以上の注文の送料無料、早朝の買い物などが加わります。会員は、購入に応じて貯まる「Sam's Cash」を現金、買い物、年会費の支払いに使えます(Form 10-K、2026年1月期)。

収益の仕組み

収益は、商品の売上から得る利益と、会員資格の年会費から得る収入の二本立てです。

  • 入り口:年会費50ドルまたは110ドルを払って会員になる。買い物の前にまず会費が発生する。
  • 課金:会員が店舗、アプリ、サイトで商品を買う。売上総利益率は11.3%(2026年1月期)で、Walmart連結の24.2%より低い水準で運営している。
  • 継続:会員は特典(受け取り、配達、Sam's Cash)を受けながら、年会費を払って更新する。

「会員収入その他」には、会費のほか、賃貸収入、リサイクル収入、ギフトカードの未使用収益などが含まれる、と注記されています(Form 10-K、2026年1月期)。

数字で確かめる

  • 売上:93,015百万ドル(2026年1月期)、90,238百万ドル(2025年1月期)、86,179百万ドル(2024年1月期)(Form 10-K、2026年1月期)。会員の買い物が毎年積み上がっていることが読み取れます。
  • 売上総利益率:11.3%(2026年1月期)、11.3%(2025年1月期)、10.9%(2024年1月期)(Form 10-K、2026年1月期)。商品の利益は薄く設定されていることが読み取れます。
  • 売上総利益と営業費用:2026年1月期は売上総利益10,556百万ドル、営業費用10,639百万ドル。差し引きは83百万ドルの不足で、会員収入その他の2,525百万ドルを加えると営業利益2,442百万ドルになります(Form 10-K、2026年1月期。引き算は同資料の数値から算出)。商品の利益だけでは営業費用に届かず、会費が営業利益を支えていることが読み取れます。
  • 会員収入その他:2,525百万ドル(2026年1月期)、2,323百万ドル(2025年1月期)、2,051百万ドル(2024年1月期)(Form 10-K、2026年1月期)。会費収入が毎年増えていることが読み取れます。
  • 営業利益:2,442百万ドル(2026年1月期)、2,404百万ドル(2025年1月期)、2,192百万ドル(2024年1月期)で、燃料を除いた営業利益は1,822百万ドル(2026年1月期)(Form 10-K、2026年1月期)。会員収入が営業利益の安定に関わっていることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は「会員制(年会費)販売」の型で読むことができます。商品は低い利益率で売り、利益の源泉を会費に置く設計です。数字を見ると、売上総利益だけでは営業費用に届かない年があっても、会費が営業利益を確保しています。商品を安く売っても成り立つのは、利益の一部をあらかじめ年会費で受け取っているからだと考えられます。

この型を支えているのは、更新です。会員が年会費に見合う価値を感じ続けなければ、会費の収入は積み上がりません。同社が受け取りや配達、Sam's Cashなどの特典を階層ごとに用意しているのは、会費の価値を実感できる場面を増やして更新につなげるためだと読めます。Plus会員の110ドルという高い階層は、利用頻度の高い会員から、より多くの会費と買い物を引き出す設計とも読めます。ただし、会費だけでなく賃貸収入など他の項目も含む数字のため、会費だけの影響は資料からは切り分けられません。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の利益は、商品・サービスの粗利と、会費・利用料のような前払いの収入に、それぞれどれだけ依存していますか。
  • 会費を取る場合、会員が「元が取れた」と感じる場面を、どこにいくつ用意できますか。
  • 利益率を下げて価格を競争力のある水準にしても、会費で補えるラインはどこですか。

小さく試すなら

  1. 過去1年の顧客を購入額で上位3割と他に分け、上位の顧客が1年に支払った粗利の合計額を出します。
  2. その粗利の一部に当たる年会費を仮に設定し、会員になると得られる特典(価格、送料、優先対応など)を3つ書きます。
  3. 上位の顧客10〜20社に案を見せ、年会費を払って会員になるかを聞きます。
  4. 関心のあった顧客に2〜4週間だけ試験の会員資格を提供し、購入の頻度と更新の意向を記録します。

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資料の位置づけ

企業・サービス:Walmart Inc. / Sam's Club U.S.。参照資料:Form 10-K(2026年1月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

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