← 企業事例

OTSUMU KNOWLEDGE

Ziff Davis「専門メディアと購読事業の買収型ポートフォリオ」に学ぶ、読者基盤を広告と継続課金に分ける事業設計

米Ziff Davisが、技術・ゲーム・健康などの専門メディアと、通信品質・セキュリティの購読事業を、買収で積み上げる構造を、Form 10-K(2025年度)の数値から読み解きます。広告と購読の組み合わせを学べます。

分類:企業事例 › メディア・広告・ゲーム

この事例の要点

  • Ziff Davisは、技術・ショッピング、ゲーム・エンタメ、健康・ウェルネスの専門メディアと、通信回線の品質を測るコネクティビティ、サイバーセキュリティ・マーテックの購読事業を持つ米国企業です。2025年の売上高は1,451百万ドルでした(Form 10-K、2025年度)。
  • 同社は、2012年から2025年に、約33億ドルを100件近い買収に投じたと記載しています。顧客基盤、収益化が不十分なメディアの読者層、既存顧客に売れる新製品を、買収の対象にしています。
  • メディア側は広告・成果報酬型のマーケティングが中心で、コネクティビティとサイバーセキュリティ・マーテックは購読・ライセンスが中心です。収益源の異なる事業を、一つの企業の中で組み合わせた事例として読めます。

どんな事業か

Ziff Davis, Inc.は、米国ニューヨークに本社を置き、ナスダック(ZD)に上場している企業です。同社は自らを、専門分野に特化したデジタルメディア・インターネット企業と説明しています(Form 10-K、2025年度)。

事業は5つの報告セグメントに分かれています。Technology & Shopping、Gaming & Entertainment、Health & Wellnessは、編集コンテンツとツールで読者を集めるメディア事業です。Connectivityは、ブロードバンド回線の計測データと分析を提供します。Cybersecurity & Martechは、VIPRE Security GroupとMOZ Groupを通じて、セキュリティやマーケティング支援のクラウドサービスを購読で提供しています(Form 10-K、2025年度)。

収益の仕組み

Form 10-K(2025年度)の収益内訳をもとに整理すると、構造は次のようになります。

  • 入り口:専門メディアが、技術、ゲーム、健康などの読者を集めます。読者の関心が明確なため、関連する広告主が見つかりやすい構造です。
  • 課金(メディア):広告・成果報酬型のマーケティング(performance marketing)と、一部の購読・ライセンスです。
  • 課金(購読事業):コネクティビティは回線の計測・分析ソフトウェアの購読・ライセンス、Cybersecurity & Martechは、法人・個人向けのセキュリティやマーケティング支援の購読です。
  • 拡大:買収で顧客基盤や読者層を追加し、既存の顧客や読者に売れる製品を広げます。

数字で確かめる

  • 2025年の売上高は1,451百万ドルで、前年の1,402百万ドルから増加しました。セグメント別では、Health & Wellnessが402百万ドル、Technology & Shoppingが357百万ドル、Cybersecurity & Martechが278百万ドル、Connectivityが231百万ドル、Gaming & Entertainmentが184百万ドルでした(Form 10-K、2025年度)。特定の一事業に偏らず、複数の事業に分かれていることが読み取れます。
  • 収益の種類別では、広告・成果報酬型のマーケティングが、Technology & Shoppingで351百万ドル、Health & Wellnessで336百万ドル、Gaming & Entertainmentで124百万ドル、Connectivityで13百万ドルでした。これらの合計は約824百万ドルで、売上高の約57%にあたります(Form 10-K、2025年度の数値から計算)。広告と成果報酬が、売上の半分超を占めることが読み取れます。
  • 購読・ライセンスは、Connectivityで202百万ドル、Cybersecurity & Martechで273百万ドルでした。全セグメントの合計では約599百万ドルで、売上高の約41%にあたります(同上から計算)。メディアの外に、継続課金の柱があることが読み取れます。
  • 同社は、2012年から2025年に、約33億ドルを100件近い買収に使ったと記載しています。多くの買収は小規模な「tuck-in」ですが、投じた金額は、tuck-inと大型の「platform」でほぼ均衡しているとされています(Form 10-K、2025年度)。件数と金額で、買収の性格が異なることが読み取れます。
  • 2025年には、のれん減損損失17.6百万ドルと、事業売却損58.0百万ドルを計上しました(Form 10-K、2025年度)。買収した事業の整理も、同時に進めていることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事例は、「読者や顧客を集める力」と「収益化する手段」を、別々に買い足せる構造だと読めます。専門メディアは、関心が明確な読者を集めますが、収益の柱は広告に偏りがちです。そこに、継続課金のソフトウェアを持つ事業を加えることで、収益源を分散していると考えられます。

同社の買収の考え方も参考になります。同社は、買収の対象として、顧客基盤、収益化が不十分な読者層、既存顧客に売れる新製品の3つを挙げています。「すでに集まっている人に、まだ売っていないものを売る」という視点は、自社の顧客リストに照らして検討しやすい考え方です。買収をしなくても、提携や自社開発で、同じ発想を試せます。

留意点として、同社は生成AIが、同社のコンテンツへのアクセスや複製を容易にし、トラフィックや読者数を減らし得ることを、リスク要因に挙げています。広告に依存する部分ほど、流入経路の変化の影響を受けやすいと考えられます。購読型の事業を併せ持つ意味は、この点にもあると読めます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社に集まっている顧客や読者に対して、まだ提供していない製品やサービスは何でしょうか。
  • 収益源が一つに偏っていないでしょうか。流入経路や取引先が変わったとき、影響を受ける部分はどこでしょうか。
  • 外から買う、提携する、自社でつくる、のうち、顧客基盤を広げるのに適した方法はどれでしょうか。

小さく試すなら

  1. 自社の売上を、顧客の入口(広告、紹介、検索、既存取引など)と、課金の種類(単発、継続、成果報酬)で表にまとめます。
  2. 顧客の入口のうち、外部の変化の影響を最も受けやすいものを一つ選び、依存度を割合で確認します。
  3. 既存顧客の上位数十社に、まだ頼んでいないが困っていることを聞き、自社または提携先で提供できそうな項目を3つまで挙げます。
  4. 2〜4週間のうちに、挙げた項目のうち一つについて、提供内容と価格の案を作り、数社に見せて反応を記録します。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:Ziff Davis, Inc./専門メディア、コネクティビティ、サイバーセキュリティ・マーテック。参照資料:Form 10-K(2025年度、2025年12月31日終了年度)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

あわせて読む

次の一手を、一緒に。

この型を自社の事業に当てはめるとどうなるか、現在の段階に合わせて一緒に整理します。

事業について相談する ↗
FROM KNOWLEDGE TO ACTION

知識を、次の一手へ。

AIツール診断で、次の一手を整理する ↗