覚書とは
覚書とは、当事者間で合意した事項や、既存契約の変更点などを書き残しておく文書です。要するに、簡単な書式であっても法的効果が生じ得ます。
「覚え書き」「念書」などとも呼ばれ、もともとは忘れないための備忘の意味合いがあります。しかし実務では、題名が覚書であることと、効力が弱いこととは無関係です。内容が合意として具体的で、当事者が署名や押印をしていれば、契約書と同様に扱われうる点に注意が必要です。
仕組み・ポイント
覚書が使われる場面は、おおむね次の三つに分けられます。
- 契約の補足・変更:既存の業務委託契約の期間や金額、対応範囲を変えるとき。基本契約本体を作り直さずに、変更点だけを文書化する
- 本契約前の暫定合意:本契約に至る前に、検討の進め方や情報の取扱いを取り決める。LOIと近い使われ方をする
- 合意事項の確認:打ち合わせで決まった運用ルールや費用の扱いを、後から揉めないよう記録する
表にすると、確認すべき点は次のとおりです。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 対象となる契約 | どの契約のどの条項を変更するのか特定されているか |
| 優先関係 | 元の契約と食い違う場合、どちらが優先するか書かれているか |
| 適用の開始時期 | いつの取引から有効か |
| 署名者 | 契約を結べる権限のある人が署名しているか |
実務での使い方・具体例
たとえば、開発の途中で仕様を追加することになり、期間と作業範囲が当初契約からずれた場面を考えます。口頭やチャットのやりとりだけで進めると、完了時に「その追加は合意していない」といった認識の食い違いが生じがちです。そこで覚書を一枚作り、変更した範囲、変更後の期間、追加分の扱いを書き、元の契約の番号や題名を引用したうえで双方が署名します。
このとき、元の契約に「契約の変更は書面でのみ行う」といった条項があるかを必ず確認します。あれば、チャットでの合意だけでは変更として認められにくくなります。覚書を残す習慣をつけておくと、あとから経緯を説明するための証拠にもなります。
保管の面でも工夫が必要です。覚書は契約書と別のフォルダに散らばりがちなので、元の契約と紐づけて管理し、契約管理の一覧に更新履歴として記録します。担当者が変わっても経緯を追えるようにしておくことが、後のトラブル予防になります。
最初の一歩としては、覚書を作る前に、元の契約のどの条項を変えるのかを一文で言えるかを確認します。一文で言えないときは、変更が多すぎる可能性があり、覚書ではなく契約全体の見直しを検討する合図になります。
よくある誤解と注意点
- 「覚書は契約書より軽い」と考えない。簡単な書式でも、合意内容と署名があれば法的な拘束力を持つことがある
- 元の契約と覚書の内容が食い違うまま放置しない。どちらを優先するかを覚書に明記する
- 題名だけで安心して中身を確認しない。「念書」「確認書」など別の題名でも同じ働きをする
- 新しい覚書が重なるほど全体像が見えにくくなる。変更が増えたら契約の更新・統合を検討する
制度や基準は変わるため、最新情報は公的機関・専門家で確認してください。
関連用語
- LOI(意向表明書):取引前の意向を示す近い性格の文書
- 基本契約・個別契約:基本契約と個別契約の関係で覚書が使われる
- 契約の解除:合意内容を変更・終了するときの考え方
- 電子契約・電子署名:覚書を電子的に取り交わす方法
Otsumuに相談できること
取引が進むにつれて、当初の契約と実際の運用がずれていくのは新規事業ではよくあることです。どの変更を書面に残すべきか、契約全体をどの時点で結び直すべきかを、事業の進み方に合わせて整理するお手伝いができます。
事業側の論点整理や進め方の設計は 新規事業の戦略・立ち上げ支援 でお手伝いできます。個別の法的判断は弁護士など専門家の領域ですので、必要に応じて専門家と連携しながら進める前提でご相談ください。まずは 30分の無料相談 で状況をお聞かせください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.04