両利きの経営とは
両利きの経営とは、既存の事業を磨き込む活動(深化)と、新しい事業の機会を探る活動(探索)を、同時に行う経営のあり方です。右手と左手の両方を使えることになぞらえ、英語ではAmbidexterityと呼ばれます。
既存事業の改善に偏ると、変化に対応できなくなります。探索に偏ると、収益の基盤が不安定になります。両方を組織の中でどう成立させるかが課題です。
仕組み・ポイント
二つの活動は、性質が大きく異なります。
| 観点 | 深化 | 探索 |
|---|---|---|
| 目的 | 既存の効率と品質の向上 | 新しい機会の発見 |
| 成果の見え方 | 短期で測れる | 長期で、不確実 |
| 失敗の扱い | 少なくしたい | 学びとして許容 |
| 評価の基準 | 効率、利益 | 検証の進捗、学び |
両立のためには、評価、予算、人材、意思決定の方法を活動ごとに変えることが必要です。同じ基準で評価すると、探索は成果が見えにくいために不利になり、続けられません。
実務での使い方・具体例
架空の例として、既存事業が安定している企業が、新しい領域の探索を始める場面を考えます。探索の活動には、既存事業とは別の予算の枠と評価の基準を用意します。担当者が既存事業の目標に追われないよう、時間の配分も明確にします。
探索で得られた成果が事業として育った場合、既存事業の仕組みとどう接続するかも設計しておきます。経営層が両方の重要性を繰り返し発信し、探索を守る姿勢を示すことが、現場の挑戦を支えます。
設計の観点
- 探索の予算を既存事業から独立した枠にしているか
- 探索の担当者の評価基準は、探索の性質に合っているか
- 探索の成果を受け取る既存部門との接続はあるか
- 経営層が両方の活動を支持する発信をしているか
組織の工夫
探索と深化で組織を分ける方法と、同じ組織の中で時間を分ける方法があります。企業の規模や文化に応じて選びます。どちらの場合も、二つの活動の間で人や情報が行き来する仕組みが重要です。
継続のための仕掛け
定期的に探索の成果を共有する場を設けると、経営層や既存部門の理解が進みます。小さな成功や学びを見える形にして、取り組みの価値を組織に伝え続けます。
よくある誤解と注意点
- 探索を既存事業の余力で行うと、忙しさに押されて後回しになります。
- 探索の成果を、既存事業の短期の指標で評価すると、挑戦が続きません。
- 探索が本業と無関係に行われると、成果が会社に取り込まれません。つながりの設計が必要です。
- 経営層の関与が薄いと、組織の中で探索が孤立します。
経営層に求められる姿勢
探索の取り組みは、成果が出るまでに時間がかかり、途中で批判を受けやすい活動です。経営層が、短期の数字で探索を責めない姿勢を明確にし、探索の目的と期待を繰り返し伝えることが、現場を支えます。言葉だけでなく、予算や人員の確保という行動で示すことが重要です。
現場の声
探索を担う担当者と、既存事業を担う担当者の間で、不公平感が生まれることがあります。双方の貢献を認める評価と、定期的な対話の場が、組織の分断を防ぎます。
兼務の落とし穴
同じ人が深化と探索を兼ねると、目の前の業務が優先されがちです。探索に使う時間を週の予定に固定するなど、仕組みで守ります。評価面談でも、探索の成果を明確に取り上げます。
関連用語
- 出島組織:本体と距離を置く探索の組織形態
- イノベーションのジレンマ:既存への対応が変化への対応を遅らせる問題
- ポートフォリオマネジメント:事業群の資源配分を考える管理
- ステージゲート:探索の投資を段階的に判断する方式
Otsumuに相談できること
既存事業と新規事業の両立は、予算や評価の設計に踏み込む必要があり、悩みやすい論点です。自社の状況に合う進め方を整理する場面で、相談の相手になれます。
新規事業・事業戦略の支援 では、こうした整理を現場の状況に合わせて進めています。まずは考えていることを聞かせていただくだけでも構いません。30分の無料相談をご利用ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.04