最恵待遇条項とは
最恵待遇条項とは、会社が他の投資家などに、より有利な条件を与えた場合に、最初の投資家にも、その有利な条件を同じように適用する、という契約上の取り決めです。「他の誰かにより良い条件を出したら、自分にも同じにしてほしい」という内容です。
英語の most favored nation(最恵国)に由来し、MFN条項とも呼ばれます。特に、初期に投資した人が、後から入る投資家より不利にならないようにする目的で使われます。
仕組み・ポイント
確認が必要な点を整理します。
- 対象となる条件:金額、権利、その他のどの条件が、適用の対象か。
- 対象となる相手:どのような投資家との取引が、比較の対象になるか。
- 適用の期間:いつまで条項が有効か。
- 適用の方法:該当した場合に、自動で適用されるか、請求が必要か。
- 除外の範囲:従業員への権利付与などを、対象外にするか。
最恵待遇条項は、初期の転換型の契約などで見られることがあります。後の調達で、より有利な条件が出た場合に、初期の投資家が不利にならないようにする仕組みで、初期の出資を促す役割を果たします。
会社側は、条項の存在が、後の調達の自由度を狭めることを、理解して契約します。
実務では、この条項の存在を、契約の管理表に記録して、定期的に確認する運用が役立ちます。新しい投資家と交渉する際に、既存の条項に触れる条件を提示していないか、確認する習慣を持ちます。
条項の適用を受ける投資家に、後から条件を知らせる義務が生じる場合もあるため、通知の方法も、あらかじめ決めておくと安心です。
実務での使い方・具体例
架空の例として、新規事業の会社が、複数の投資家から、順番に出資を受ける計画を立てる場面を考えます。担当者は、最初の投資家と、最恵待遇条項を結ぶと、後から入る投資家に付与する条件が、最初の投資家にも波及することを、確認します。
後の投資家との交渉の自由度が、条項によって制約を受けるため、条件の組み立てに影響します。対象の範囲を限定する、期間を区切るなどの交渉を検討します。
条項の存在を、社内で共有して、後の契約で見落とさない仕組みを作っておきます。
たとえば、初期の投資家との契約に条項があり、後から入る投資家に、より有利な転換の条件を提示したいときは、初期の投資家にも同じ条件を提示する必要が生じることがあります。調達の順序と条件の設計に、条項の存在を織り込みます。
進め方の例
- 契約案の条項から、対象となる条件と相手を確認する。
- 適用の期間と、適用の方法を確認する。
- 後の調達で与える条件が、条項に触れないか点検する。
- 条項の存在を社内で共有し、契約の管理表に記録する。
よくある誤解と注意点
- この条項があっても、すべての条件が同じになるとは限りません。適用の範囲は条項で決まります。
- 後の契約を結ぶ際に、この条項の存在を忘れると、契約違反になる恐れがあります。
- 適用の範囲が曖昧だと、解釈をめぐる争いになる場合があります。
- 複数の投資家との条項が重なると、調整が複雑になります。
- 条項の対象となる期間が、いつ終了するのかも、確認しておきます。期間が長く続くと、会社の将来の自由度が長く制約を受けます。
制度や基準は変わるため、最新情報は公的機関・専門家で確認してください。
関連用語
- 投資契約・株主間契約:条項を定める契約
- J-KISS:初期の調達で使われる枠組み
- タームシート:条件を整理する文書
- 資金調達ラウンド(シリーズA・B・C):調達の段階の呼び方
Otsumuに相談できること
複数の投資家と順に契約を結ぶ場面では、既存の条項が後の条件に与える影響を整理しておくことが重要です。詳しくは事業戦略・調査の支援をご覧ください。状況の整理から始めたい場合は、30分の無料相談をご利用ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.04