体制図は、役割と判断の流れを描く
新規事業の体制を考えるとき、組織図のように部署名と氏名を並べても、事業は動きません。必要なのは、誰が決め、誰が手を動かし、誰が助けるのかが分かる図です。役割を次の3つに分けて描きます。
- 判断する人:進む・変える・止めるを決め、費用と人の配分に責任を持つ人。
- 動かす人:顧客に会い、検証を設計し、作り、結果をまとめる人。
- 支える人:法務、経理、情報システム、営業、広報など、必要なときに専門性や既存の資産を提供する人。
新規事業が止まる場面を振り返ると、人が足りないことより、判断する人が曖昧で決まらない、支える部門との話が通っておらず手続きで止まる、といった原因が見つかることがあります。3つに分けて描くと、どこが空白かが分かります。
判断する人:一人に決め、権限の範囲を書く
判断する人は、原則として一人にします。委員会や複数の役員の合議にすると、日程の調整に時間がかかって判断が遅れやすく、責任の所在もぼやけやすくなります。体制図には、氏名と一緒に次のことを書き添えます。
- どの範囲の金額と事項まで、この人が単独で決められるか。
- それを超える場合、どの会議に、どの頻度で諮るか。
- 現場からの相談に、どのくらいの間隔で応じるか(定例の場の有無)。
判断する人が多忙な役員の場合、日々の判断を事業の責任者に委ねる範囲を決めておきます。責任だけを渡して権限を渡さない形は、現場の動きを止めます。権限の渡し方は新規事業責任者へ、責任と同じだけの判断権限を渡すで扱っています。
動かす人:人数より、三つの機能がそろっているか
動かす人は、少人数で始めます。初期に必要なのは人数ではなく、次の三つの機能です。
- 顧客に向き合う機能:対象者を探し、話を聞き、提案する。
- 形にする機能:LP、試作、手作業での提供、PoCなど、検証に必要なものを作る。
- 進行と記録の機能:検証の計画を立て、結果を記録し、判断する人へ報告する。
一人が複数を担ってもかまいません。体制図には、氏名、担う機能、そして後述する稼働の割合を書きます。新規事業の人材というと、特別な経験者を外から探す方法もありますが、初期に確認したいのは、顧客の話を素直に聞けること、小さく試して記録できること、社内の関係部門と話ができることです。既存事業で顧客や現場をよく知る人は、有力な候補になります。役割からチームを組む考え方は最初のチームは、顧客・実装・判断の役割から組むにまとめています。
支える人:必要になる前に、窓口を決めておく
支える人は常時の参加者ではありませんが、体制図に載せておくことに意味があります。契約書の確認、個人情報の扱い、既存顧客への案内、経費の処理などは、必要になってから相談先を探すと、そこで作業が止まります。
- 部門ごとに、相談の窓口になる人を一人決めてもらう。
- どんな相談が、どの段階で発生しそうかを先に伝えておく。
- 既存事業の通常の手続きと違う扱いが必要な点(小額の試験的な契約、短期間の確認など)は、判断する人から部門長へ話を通してもらう。
支える部門にとって、新規事業の相談は通常業務に上乗せされる負担です。依頼の内容と期限を具体的に伝え、判断する人の後ろ盾があることを明確にしておくと、協力を得やすくなります。
兼務を前提に、時間を先に確保する
新規事業の担当者が既存業務との兼務になる場合、兼務そのものが問題なのではなく、時間の確保が本人任せになることが問題です。次の点を体制と一緒に決めます。
- 稼働の割合を、体制図に明記する。「兼務」とだけ書かず、週のうちどの程度を充てるのかを書きます。
- 時間を固定する。割合だけ決めても、既存業務の急ぎの仕事に押し出されます。曜日や時間帯を決め、その時間は新規事業に使うと上長と合意します。
- 兼務元の上長の合意を、判断する人が取りに行く。担当者本人に交渉させると、評価者への遠慮から実質的に時間が取れなくなります。
- 外した業務を明示する。新しい仕事を足すだけでは、どこかで破綻します。
- 全員が兼務の場合でも、少なくとも一人は、主たる仕事が新規事業である人を置くことを検討する。顧客との約束や検証の進行には、連続した時間が必要になるためです。
兼務のチームは、全員がそろう時間が限られます。会議を増やすより、決めたことと次の行動を記録して共有するほうが進みます。運営の方法は兼務チームを、会議より決定記録で動かすを参照してください。
外部へ任せる範囲と、体制図への描き方
社内に機能が足りない場合、外部の力を使うのは合理的です。任せやすいのは、専門性が必要で、範囲と期間を区切れる仕事です。
- 論点の整理や検証の設計の支援
- インタビューの実施と記録、LPなどの制作
- PoCやMVPの開発
- 特定の領域の助言
一方、顧客と課題への理解、進む・止めるの判断、支える部門との調整は、社内に残します。ここを外に出すと、契約が終わったときに、社内に知見が残りにくくなります。
体制図には、外部の担当も描きます。誰が社内の窓口になり、誰が成果物を受け取り、契約が終わったあと誰が引き継ぐのかを書いておきます。雇用と業務委託の使い分けは雇用か業務委託かを、必要な働き方から判断するで整理しています。契約形態に関わる法的な判断は個別の事情で変わるため、専門家に確認してください。
描いた体制図の点検項目
- 判断する人は一人に決まっており、権限の範囲が書かれているか。
- 動かす人の三つの機能に、空白がないか。空白は誰が、または外部のどこが埋めるか。
- 全員の稼働の割合と、確保した時間帯が書かれているか。
- 支える部門の窓口が決まっているか。
- 外部の担当の窓口と、引き継ぎ先が決まっているか。
- 段階が進んだときに、体制を見直す時期が決まっているか。
よくある質問
Q. 専任を置けず、全員が兼務です。それでも始めてよいでしょうか。
始められます。ただし、検証の範囲を、確保できた時間で終えられる大きさに絞ります。時間が足りないのに計画だけが大きいと、進まないこと自体が事業の評価を下げてしまいます。実施の作業を外部に任せ、社内の時間を顧客の理解と判断に集中させる方法もあります。
Q. 新規事業の経験者が社内にいません。外から採用すべきですか。
採用は選択肢の一つですが、初期の段階では、必要な機能を先に確認するほうが確実です。顧客に向き合う、形にする、進行と記録をする、の三つのうち、社内で担えるものと足りないものを分け、足りない部分を、期間を区切った外部の支援で補う方法があります。採用は、事業の方向が見えてからでも間に合う場合があります。
Q. 体制図は、どの時点で見直せばよいですか。
段階が変わるときです。検証が中心の時期と、提供と販売が中心になる時期では、必要な機能が変わります。段階の判断の場で、次の段階に必要な体制を合わせて議題にすると、見直しの機会を逃しません。
Otsumuに相談できること
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Otsumuは、新規事業開発のコンサルティングとMVPのシステム開発を、構想から運用までひとつのチームで支援しています。継続的な伴走は、月額50〜150万円程度(税別)を参考に、体制と支援範囲に応じた個別見積もりです。法人の新規事業・DX部門の方は法人向けページもご覧ください。社内と外部の分担を相談したい場合は、30分の無料診断をご利用ください。
この記事について
Otsumu株式会社が執筆しました。統計値や他社の事例には依拠せず、進め方と判断の枠組みを中心にまとめています。記載の価格はOtsumuの税別・参考価格で、正式なお見積もりはご相談後にご案内します。法務・税務・会計・補助金などの制度は、専門家や公的窓口で最新の情報をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.09.21