分類:企業事例 › ソフトウェア・SaaS
この事例の要点
- Alarm.com Holdings, Inc.は、住宅・小規模事業者・商業施設向けのセキュリティや映像監視、エネルギー管理などのIoTサービスを、クラウドの基盤として提供しています。利用者に届ける役割は、認定された「サービス事業者パートナー」が担います(Form 10-K、2025年12月期)。
- 2025年の総売上は1,011,187千ドルで、そのうちSaaSとライセンスの収益は689,397千ドルです。SaaSとライセンスは売上の68%を占めると説明されています(Form 10-K、2025年12月期)。
- SaaSとライセンスの収益の更新率は2025年に95%で、同社は契約者基盤の生涯価値を示す指標として使っています(Form 10-K、2025年12月期)。
どんな事業か
Alarm.com Holdings, Inc.は米国バージニア州タイソンズに本社を置き、ナスダックに上場しています。同社は自らを「インテリジェントに接続された不動産のためのプラットフォーム」と位置づけ、セキュリティ、映像監視と映像分析、エネルギー管理、アクセス制御、水管理、緊急対応などのサービスをクラウド上で提供しています。2025年には、同社の基盤が170百万台を超える接続機器から3,650億件を超えるデータを処理したと述べています(Form 10-K、2025年12月期)。
同社の顧客は、家や事業所の所有者そのものではなく、設置・設定・技術サポートまでを担うサービス事業者パートナーです。同社は基盤と機器をパートナーに販売し、パートナーが住宅・商業施設の所有者に再販する形で、末端の契約者に届きます。2025年の売上のうち、北米以外の顧客からの売上は5%でした(Form 10-K、2025年12月期)。
収益の仕組み
同社は収益の源泉を、クラウドのSaaSサービス、ソフトウェア基盤のライセンスとサービス、ハードウェアの販売の3つとしています。
- 入り口:サービス事業者パートナーに、基盤と接続機器(ビデオカメラ、録画機、ゲートウェイ、スマートサーモスタットなど)を販売する。
- 課金:パートナーに対して、契約者数と利用機能に応じた月額料を毎月前払いで請求する。ソフトウェア基盤は、パートナー自身の運用センターで使う権利への月額課金。
- 継続:パートナーが末端の契約者と結ぶ契約は、同社によれば通常3〜5年。契約者は月ごとにサービスを解約できるため、パートナーと同社の双方の満足度が継続の条件。
(以上、Form 10-K、2025年12月期)
数字で確かめる
- 総売上:1,011,187千ドル(2025年)、939,827千ドル(2024年)で、8%の増加(Form 10-K、2025年12月期)。契約者ごとの月額課金が、年ごとに積み上がっていることが読み取れます。
- SaaSとライセンスの収益:689,397千ドル(2025年)、631,198千ドル(2024年)、569,200千ドル(2023年)(Form 10-K、2025年12月期)。3年連続で増え、売上全体に占める割合も65%、67%、68%と上がっていることが読み取れます。
- ハードウェアなどの収益:321,790千ドル(2025年)、308,629千ドル(2024年)(Form 10-K、2025年12月期)。機器の販売が、月額課金の入り口として並行して伸びていることが読み取れます。
- SaaSとライセンスの更新率:95%(2025年)、95%(2024年)、94%(2023年)(Form 10-K、2025年12月期)。契約者が高い割合で月額を払い続けていることが読み取れます。
- 純利益:131,628千ドル(2025年)、122,513千ドル(2024年)。調整後EBITDAは206,005千ドル(2025年)、176,239千ドル(2024年)(Form 10-K、2025年12月期。調整後EBITDAは同社が示す非GAAP指標)。月額収益の積み上げが利益を支えていることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は、警備・見守りの継続契約を「自分で抱える」か「基盤として他社に提供する」かの違いで読むと理解しやすくなります。契約の設置・営業・現場対応はパートナーが担い、同社は月額課金の基盤と機器の提供に集中しています。契約者に直接届ける費用を持たない代わりに、最終顧客との関係はパートナーに預けることになります。
この型の強さは、契約者が増えるほどクラウド側の収益が積み上がる点にあります。同社が更新率を重要な指標にしているのは、パートナーを通じた契約が長く続くほど、1契約者あたりの収益が増えるためだと考えられます。一方で、パートナーの事業が不調になれば同社の収益にも影響が及ぶため、パートナーを増やし、売れる機能(映像分析、緊急対応、エネルギー管理など)を広げることが、収益の厚みを保つ手段になっているように読めます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社が直接売らず、販売・施工を担う提携先に「基盤」を提供して契約者ごとに課金する形はつくれますか。
- 提携先が顧客に提供する価値の中で、自社が基盤として持てる部分(システム、データ、サポート)はどこですか。
- 契約者や提携先の継続を測る指標を、自社でも一つに決めて追えますか。
小さく試すなら
- 自社の事業で、提携先や代理店が顧客に提供している作業のうち、共通化できるもの(管理画面、報告書、見守りの通知など)を3つ書き出します。
- 提携先2〜3社に、その共通部分を月額で提供した場合の関心を聞き、契約者ごとの課金が受け入れられるかを確かめます。
- 1社と2〜4週間だけ、共通部分を試験提供し、契約者数と利用の頻度を記録します。
- 試験の結果から、契約者ごとの月額と更新率(翌月に続く割合)を簡単な表にし、継続の見込みを確認します。
関連するビジネスモデル
資料の位置づけ
企業・サービス:Alarm.com Holdings, Inc. / セキュリティ事業者向けクラウド基盤。参照資料:Form 10-K(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25