分類:企業事例 › 通信・データセンター
この事例の要点
- América Móvil, S.A.B. de C.V.は、23か国で通信サービスを提供し、2025年12月末で約331百万の携帯電話契約を持っています(Form 20-F、FY2025)。
- 携帯電話契約のうち、前払い(プリペイド)が56.9%、後払い(ポストペイド)が43.1%でした。後払いの比率は前年の40.8%から上がっています(Form 20-F、FY2025)。
- 同社は前払いについて、不払いのリスクがほとんどなく、顧客獲得費用や請求関連の費用が後払いより低いと説明しています(Form 20-F、FY2025)。
どんな事業か
América Móvil, S.A.B. de C.V.はメキシコのメキシコシティに本社を置く通信会社で、米国預託証券(ADS)がニューヨーク証券取引所に上場しています。23か国で通信サービスを提供し、主要な事業はメキシコとブラジルにあり、両国で契約数(RGU)の半分超を占めると説明しています(Form 20-F、FY2025)。
事業は携帯電話、固定電話、ブロードバンド、有料テレビ、法人向けサービスなどです。携帯電話の料金プランは、毎月前月分を請求する「ポストペイド」と、顧客が一定の利用量を一定の期間分、事前に支払う「プリペイド」に分かれます(Form 20-F、FY2025)。
収益の仕組み
同社は、収益を主にサービス収益と機器販売から得ています。前払いの携帯電話では、次のような構造になります。
- 入り口:利用者が、通話・データの一定量と期間を前払いで購入する。契約や与信審査が軽く、利用を始めやすい。
- 課金:購入した範囲で通話やデータを使う。後払いに比べ、1人あたりの利用額は低いと同社は説明している。
- 継続:購入を繰り返してもらうことで契約が続く。景気が悪化すると、前払いの利用者の離脱(チャーン)が増える可能性があると同社はリスクとして挙げている。
同社は、前払いのプランが、ラテンアメリカと東欧の携帯電話普及率を先進国並みに押し上げる役割を果たしたと述べています。2025年は、前払いと後払いの携帯電話サービスの収益増加が、サービス収益の増加の要因として挙げられています(Form 20-F、FY2025)。
数字で確かめる
- 携帯電話契約:約331百万(2025年12月末)。そのうち前払いが56.9%、後払いが43.1%で、前払いが契約の過半を占めることが読み取れます(Form 20-F、FY2025)。
- 後払い比率:40.8%(2024年12月)から43.1%(2025年12月)へ上昇。前払いが多数ながら、後払いへ移る動きがあることが読み取れます(Form 20-F、FY2025)。
- 営業収益:943,638百万メキシコペソ(2025年)、869,221百万ペソ(2024年)、816,013百万ペソ(2023年)。2025年は前年比8.6%増で、為替一定ベースでは6.2%増であることが読み取れます(Form 20-F、FY2025)。
- サービス収益:803,655百万ペソ、機器販売139,983百万ペソ(2025年)。収益の大半が継続的なサービスから来ていることが読み取れます(Form 20-F、FY2025)。
- 営業利益:191,404百万ペソ(2025年)、180,100百万ペソ(2024年)。規模の大きな収益から、安定した営業利益が出ていることが読み取れます(Form 20-F、FY2025)。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事例は、「前払い・チャージ制」を、信用の審査を通せない層にも入口を開く仕組みとして使っていると読むことができます。後払いは与信と請求の手間が必要ですが、前払いは先に支払ってもらうので、事業者は回収の不安なく契約を増やせます。同社が前払いを、普及率を高める手段と位置づけているのは、そのためだと考えられます。
一方で、前払いの顧客は1人あたりの利用が少なく、離脱もしやすいと同社自身が述べています。そこで、前払いで裾野を広げつつ、後払い比率が40.8%から43.1%に上がっているように、利用額の大きい契約へ移ってもらう流れも同時に進めていると読めます。入り口は前払いで軽くし、利用が深まった顧客を継続課金へ導く、段階の設計です。
この考え方は、通信以外にも使えます。審査や契約の重い商品でも、前払いの少額プランを入り口に置けば、試す障壁を下げられます。ただしこれはOtsumuの考察であり、同社の戦略説明そのものではありません。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の商品は、審査や契約が重くて、試す前に諦められている顧客層はいませんか。
- 前払いの軽い入り口から、継続課金や大きな契約へ移る段階を、顧客ごとに把握していますか。
- 前払いの顧客が離脱するタイミングと理由を、どう把握しますか。
小さく試すなら
- 現在の契約の入り口で、顧客が離れる手続き(審査、契約書、初期費用)を洗い出します。
- その手続きを省いた、前払いの少額・短期のプランを1つ設計し、利用できる範囲と期間を文章にします。
- 2〜4週間、少数の見込み客に案内し、購入率、再購入率、問い合わせ内容を記録します。
- 再購入した顧客に、継続契約への切り替えを提案する条件を決め、反応を確認します。
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資料の位置づけ
企業・サービス:América Móvil, S.A.B. de C.V. / プリペイド携帯。参照資料:Form 20-F(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25