この事例の要点
- Backblazeは、従量課金またはコミット契約のB2 Cloud Storageと、定額のComputer Backupという性格の違う二つのサービスで、売上のほぼすべてを得ています(Form 10-K、FY2025)。
- B2は、保存量の3倍までの取り出しを無料とする方針を掲げ、データを預けるときの心理的な障壁を下げています(Form 10-K、FY2025)。
- B2の売上は26%増、バックアップは3%増と、成長の担い手が入れ替わりつつあることが読み取れます(Form 10-K、FY2025)。
どんな事業か
Backblaze, Inc.は米国の企業で、Nasdaqに上場しています(Form 10-K、FY2025〔2025年12月31日終了年度〕)。同社は自らを、データを多く扱う用途向けの高性能なクラウドストレージのプラットフォームと説明し、175か国超で約50億GBのデータを保管しています。
サービスは二つあります。B2 Cloud Storageは、従量課金またはコミット契約で使うインフラ提供型のサービスです。Computer Backupは、パソコンのデータを「透明な定額料金」で、ほぼ無制限のファイル数までバックアップするサブスクリプション型のサービスです。2025年12月31日時点の顧客は50万超で、約40万がバックアップ、約12万がB2、約2万が両方を利用しています(Form 10-K、FY2025)。
収益の仕組み
Form 10-K(FY2025)から読み取れる構造は次のとおりです。
- 入り口:個人や小規模事業者は、分かりやすい定額のバックアップから使い始められます。B2は使った分だけ払う形で、小さく始められます。
- 課金:B2は従量課金またはコミット契約です。バックアップは定額で、サブスクリプションの収益は主に1年または2年の契約期間にわたって計上されます。
- 取り出し:B2には、保存量の3倍までの標準的な無料取り出しがあり、上位のB2 Overdriveでは最大1Tbpsの処理能力と無制限の無料取り出しをうたっています(一定の制限があるとも記載されています)。
数字で確かめる
- 2025年の売上高は145,835千ドルで、2024年の127,628千ドル、2023年の102,019千ドルから増えています(Form 10-K、FY2025)。3年続けて売上が伸びていることが読み取れます。
- B2 Cloud Storageの売上は79,897千ドル(前年は63,335千ドル)、Computer Backupは65,938千ドル(前年は64,293千ドル)です。B2のARRは88.9百万ドル(前年は70.2百万ドル)でした(Form 10-K、FY2025)。B2が売上の過半となり、成長を牽引していることが読み取れます。
- B2の純収益維持率は111%(前年は123%)、会社全体では105%(前年は116%)です(Form 10-K、FY2025)。既存顧客の拡大は続いていますが、前年より勢いが落ちていることが読み取れます。
- 粗利率は61%(前年は54%)に上がりました。純損失は25.6百万ドル(2024年は48.5百万ドル)で、同社は当面の黒字化を見込んでいないと記載しています(Form 10-K、FY2025)。収益性は改善している一方で、損失はまだ続いていることが読み取れます。
- データセンターと機器に関わる費用が資本・運営費の大きな部分を占めると記載され、2025年10月にはデータセンターの冷却設備の障害があったことも開示されています(Form 10-K、FY2025)。物理設備を自社で持つ事業の負担が読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。この事業は、従量課金と定額課金を並べ、顧客の用途に合わせて入り口を分ける設計と読めます。バックアップは使い方が単純で、価格を定額にすると分かりやすい。B2は使うデータ量が顧客によって大きく違うため、従量またはコミットで調整する。同じ「預かる」事業でも、顧客の予算の立て方に合わせて課金を変えていると考えられます。
無料の取り出し枠は、預けるときの不安を下げる工夫と読めます。ストレージは取り出し料金が不透明だと乗り換えにくく感じられるため、取り出しの条件を明示することが選ばれる理由になり得ます。一方で、無料枠の条件は同社自身が制限つきとしており、費用の負担と引き換えの設計です。
トレードオフは、設備を自社で持つ負担です。粗利率の改善は規模の効果と読めますが、冷却障害の開示が示すように、設備の運用は事業の信頼にも直結します。なお、各要因の寄与度は開示だけでは分からないため、上記はOtsumuの推測を含みます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の顧客は、定額が分かりやすい層と、使った分で払いたい層に分かれていないでしょうか。
- 顧客が「始めるのをためらう」料金上の不安は何で、それを条件の明示で下げられないでしょうか。
- 無料や低価格で提供する部分の費用を、どの収益で支えるかを説明できるでしょうか。
小さく試すなら
- 既存顧客の請求履歴から、毎月ほぼ同じ金額の顧客と、月ごとに大きく変わる顧客を分けます。
- 前者向けに定額案、後者向けに従量またはコミット案を、一枚の料金表にまとめます。
- 顧客3〜5社に、契約を迷った点や不安に感じる条件(解約、追加料金など)を聞き、料金表の注記に反映します。
- 2〜4週間で、不安の大きい条件を一つ選んで明示した案内を作り、問い合わせ時の反応の違いを確かめます。
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資料の位置づけ
企業・サービス:Backblaze, Inc. / B2 Cloud Storage・Computer Backup。参照資料:Form 10-K(FY2025、2025年12月31日終了年度)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
上記の公開資料(企業の決算短信または年次報告書)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25