バックアップとは
バックアップとは、システムのデータやファイルが消えたり壊れたりしたときに元に戻せるよう、ある時点の複製を別の場所に保存しておくことです。
平易に言えば「大切な書類のコピーを、別の金庫にしまっておく」ことです。原本が燃えても、コピーがあれば仕事を続けられます。ただし、コピーが古ければ、その後に書き足した分は失われます。どのくらいの頻度で、どこに、何世代分を残すかを決めるのがバックアップの設計です。
英語の backup は「予備」「支援」の意味で、システムの文脈ではデータの複製保存を指します。
仕組み・ポイント
バックアップの取り方には主に三つの方式があります。
| 方式 | 保存する内容 | 長所 | 短所 |
|---|---|---|---|
| フルバックアップ | 毎回すべてのデータ | 復元が簡単 | 時間と保存容量が大きい |
| 差分バックアップ | 前回のフル以降に変わった分 | 復元はフルと最新の差分の二つで済む | 日が経つほど差分が大きくなる |
| 増分バックアップ | 前回のバックアップ以降に変わった分 | 毎回の量が小さい | 復元に全ての増分が必要で手間がかかる |
実務では「週に一度フル、毎日増分」のように組み合わせることが多くあります。クラウドのデータベースサービスでは、自動バックアップに加えて、一定期間内の任意の時点に戻せる機能(ポイントインタイムリカバリ)が用意されていることもあります。
バックアップの設計で決めるべき項目は次のとおりです。
- 対象:データベース、アップロードされたファイル、設定、ソースコードなど
- 頻度:どのくらいの間隔で取るか(失ってよいデータの量で決まる)
- 保存先:本番と同じ場所に置かない。別の区画、別の地域、別のアカウントなど
- 世代:何日分・何か月分を残すか
- 保護:暗号化と、削除・改ざんを防ぐ設定
保存先については「3つのコピーを、2種類の媒体に、うち1つは離れた場所に」という3-2-1ルールがよく知られた目安です。
実務での使い方・具体例
ある会社の顧客管理システムで、担当者が誤って一括更新の操作をしてしまい、数百件の顧客情報が上書きされた場面を考えます。
バックアップの仕組みがきちんとあれば、次のように対応できます。
- 操作が行われた時刻を監査ログで特定する
- 操作の直前の時点のバックアップを、本番とは別の環境に復元する
- 上書きされた顧客の情報だけを取り出し、本番に戻す
- 操作以降に正しく更新されたデータを消さないよう、差分を確認しながら反映する
この対応ができるかどうかは、事故が起きる前の準備で決まります。どの時点まで戻れるのか、別環境への復元に何時間かかるのか、誰が作業するのかを、あらかじめ確認しておく必要があります。
ここで重要なのは、本番に丸ごと戻すのではなく、別環境に復元して必要な分だけ戻すという手順です。丸ごと戻すと、事故以降の正しい変更まで消えてしまいます。
「取れている」と「戻せる」は違う
バックアップの最大の落とし穴は、取得は毎日成功しているのに、いざ戻そうとすると戻せないことです。設定の不備で一部のデータが含まれていない、復元の手順を誰も知らない、復元に想定以上の時間がかかる、といった問題は、実際に戻してみるまで気づけません。半年に一度など定期的に復元の訓練を行い、手順書を更新しておくことが欠かせません。
よくある誤解と注意点
- 冗長化しているから大丈夫、ではない:冗長化は故障への備えで、誤削除やデータ破損はそのまま予備側にも反映されます。過去に戻すにはバックアップが必要です。
- 復元にかかる時間を見積もっていない:データ量が増えると、復元に何時間もかかることがあります。業務をいつまでに再開したいかと照らし合わせ、間に合う方式かを確認します。
- 同じ場所に置いている:本番と同じアカウントやサーバーに置くと、乗っ取りやランサムウェアの被害で一緒に消されることがあります。権限を分けた別の場所に保管します。
- バックアップの失敗に気づかない:容量不足や権限の変更で、ある日から取得が失敗していることがあります。失敗時に通知が届く設定と、定期的な取得状況の確認を運用に組み込みます。
- ファイルを忘れる:データベースだけ取って、アップロードされた画像や添付ファイルを取っていないケースがあります。対象を一覧にして確認します。
- 個人情報の保管期間:バックアップにも個人情報は含まれます。削除依頼への対応や保存期間の考え方は、専門家や公的機関の最新情報で確認してください。
関連用語
- RPO・RTO(目標復旧時点・目標復旧時間):バックアップの頻度や復元手順を決める目標値
- DR(ディザスタリカバリ):災害時に別の場所で復旧するための備え
- 冗長化:故障に備える仕組み。バックアップとは役割が違う
- ロールバック:リリースや変更を前の状態に戻すこと
- 実践記事:システム保守契約に含めるべき内容:対応範囲・時間・費用の決め方
Otsumuに相談できること
現在のシステムのバックアップが本当に戻せる状態か確かめたい、保守契約にバックアップと復元の範囲をどう書くべきか知りたい、といったご相談に対応しています。対象と頻度の整理から、復元手順書の作成、訓練の実施まで支援します。詳しくは保守・運用をご覧ください。
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執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.01