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Bakkt「提携先向け暗号資産取引・決済基盤」に学ぶB2B2C型の事業設計と提携先集中のリスク

金融機関やフィンテックに暗号資産の売買・決済機能を組み込んで提供するBakktの事例です。提携先経由で取引が集まる設計と、大口提携先を失ったときの収益への影響を、Form 10-K(米国の年次報告書)から確かめます。

この事例の要点

  • Bakkt, Inc.は、金融機関やフィンテックなどの「クライアント」が、自社の顧客に暗号資産の売買や保管を提供できるよう、取引・決済の基盤を提供しています(Form 10-K、FY2025)。
  • 収益の大半は、顧客が暗号資産を売買するときに両方向で得るスプレッド(買値と売値の差)です。クライアント経由で取引が集まるB2B2Cの型です(Form 10-K、FY2025)。
  • 主力の暗号資産クライアントの契約終了などで、2025年12月期の収益は前期から約11億ドル減りました。提携先への集中が事業の大きなリスクになることが読み取れます(Form 10-K、FY2025)。

どんな事業か

Bakkt, Inc.は2018年に創業した米国の企業で、ニューヨーク証券取引所に上場しています。同社は、機関投資家がデジタル資産の経済圏に参加するためのデジタル金融インフラを構築する企業だと自らを説明しています。2025年は、非中核資産の売却、会社構造の簡素化、中核プラットフォームへの投資という「戦略的転換」の年でした(Form 10-K、FY2025)。

現在の戦略は3つのソリューションで構成されます。Bakkt Marketsは、機関がデジタル資産のブローカレッジ、取引、決済の機能を、ほぼそのまま組み込める基盤です。Bakkt Agentは、口座開設、本人確認、入金、送金などをAPIとソフトウェアで自動化する層です。Bakkt Globalは、規制のある各国の現地法人への投資を通じて、ライセンスと営業基盤を広げる取り組みです(Form 10-K、FY2025)。

収益の仕組み

同社は、自社のクライアントを通じて、その顧客の取引を取り込む構造です。構造を整理すると、次のようになります(Form 10-K、FY2025)。

  • 入り口:金融機関、フィンテック、デジタル資産企業などがクライアントとして契約し、自社の画面に暗号資産の機能を載せます。ライセンス、コンプライアンス、決済・清算の基盤は同社が担います。
  • 課金:顧客が暗号資産を売買するたびに、同社が両方向でスプレッドを得ます。収益は総額(グロス)で計上され、対応する暗号資産の取得原価は費用に入ります。
  • 継続:クライアントの顧客が取引を続ける限り収益が積み上がります。一方、クライアントとの契約が更新されなければ、その分の取引がまとめて失われます。

数字で確かめる

  • Crypto services収益は2025年12月期が23億3,524万ドル、2024年12月期が34億4,106万ドル、2023年12月期が7億2,699万ドルでした。2024年に急増し、2025年に減少しており、収益が提携先の動向で大きく動くことが読み取れます(Form 10-K、FY2025)。
  • 2025年12月期の収益は前期から11億580万ドル減りました。同社は主因を、2025年6月のWebull Pay LLC、2025年10月のPublic Platform LLCのクライアントとしての喪失と説明しており、少数の大口に依存していたことが読み取れます(Form 10-K、FY2025)。
  • 暗号資産取引の想定元本(取引高)は、2025年12月期が23億2,300万ドル、2024年12月期が34億4,660万ドル、2023年12月期が7億2,710万ドルでした。取引高と収益がほぼ同じ規模なのは、総額で計上しているためで、収益の大きさがそのまま利益の大きさではないことが読み取れます(Form 10-K、FY2025)。
  • 継続事業の営業損失は2025年12月期が1億4,784万ドルで、2024年12月期の8,259万ドルより拡大しました。収益が減る一方で固定的な費用が残る構造が読み取れます(Form 10-K、FY2025)。
  • 2025年に、ロイヤルティ事業を売却し、信託子会社(Bakkt Trust)をICEに売却しました。信託子会社は市場での牽引力不足と資本コストの高さが理由とされ、規制対応のコストが重い領域から退く判断が読み取れます(Form 10-K、FY2025)。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この型の強みは、自社で顧客を集めなくても、提携先が持つ顧客基盤を通じて取引を取り込めることです。ライセンス、決済、清算といった「作るのが重くて、提携先が自前で持ちたくない部分」を引き受けることで、提携先は短期間で新しい機能を提供できます。基盤側は固定的な投資を、複数のクライアントで分け合えます。

一方で、数字は集中のリスクをはっきり示しています。クライアントの数が少なく、1社が取引の大きな割合を占めるときは、その1社の契約更新が事業全体の水準を決めます。提携先は、機能を自前で持つ選択もできるため、基盤側は「代替しにくい価値」を持ち続ける必要があります。

同社が、ステーブルコイン決済やAIによる自動化の層(Bakkt Agent)、海外の現地法人への投資へと軸を広げているのは、1つの取引手数料に頼る構造から離れる試みと読めます。ただし、それらの収益はまだこれからで、成否は今後の開示で確かめる必要があります。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社の売上のうち、上位1〜3社の取引先が占める割合はどのくらいでしょうか。
  • 提携先が自前で持ちたくない、重くて面倒な部分を引き受けるとしたら、どの部分でしょうか。
  • 提携先が自前化したときも残る、自社だけの価値は何でしょうか。

小さく試すなら

  1. 直近1年の取引先別の売上を並べ、上位の取引先の割合と、契約更新の時期を確認します。
  2. 上位の取引先に、自社のサービスのうち、他社に替えにくいと感じる点と、替えやすいと感じる点を聞きます。
  3. 聞き取りで挙がった替えにくい点を強める施策(運用の自動化、データの蓄積、他の機能との組み合わせなど)を1つ選び、小さく試します。
  4. 2〜4週間で、取引先が実際にその機能を使うか、更新の意向に変化があるかを確認します。変化がなければ、別の「重い部分」の引き受けを検討します。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:Bakkt, Inc.(米国・ニューヨーク証券取引所上場)/提携先向け暗号資産取引・決済基盤。参照資料:Form 10-K(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

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