← 企業事例

OTSUMU KNOWLEDGE

Bitcoin Depot「現金で買えるビットコイン販売機」に学ぶ小売店に置く無人端末の事業設計

コンビニや薬局などの店舗に約9,700台の端末を置き、現金でビットコインを買える無人販売機を運営する米国のBitcoin Depot。店舗設置・上乗せ率・規制対応の構造を、Form 10-K(2025年12月期)から確かめます。

分類:企業事例 › 銀行・決済・フィンテック

この事例の要点

  • Bitcoin Depotは、2025年12月31日時点で米国・カナダ・オーストラリア・香港に約9,700台の端末を置き、現金でビットコインを購入できるサービスを提供しています(Form 10-K、2025年12月期)。
  • 売上のほぼすべて(2025年は約99.9%)が、利用者がビットコインを購入する際に払う現金から生まれます。販売価格への上乗せと、別立ての定額手数料で構成されます(Form 10-K、2025年12月期)。
  • 端末の置き場所は小売店との契約で確保し、成績の悪い端末は移設します。州ごとの規制が事業の設計に大きく関わると、同社は記載しています(Form 10-K、2025年12月期)。

どんな事業か

Bitcoin Depot Inc.は、米国で上場している企業で、現金をビットコインに換える端末(BTM)と、小売店のレジで現金を入金して購入できるBDCheckout、モバイルアプリを運営しています(Form 10-K、2025年12月期)。端末はコンビニ、ガソリンスタンド、薬局、食品スーパー、ショッピングモールなどに置かれ、2025年末時点で米国の48州、カナダの10州、オーストラリアの6州などで運営しています。

同社は、現金を主な支払手段として使う人が、デジタルな金融へ入る入り口になることを目的に掲げています。端末の運営に使うソフトウェアBitAccessを他の事業者にも提供しており、ソフトウェア収入もあります(Form 10-K、2025年12月期)。

収益の仕組み

利用者が端末で現金を入れてビットコインを購入すると、同社は市場価格に上乗せした価格で販売します。売上の中心は、この上乗せと手数料です。

  • 入り口:小売店と契約して端末を置く場所を確保します。米国では50以上の小売チェーンと契約し、約2,700台がその契約の端末です。
  • 課金:端末の取引では、金額に対して15%から50%の範囲で上乗せし、さらに定額で3ドルの手数料をとります。BDCheckoutは上乗せ15%に、定額3.50ドルです。
  • 継続:同社は、初回から後の取引を行う利用者の再利用を指標に使っており、2025年末時点で、第4四半期に初めて取引した利用者のうち2回以上取引した人は、平均で5.8回取引したと記載しています。
  • 運用:端末の稼働情報を見て、成績の悪い場所から別の場所へ移設します。現金回収は装甲車で行います。

数字で確かめる

  • 2025年の売上高は614,851千ドルで、前年の573,703千ドルから7.2%増えました。売上原価は501,555千ドルでした(Form 10-K、2025年12月期)。売上の大半が原価になる構造で、利益は上乗せと手数料の差に左右されることが読み取れます。
  • 営業利益は41,213千ドルで、前年の24,210千ドルから増えました(Form 10-K、2025年12月期)。売上の伸びより費用の伸びが小さく、利益率が改善したことが読み取れます。
  • 端末のうち約1,700台は、新しい場所へ移すために物流業者のもとで待機していました(Form 10-K、2025年12月期)。端末を固定資産として据え置くのではなく、移設を前提に運営していることが読み取れます。
  • 最大の小売パートナーであるCircle Kは、2025年の売上の約18%(2024年は約23%)を占め、同社は契約を更新しない旨の通知を受けています。端末は移設する計画で、売上への重大な影響は見込んでいないと記載されています(Form 10-K、2025年12月期)。一つの設置先への依存が、事業のリスクになりうることが読み取れます。
  • 従業員は2025年末時点で135人でした(Form 10-K、2025年12月期)。端末の設置と回収を外部事業者に任せ、本体の人員を絞った運営であることが読み取れます。

Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか

ここからはOtsumuの考察です。この事業は、無人販売・自動販売の型のうち、他社の店舗の床を借りて端末を置く、場所を借りる型と読めます。店舗側は、自前で投資せずに来店客に新しいサービスを提供でき、端末の運営者は、人通りのある場所を契約で確保できる。場所と端末を分け、成績の悪い場所から端末を引き上げて移すことで、投資の回収を早める設計です。

一方、この収益は、利用者が払う上乗せ率に大きく依存します。同社自身が上乗せ率を試験しながら調整していると記載しており、価格が収益を決める構造です。同社は、各州で規制が強まっていることを詳しく開示しており、返金の義務、手数料の上限、新規設置の停止などが、事業の設計を変える要因になっています。規制の厳しい分野では、価格の設計と利用者保護の設計が、事業の継続条件になると考えられます。

トレードオフは、設置先の契約と規制の両方に依存することです。複数の店舗に分散し、移設できる体制を持つことで、一つの契約の終了に備えていると読めます。

自社事業に持ち帰る問い

  • 自社が提供できる機器やサービスを、他社の店舗や現場に置かせてもらうことで、どんな顧客に届けられるでしょうか。
  • 設置先ごとの成績を見て、移すか撤去するかを判断する基準を、持っているでしょうか。
  • 規制や利用者保護の変化が、価格や提供方法に与える影響を、事前に把握できているでしょうか。

小さく試すなら

  1. 提供場所や販路ごとに、売上、粗利、場所代、運営の手間を並べ、場所ごとの採算を表にする(1週目)。
  2. 採算の分かれる場所について、継続・移設・撤去の判断基準を、数値で2〜3個決める(1〜2週目)。
  3. 1か所に限って、場所の提供者との契約条件(固定か歩合か)の案を比べ、先方の反応を聞く(2〜3週目)。
  4. 基準に照らして1か所の移設または見直しを行い、結果を記録して、基準を調整する(4週目)。

関連するビジネスモデル

資料の位置づけ

企業・サービス:Bitcoin Depot Inc.の現金でビットコインを購入できる端末事業。参照資料:Form 10-K(2025年12月期)。このページは公開情報にもとづく学習用の分析であり、暗号資産の購入や投資を勧めるものではありません。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。

参考資料と編集について

上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。

執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25

あわせて読む

次の一手を、一緒に。

この型を自社の事業に当てはめるとどうなるか、現在の段階に合わせて一緒に整理します。

事業について相談する ↗
FROM KNOWLEDGE TO ACTION

知識を、次の一手へ。

AIツール診断で、次の一手を整理する ↗