この事例の要点
- CGIは、顧客の近くに拠点を置く「プロキシミティ(近接)モデル」と、世界各地の納品拠点を組み合わせて、ITコンサルティング、システム構築、運用の受託を提供しています。
- 2025年9月期の売上高は159億カナダドルで、受注残(バックログ)は314億カナダドル、約2年分の売上に相当します。受注残の一部は5年超にわたって売上になる見込みと同社は記載しています。
- 成長の方針は、契約の獲得・更新・拡大と、地域の中小規模の買収、大型買収の「作る」と「買う」の両面で示されています。
どんな事業か
CGI Inc.は、カナダのモントリオールに本社を置き、TSX(シンボルGIB.A)とNYSE(GIB)に上場しています(年次情報書、2025年9月期)。1976年に創業し、約94,000人のコンサルタントと専門家が世界で働いていると同社は記載しています。顧客の事業とITを、戦略の策定から導入、運用まで一貫して手がける、IT・業務コンサルティングの企業です(MD&A、2025年9月期)。
サービスは、ビジネス・戦略ITコンサルティングとシステム構築、マネージドサービス(アプリケーションの開発・保守、クラウド管理、業務プロセスの受託運営など)、自社のIPを組み込んだ業務プラットフォームの三つの領域に整理されています。同社は、運用を受託する契約の中で、AIを活用した納品手法「CGI DigiOps」を使うことで、効率を二桁の割合で改善できると述べています。
収益の仕組み
MD&Aと年次情報書によれば、収益は顧客との契約から生まれ、成長の方針は四つの柱で示されています。
- 入り口:顧客の近くに拠点を置いて信頼関係を築き、コンサルティングやシステム構築の案件から取引を始めます。同社は、顧客の暮らす地域で働くことが、地域での責任と迅速な対応につながると説明しています。
- 課金(受託の拡大):大規模なマネージドITや業務プロセスの新規契約の獲得を、成長の柱の一つとしています。
- 継続:契約の獲得・更新・延長を第一の柱とし、受注残の管理と、受注額を売上で割る「ブック・トゥ・ビル」を指標に用いています。
- 拡大(買収):地域の中小規模の企業を買収して品揃えと地域網を補い、大型の買収で地理的な広がりと、大規模契約に必要な規模を確保する方針です。
数字で確かめる
- 2025年9月期の売上高は15,912.7百万カナダドルで、前年の14,676.2百万カナダドルから8.4%増えました(為替の影響を除くと4.6%増)(MD&A、2025年9月期)。事業が拡大基調を保っていることが読み取れます。
- 受注残は31,451百万カナダドルで、前年の28,724百万カナダドルから増えました。売上高で割ると約2.0年分です(31,451÷15,912.7)(MD&A、2025年9月期)。数年先までの売上の見通しが、契約によって積み上がっていることが読み取れます。
- 受注残のうち約120億カナダドルが今後12か月以内、105億カナダドルが1〜3年、46億カナダドルが3〜5年、44億カナダドルが5年超で売上になる見込みです(MD&A、2025年9月期)。契約の長さがさまざまで、受注残の約4割が1年以内、約3割が1〜3年という分布だったことが読み取れます。
- 受注額は17,572百万カナダドル、ブック・トゥ・ビルは110.4%で、前年(109.3%)、2023年(113.7%)とともに100%を上回っています(MD&A、2025年9月期)。売上より受注が多く、受注残を維持・積み増せていることが読み取れます。
- 調整後EBITマージンは16.4%、営業活動によるキャッシュフローは22.3億カナダドルで売上の14.0%でした(MD&A、2025年9月期)。人を中心とする事業で、売上に対する一定の利益とキャッシュを生んでいることが読み取れます。
Otsumuの読み解き:なぜ成り立つのか
ここからはOtsumuの考察です。ITサービスは、人の稼働を売る事業です。その稼働を安定して埋めるには、案件ごとの獲得に頼るより、複数年にわたる契約で先の売上を確保する方が見通しを立てやすいと考えられます。CGIが受注残とブック・トゥ・ビルを経営指標の中心に置き、約2年分の売上に当たる受注残を積み上げていることは、その設計と読めます。
プロキシミティモデルは、顧客の近くに拠点を置くことで、案件の入り口から継続までの関係を作るやり方だと考えられます。一方で世界各地の納品拠点を併用すると、顧客に近い拠点と、コストを抑えた拠点を使い分けられます。買収を地域の中小規模と大型の二つに分けているのも、前者が地域網を厚くし、後者が大規模契約に必要な規模を補う、という役割分担と読めます。
注意点は、受注残が将来の売上を約束するものではない点です。受注残は、同社の契約にもとづく将来の売上の見込みで、顧客の判断による契約の解除や縮小、景気などで変わり得ると考えられます。また、買収で広げる事業は、統合の手間や質の維持がつきまといます。
自社事業に持ち帰る問い
- 自社の売上のうち、すでに契約や見込みで数年先まで見通せているのは、どれくらいでしょうか。
- 顧客に近い関係を作る入り口と、コストを抑えて納品する仕組みを、自社ではどう分けて持てるでしょうか。
- 受注や契約の増減を、毎月または毎四半期に見る指標を、自社は持っているでしょうか。
小さく試すなら
- 直近1〜2年の取引を、単発の案件と、継続・更新が見込める契約に分け、契約ごとの残り期間と見込み売上を一覧にします。
- その一覧から、「今後12か月」「1〜3年」「それ以降」に売上になる見込みの合計を出し、全体の売上と比べます。
- 四半期ごとに、新しく受注した額を売上で割る簡単な表(ブック・トゥ・ビルの簡易版)を作り、100%を上回っているかを確認します。
- 2〜4週間のうちに、継続契約の候補となる既存顧客2〜3社に、複数年の契約や運用の受託を提案する場合の条件を聞き取り、受け入れられる範囲を記録します。
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資料の位置づけ
企業・サービス:CGI Inc. / ITコンサルティングと運用受託。参照資料:SECにForm 40-Fの添付書類として提出された、2025年9月期のMD&A(経営陣による財務分析)と年次情報書。このページは公開情報にもとづく学習用の分析です。Otsumuの支援実績や当該企業との取引関係を示すものではありません。示唆と検証案はOtsumuの考察であり、企業自身の見解とは区別しています。
参考資料と編集について
- Management's Discussion and Analysis(CGI Inc.、2025年9月期) ↗
- Annual Information Form(CGI Inc.、2025年9月期) ↗
上記の公開資料(目論見書・年次報告書・企業の公式発表など)をもとに、Otsumuが執筆しました。数値と企業の説明は資料の記載の範囲にとどめ、Otsumuの考察とは分けています。数値は資料の表記のままで、最新の情報は各社の開示をご確認ください。
執筆:Otsumu株式会社 / 編集日 2026.10.25